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イラン前後の守田選手のコメント考察_交代の失敗が原因では


イラン戦後の守田選手のコメントが結構取り上げられています。

それに対して森保監督がピント外れの回答を返したことも話題になっています。

結構根深い問題だと感じており、何が必要なのか考察します。

イラン戦のおさらい

日本は後半からのイランのハイプレスを回避できず、ボールを取られては右サイドにロングボールを放り込まれ続けます。その中で失点し敗北します。

交代で壊れたバランス

選手交代によってバランスを崩したことを指摘する人が結構居ました。久保選手が居なくなってボールを繋げなくなり、前田選手が居なくなったことで前からのプレスが弱まり、バランスが崩れたということです。実際に交代前後に大きな差が生まれたというデータがあります。

試合を見返しましたが、確かに南野選手はあまりボールをもらいに下がる動きはしなかったですし、三笘選手も前線からプレスをかけずに中盤で構えがちでした。交代選手によってサッカーの内容が大きく変わってしまったのです。

守田選手の心持ちの推測

ここで守田選手の気持ちに立って考えてみます。

日常から綿密な戦術の中でプレーしてきた

守田選手はスポルティングで緻密な戦術の中でプレーしてきたようです。それが表れているのが以下の動画です。

下記のようなことが述べられています。

  • スポルティングでは相手の戦術に対応した策が考えられている。相手のどの選手がどう動くかを複数のパターンで想定し、それぞれのパターンに対し自分たちの誰がどう動くのかが具体的に決められている

  • 上記の動きは自分たちのチームの人選によっても変わる

ここまでやらないと「本当に強い相手に対して食えない」との言葉もありました。CLで格上とギリギリの戦いをする中での言葉ですし、とても重いものだなと感じます。

交代でバランスが崩れた後に考えそうなこと

イラン戦に戻ると、後半に選手交代するまでの試合展開は悪いものではありませんでした。ただ、交代後に試合展開がどんどん悪くなりました。

ここで選手として思い浮かぶのは以下のようなことではないかと思います。

  • 交代で入った三笘選手の攻撃力を活かしたい。三笘選手にボールを渡す必要があるがハイプレスでなかなかボールを繋げない。ボールの出しどころがない

  • 南野選手に下がってもらうように依頼するか。しかしそうなると攻撃の担い手が減り点が取れなくなるリスクが高まる。交代の意図とも違う可能性がある

  • 三笘選手に下がってもらって5バック気味にするのもありだが、三笘選手の攻撃力が活かしにくくなる。これも交代の意図と反しそう

  • もっと前に蹴ってもらい、その上で前からプレスをかけて奪おうにも周りは疲弊して付いてこれそうにない…

確かにパンクしそう

色々な選択肢がありますがなかなか良いものが見つかりません。守備に追われて疲労し、交代策の意図に縛られて選択肢が狭まれる中、考えても答えが出ず頭がパンクしそうになったのではないでしょうか。

守田選手の「結局、だれが出てるかの人次第、質次第になっている。」というコメントも、交代により試合が壊れ、壊れた試合を良くする選択肢にも制限が出ることを指していたのかもしれません。交代の影響力が大きいからこそ、交代時に何らかの方向づけをする、それが上手く行かない時に更なる交代を行う、などはどうしても必要だと思います。

選手の自主性に任せることはどこまで正しいのか

選手の自主性の必要性

相手の嫌がることをやる、そのために選手が自分たちで考えて判断するというのは今の日本代表の主要なコンセプトの一つです。個人的にこのコンセプトには強く同意です。特に試合の前半は選手が変えにくいですし、そこで選手自身が考え、相手の戦術に対応していくというのは大事になってきます。

今のサッカーはポジショナルプレーの概念が広まって相手が嫌がるポジションを取ることが当たり前になりつつあり、それに相手が対応したらまたポジションを変えるということも当たり前にやられています。事前に戦術を緻密に定義しても相手が想定と違うことを試してくると対応できません。自分達で判断するというのは世界で戦う上ではどうしても必要になってくる要素だと思います。

選手の自主性の限界

ただ、選手のみで対応できる範囲が限られるのも事実だと思います。イラク戦ではスタメン選びが不味く、普段と別のサッカーをすることになり敗れました。イラン戦も交代によってサッカーの内容が変わりました。こうなってくると戦術に対しての習熟が進みませんし、何が正しいかも分かりません。何が正しいか分からないとどう改善すれば良いかも分かりにくくなってきます。迷う上に選手によってできるサッカーが制限されており、どうすれば良いかどんどん迷うことになってきます。

特に交代策には監督の意図もあり、それと反しそうなことをするのは選手には難しい部分もあります。だからこそ外部からの方向付けが必要なのだと思います。

失敗の歴史を繰り返してはならない

トルシエジャパンやハリルジャパンの時は戦術に囚われ過ぎ、柔軟性に欠けることが問題になりました。その反省で西野監督以降は選手の自主性を重んじるアプローチに変わってきています。

しかしジーコジャパンの時も自由過ぎて戦術がないことが問題になっており、今回も似たような形です。いい加減バランスを取る時代が来たのだと思います。

具体的な選択肢を用意する段階なのでは

今の日本における最適解は、具体的な選択肢を選手と一緒に考える、ではないでしょうか。決まった具体策を用意するのではなく、かと言って具体性のないコンセプトだけ用意するのではなく、具体性のある選択肢を用意する形です。

選手が考えるというのは今の日本の大きな資産だと思います。欧州のハイレベルなチームの戦術を吸収した彼らが日本にもたらす戦術の幅はかなり広いでしょう。それを活かして選手と一緒に考えつつ、もう一段の具体化や絞り込みを行うのが良いのではないのでしょうか。

具体的には

  • 相手の戦術を考え、それに対する具体的な攻撃や守備の選択肢を選手と一緒に定義し、練習に落とし込む

  • スタメンを選び、どのような選択肢が取り得るか選手と一緒に定義する。選手は試合展開に応じて色々な選択肢を取る

  • 戦況を見つ交代を選び、どのような選択肢を想定しているか選手に伝達する。選手は試合展開に応じて色々な選択肢を取る

上記のpivotの動画の最後の方にzoomミーティングが必要では、という話がありましたが、確かにそういうことをしてより具体化を進めていく必要がある気がします。日本はもう一段の進化が必要な段階に来たのだと思います。

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