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泥棒よりも恐いもの

「えー窓は閉めたほうがいいよー」
と言う嫁の前ではそうするが
僕が一人の休日の時は
窓を全開にして出かける。


こんなクソ田舎のメゾネットタイプの
アパートにどうやっても泥棒など侵入しない
むしろ泥棒が入れば快挙である。


しばらくして
青い雑巾が見えなくなった。


我が家は僕の多大なる貢献により
大分モノが少なくなっている。


その少なくなった家で
あろうことかどこを探しても
青い雑巾がない。


嫁に聞けば捨てていないという。
そもそも使うのも僕で洗うのも僕だ。


少し気になりながらも
まあいいと心を落ち着かせた。


さらにしばらくして
夜勤明けで朝帰ってきて
今から寝ようとした時に
プラモデルおばけが


「ニッパーがない。お父さん」

と言う。


「誰もニッパーとか使わないよー
 自分のモノは自分で管理する!」


と若干イラつきながら
探すこと10分。

見つかる気配はない。


時間は刻々と過ぎ
2LDKのさほど広くない部屋を
永遠と探すこと1時間。
まだ見つけることができない。

うちには2歳になる娘がいる。
もし娘がどこかへ持っていって
放置したのか。

その可能性を考えても
こんなに見つからないことが
あるのだろうか。

まさか・・・

入ったのか!

泥棒だ!


それしか考えられない!

僕は眠気のイライラと
とてつもない不安に駆られながら
眠りについた。

起きてすぐに
ニッパーはどうなったか
爪切りで製作したプラモを持つおばけに確認する。

やはりないという。

僕は物好きな泥棒が
どうでもいいモノを
数個盗んで僕らをあざ笑う人生を
堪能しているのだと考えた。

隣人の犯行か。

と思いながらブラーバ専用雑巾を
洗濯機の横にマグネットで装着している
小箱をパカッと何気なく開けると

そこにいつもいない
青い雑巾がいた。

あ・・・


そういや僕が入れたな。
思い出したわ。


いやまだニッパーは見つかっていない!


まだ犯人は近くにいるかもしれない!


「お父さんー。ニッパーあったよー。」

どこだ!どこにあった!1時間も探してなかったんだぞ!
これは確実に娘が予想だにしない場所に置い・・・・


「ここ。このプラモデルの箱の中にあったよ。」

・・・・

そこまで量の入ってないプラモデルの残骸達に
紛れていたらしい。


しかし

そこも100回ぐらい僕は見た。
灯台元ぐらしと言うにはお粗末である。

人間とはヤバい生き物だと
同時に悟った。


さあ


今日も今から窓を開けて
出かけるとするか。

僕は泥棒よりも
僕の方が恐ろしいことを知ったのである。

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