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#10 地方出身者が選ぶ、極私的シティポップソング・ベスト10

 記念すべき#10やなぁ、どうしようかなぁ、とかぼんやり考えてたらふと、そういえば#5でシャッフルの曲ベスト10を紹介して、なんか結構いろんな人に読んでもらってることに気づいたので、今決めました。5の倍数の時には極私的ベスト10をやろう、そうしよう、と。
 というわけで、山下達郎さんの新作が11年ぶりにリリースされた今このタイミングでやるなら、身勝手に自分が“シティポップってこういうことやろ?せやろ?“と、地方出身であることに若干の後ろめたさを感じながらではありますが、ベスト10を選んで紹介したいわけで。

 シティポップって何?っていう議論も色々なされてるので今さらアレですが、自分にとっては以前山下達郎さんがインタビューで言われていた“都市生活者の孤独、疎外。都会にも雨は降るし、風は吹く。“っていうこれ、このフィーリングなんだよなぁと常々思ってるんです。

Ray of Hopeリリース時のインタビューで語られた歌詞についての話

 シティポップっていう言葉が今みたいに頻繁に使われるようになった直接的なきっかけは、竹内まりやさんの“Plastic Love“だと言い切っちゃっていいと思うんですが、真骨頂の軽快なギターカッティングに合わせて歌われるコーラス部分の歌詞が、もうこの感じそのものなんですよね。

私のことを決して 本気で愛さないで
 恋なんてただのゲーム 楽しめばそれでいいの
 閉ざした心を飾る 派手なドレスも靴も
 孤独な友達

 このアンビバレントな感じ、ダンサブルで軽快なのにフィーリングはどちらかというとビター、これが僕の思うシティポップなのです。

 …というわけで、特にシティとは縁のない関西のベッドタウンに育ちながら、何故かちょっと大人っぽいポップソングが好きだったなぁ、とか思い出しつつ、その辺からいってみましょう!

1. 高野寛 “虹の都へ“

 あー、いきなりこのとてつもない透明感のある歌声と疾走感溢れるサウンドがたまらない高野寛の名曲。90年リリースで自分は当時10歳、おそらくCMで聴いたのがきっかけでCDシングルを買ったのを覚えてます。wikiで今知りましたが、プロデュースはトッドラングレン(!!)なんだそうで、10歳の俺のセンスもなかなか捨てたもんじゃないな(笑)。当時から何かすごいおしゃれなものを感じていましたが、今でも全然色褪せてなくて素晴らしいです。

 2. Original Love “月の裏で会いましょう“

 続いては91年リリース、Original Loveのこの曲を。90年代に入ると、こうした都会的なサウンドを奏でるともれなく“渋谷系“とカテゴライズされたものですが、この頃のオリジナルラブはシティポップっていう文脈で全然違和感ないと思いますね。この後“風の歌を聴け“くらいまでかなり熱心に聴いてましたが、当時分かり合える友人はたった1人でしたね。2019年のフジロックで初めてライブを観た時は興奮したなぁそういえば。

 で、田島貴男と前述の高野寛のユニットのこれもサイコーなんで番外編として。2人とも若いなぁ。

3. L↔︎R “TUMBLING DOWN - 恋のタンブリングダウン“

 もうこれは、シティポップ云々じゃなくて、とにかくPolystar/WITZ時代のL↔︎Rが好きすぎてスキがあればブチ込みたい、っていう願望なのかも知れません。ただ、作り込まれたコーラスワークやフックだらけのメロディラインからこの曲にはちょっと大瀧詠一イズムを感じるんですよね。嶺川貴子が脱退してレコード会社も移籍、よりはっきりバンドサウンドに回帰してからヒットを飛ばした頃もたまらなく好きでしたが、やっぱりそれ以前、あまり知られていなかったWITZ期の曲たちの方が思い入れ強くって、シティポップ文脈にもフィットしそうですね。

4. Pizzzicato Five “ハッピーサッド“

 こちらも渋谷系文脈で語られることが多いであろうピチカートファイブ。この90年代中盤のピチカートの曲どれも素晴らしくてどれにしようか迷いましたが、この軽快なカッティングと超ファンキーなベースラインが最高すぎるコレを。プロデューサーとしての小西康陽さんの偉大さについて今更語る必要はないと思いますが、僕はこの人の弾き出すベースラインがいつもすっごい好きなんですよね、スウィートソウルレビューとかもそうだし。偉大すぎる。

5 . 一十三十一 “DIVE”

 続いては、曲もビデオもクソ最高なこちら。メジャーレーベルで活動してた頃にもむちゃくちゃいい曲たくさんありましたが、出産などで活動休止を経た後、ビルボードのレーベルで活動再開してから、明確に所謂シティポップサウンドを全面に打ち出してそれがまた最高っていう、ね。リリースから10年も経ってるのが信じられないくらい、毎年夏になったら聴いてるなこの曲。

6 . 土岐麻子 “セ・ラ・ヴィ〜女は愛に忙しい〜“

 正直シティポップの曲を10曲選べって言われたら一十三十一と土岐麻子の曲だけでいいんじゃねえ?ってちょっと思ったり思わなかったり。シンバルズ解散後、ジャズスタンダードのカバーでソロデビュー、その後どんどんバリエーション豊かなポップスを展開する土岐さん、もう生理的なもので、この人の声が好きすぎてずーっと聴き続けてるんですが、特にど真ん中シティポップサウンドなこの曲を。実父が山下達郎バンドにも参加してたジャズサックスプレーヤーの土岐英史さんだっていうのも何だか出来過ぎなストーリー。

7. cero “Yellow Magus”

 多分2010年中頃からでしょうか、ひたすらBPMを競い合うような4つ打ちバンドブームとは明らかに違うグルーヴを奏でるバンドがたくさん出て来た感じがあったのは。フィッシュマンズを引き合いに出されてフジロックのルーキーで気になってceroを初めて見た時、おー新しいなぁ、ってびっくりしたのを思い出します。
 最近はまた変幻自在のビートでどんどん進化していますが、シティポップ文脈にもしっくりきそうな2013年リリースのこの曲を。

8. Awesome City Club “Don’t Think, Feel”

 “勿忘“の大ヒットで今やお茶の間にまで浸透しちゃった感があるオーサムですが、メンバー5人だった頃は割とこういうダンサブルなポップチューンを連発しててよく聴いてましたね。この頃のシングル曲はどれもサイコーですが、ストリングスも鳴りまくる超ど真ん中チューンをどうぞ。

9 . Yogee New Waves “Can you feel it?”

 本当に直近だとやっぱりYogee New Wavesですよね。Never Young Beachやミツメ、シャムキャッツとか色々と迷いましたが、よりボトムがグルーヴィなヨギーのこの曲にしました。自分より10歳も若いメンバーたちがこんなサウンドを奏でる…歴史は廻りますね。

10 . iri “Wonderland”

 いや、もちろんいわゆるシティポップと言われるようなサウンドとはちょっと違うのもよく分かるんですけど、何でしょうねこのヴォーカリゼーションとリリック、それからサウンドが醸し出すとても都会的でビターな何かが、最初に触れた自分の中にある“シティポップとは?“のど真ん中を射抜かれたような気がして。最新型のシティポップ、みたいな。


というわけで、やっぱり10曲じゃあ全然たりないですよね。結果自分がリアルタイムで聴いてきた90年代以降の曲ばっかりになり、大貫妙子や吉田美奈子、最近話題の亜蘭知子や真夜中のドアも入れてませんね。でもまあ、今年の夏もまた普通に聴くであろう極私的クラシックばかりなんで、ね。

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