伊勢物語「芥川」 解説
高校1年生向け
言語文化
1. どんな話なのか
身分の違う「男」と「女」がかけおちするが、鬼に食べられてしまう話。
2. 本文の「核」
・「男」が高貴な「女」を連れてかけおちする。
・「女」が鬼に食べられてしまう。
・愛する「女」を失った男は、後悔と悲しみの和歌を詠む。
3. あらすじ
*「現代語訳(口語訳)」ではありません。
4. テストに出そうな重要箇所
① え〜打ち消し
「え〜打ち消し」は「陳述の副詞」(「呼応の副詞」)である。
「陳述の副詞」とは
である。
芥川では、「え〜打ち消し」は次のような形で登場し、「〜できない」と訳す。
陳述の副詞は、勉強していないと絶対に訳せない。そのため、超頻出である(「芥川」で「え得まじかりけるを」を訳させないテストは見たことないです)。
② 「草の上に置きたりける露を、『かれは何ぞ。』となむ男に問ひける。」から、女がどのような立場であると読み取れるか。
女は「高貴な立場」(身分が高い)と読み取れる。本文中に「女は高貴だ」とは書いていないが、「夜露を見たことがなく、宝石と勘違いする」という描写から、「身分の高い女性であり、見たことがなかったのではないか」「おそらく両思いだったにも関わらず、男との結婚を許してもらえなかったのは身分差があったせいではないか」と考えることができる。
なお、「なむ〜ける」は係り結びの関係にある(「なむ」が文中にある影響で文章の最後が連体形になっている)。
③ 「あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて」とあるが、男がこのようにしたのはなぜか。
身分が高く、最愛の女性を荒れ果てた小屋に入れることは通常あり得ない。
・目的地まで遠い
・夜遅くなってきた
・雨が激しい
・雷が激しい
この4要素から、仕方なく「押し入れた」のである。記述問題の場合、上の4つが部分点となる。本文では、「鬼ある所とも知らで」(鬼がいるところとも知らないで)が「雨や雷が激しくなった」描写よりも前にあり、やや読み取りづらいので注意。
④ 「あなや」とあるが、男が反応しなかったのはなぜか。
・なぜ(雷がうるさい)
・何に(女の悲鳴に)
・どうだった(聞くことができない)
が部分点。③と比べるとやや変化球気味だが、「本文を正しく訳し、解答としてまとめることができているか」を見る問題として出題される可能性がある。「え聞かざりけり」は「聞くことができなかった」と陳述の副詞を踏まえて訳そう。
⑤ 和歌に関する問題
何らかの形で必ず出題されるはずだ。「白玉か……」の和歌は注目すべき箇所がたくさんある。例えば以下だ。
A 「白玉」の意味
「真珠」である。辞書によっては「白玉」とそのまま訳しているものもあるが、物語前半の、女が夜露を宝石と勘違いする場面を踏まえると、「真珠」のほうが適切であると思う。授業でどのように解説されたかを思い出して答える。
B 「人」とは誰を指すか
「女」である。古文は省略が多いので、「誰が誰に何をした」を意識しながら読むこと。
C 「露」の縁語
そもそも「縁語」とは
である。イメージしづらいと思うので、「似た性質をもった言葉をいくつか使って、読者に情景をイメージさせる和歌のテクニック」と考えておけばよい。援護を探す手順や規則もあるが、難解なので、頻出のものを暗記した方が早い。
この和歌では、「露」と「消え」(消ゆ)が縁語である。「露」を「かすかな衝撃で失われてしまうはかないもの」と捉えれば、自然と「消え」という言葉と結びつく。
D 「消えなましものを」の訳
「消えてしまえばよかったのになあ」と訳せる。細かい品詞分解は以下。
「ものを」まで踏まえ、「〜のになあ」までしっかり訳したい。
4要素すべてに迷う要素があり、難しい。おそらく「芥川」では最難関の箇所だろう。答えを導き出す手順は以下の画像の通り(「ものを」は暗記)。
⑤ 出典・成立・モデル・ジャンル
すべて漢字で書けるようにしておく。作者は未詳。
⑥ まとめ
「高1古文における最初の難関」というイメージ。授業進度にもよるが、助動詞の学習がひと段落ついたころに読むケースが多く、用言の活用や助動詞の学習(接続、意味、識別)、頻出の古語といった基本的な事項が身についていない場合、思わぬ苦戦を強いられる。和歌も登場し、それまでの単元よりもやや長くてストーリー性が強い作品であるため、助動詞が分からない=ストーリーを正確に読めない=授業についていけないという図式が成り立ちやすい。
古文を読むための知識がだいたい出揃い、この単元あたりから「予習で訳してきたよね?」「本文をその場で品詞分解できるよね?」という風潮が強まる傾向にある。「助動詞を理解できてるけど、パッとでてこない」「ゆっくりならできるけど、テストでパニックになりそう」という人がほとんどであろう。自然と口をついて出てくるようになるくらい定着させよう。
* おまけ(現代語訳)と「芥川」のイメージ画像
赤枠内が現代語訳です。品詞分解は別記事に載せます。
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