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茨城県小美玉市 × フードスコーレ 「食と農のプログラム in 小美玉」レポート

食の学び舎フードスコーレ

2021年の9月から11月の間、3日間で開かれた茨城県小美玉市が主催する「食と農のプログラム」。フードスコーレはこのプログラムを小美玉市と共催しました。プログラムに参加いただいた方たちにとっても、フードスコーレにとっても、地域の食から暮らしや人とのつながりを考える貴重な時間となりました。

今回は、プログラム3日間のレポートをお届けします。

地域の食の魅力を知ってもらうには?

東京から約100km、茨城県のほぼ真ん中にある小美玉市は、関東平野の平坦な地形が広がる県内でも有数の農畜産物の産地で、鶏卵の産出額は全国トップクラス。土づくり、草づくり、人づくりの三位一体を掲げる酪農も盛んで、生産から加工販売まで一貫した体制をつくっています。小美玉は、まさに食や農を身近に感じられる地域なんですね。

そんな小美玉市の主催する「食と農のプログラム」は、小美玉をはじめとした地域での暮らしに関心がある方に向けた、小美玉の食や農について触れる学びのプログラムです。「このプログラムを通して、小美玉の食の魅力を知ってもらうためにはどうしたらいいか」と、フードスコーレにご相談をいただいたのが、2021年の春のことでした。

フードスコーレが伴走するには、まず小美玉のことを肌で感じたい!ということで、その後メンバーで何度も現地視察を行いました。

このプログラムを企画する小美玉市職員の方たちや、「株式会社カゼグミ」代表の鈴木高祥さんによるガイドのもとフィールドワークを繰り返すと、少しずつではあるけどプログラム設計のヒントが見えてきまして。

プログラムDAY1でお話いただく皆藤農園さんを視察したときの様子。

小美玉を視察していると、あることに気づいたんです。そこに住む方たちが私たちに、「小美玉には何もないでしょう?」とよく口にされるんです。

これは小美玉に限ったことではなく、東京から地域を訪ねたときに、そこに住む方によく言われることではあるんです。だけどこれまで「本当に何もなかった!」なんてことは絶対にありませんでした。その地域には、その地域にしかいない人がいるし、食もあって、たくさんの魅力があるものなんです。

市内に鶏卵の自動販売機が!
小美玉市を視察したときのひとコマ。市民の方のお話を聞いて周りました。

小美玉もやっぱりそうで、視察を通して感じたのは、小美玉はとにかく食が豊富であること。いたるところで新鮮な食材が手に入るんですね。トウモロコシ、ニラ、大根、さつまいも、レンコン、ブルーベリー、メロン、酪農、鶏卵、納豆などなど、行く先々で何かしらを育てたり生産しています。

地元の人はそれを「当たり前だよ」とおっしゃっていたけど、ふだん東京で過ごす私たちから見るとそれはもう羨ましいくらいに豊かすぎる。そしてそれを「豊かだなぁ」と思うのは外から来た人だけに止めるのはもったいない。やっぱり小美玉に住む人たちにも地元の魅力に気づいてほしいから、そうしたこともプログラムの目的にしようと強く思いました。

入った喫茶店にあった看板メニュー「大人のフルーツパフェ」。果物が本当においしくて。店員の方が小美玉のことをたくさん説明してくれました。

その豊かさの裏には、きっと外からでは見えない苦労やリアルもあるんだと思います。だから小美玉に暮らす人たちからもちゃんと話を聞き、いろんな視点で小美玉の食や農に触れるきっかけをつくりたい。

これらをふまえてプログラム設計にあたっては、つぎのことをポイントにしました。

  • 地元の方とプログラムに参加する人が、ともに同じものを食べる

  • 食や農のプロフェッショナルだけではなく、暮らす方からも話を聞く

  • 小美玉に住む人たちにも、地元の魅力に気づいてもらう

  • 3日間を通して、たくさんの視点で小美玉の食や農に触れまくる


小美玉市「食と農のプログラム」始動!

3日間のプログラムのうち、DAY1は「農のある暮らし」、DAY2は「酪農とヨーグルト」、DAY3は「納豆と小美玉」をテーマに、それぞれの回でお土産や試食を用意し、プログラム参加者や地元の方と同じ空間で食を共にする時間をつくりました。

新型コロナ感染症拡大の影響もあって、DAY1のみオンラインで開催しましたが、DAY2、DAY3は現地に行き、リアルでしか体感できない生まれたての牛の見学や、しぼりたて牛乳の試飲、旬の果物とヨーグルトの試食、現地のおなじみ食堂でのランチなどを体験しました。


DAY1 農のある暮らし

DAY1の冒頭に、参加者みんなで学ぶための視点を揃えることに。これから3日間で出会う出来事に対して、観察し、考察し、推察する。

とくにオンラインで視聴していると、傍観だけの時間を過ごしがちになるので、そうならないためにも以上のことを意識してもらいました。そしてなによりこのオンラインツアーを楽しむことをみんなで確認しDAY1がスタート!

DAY1「農のある暮らし」でお話を聞いた方たち
小美玉市美野里シビック・ガーデン
皆藤梨園
Atelier Petit Bois(アトリエ プティ・ボア)

小美玉のエリアで暮らし、働く人たちを中継し紹介しました。「皆藤梨園」さんでは、皆藤梨園2代目の皆藤純一さんから、サラリーマンから就農した経緯や、樹一本一本の健康に気をつかう梨づくりへのこだわり。休みのない梨の生産にまつわる苦労などを教えてもらいました。梨園の見学が終わったあとは、皆藤さんへの質問タイム。こうした観察と考察を繰り返すことで、普段思いもしなかったことに気づけるといいなと思います。

例えば、いつも何気なく食べている梨や果物はどうやってつくられて、手元まで届いているのか? 梨づくりにどれだけの労力と知恵をかけているのか?

気にしないとずっと見過ごしてしまいそうな、「食べものは誰かがつくっていて、だれかが運んでいる」という事実に気づかされたことで、「梨だけじゃなくて、スーパーでならぶ野菜やお魚の見方も変わってきそう」という感想が参加されている方から出ました。


DAY2 酪農とヨーグルト

DAY2は、ようやく現地へ。この日に初めて直接会う参加者のみなさん。前回オンラインで交流していたからか、会ってすぐに打ち解けていました。

DAY2「酪農とヨーグルト」でお話を聞いた方たち
小美玉ふるさと食品公社
空のえき そ・ら・ら
株式会社 保田農場(旧 保田牧場)

この日、まずはじめに「株式会社小美玉ふるさと食品公社」を訪れ、ヨーグルトを試食しながら、製造部工場長の木村智信さんに話を伺いました。

食品公社の工場を見学中。
製造部工場長の木村智信さんが、私たちの質問に丁寧に答えてくれました。

1991年に町の第3セクターとして「美野里ふるさと食品公社(現小美玉ふるさと食品公社)」が創業。2014年には現在の工場のある「空のえき そ・ら・ら」の開業や、「乳製品で乾杯条例」の施行、そして2018年には「第1回全国ヨーグルトサミット in 小美玉」が開催されるなど、小美玉では酪農が推進されています。

そんな公社では、小美玉市の生乳を主原料にしたヨーグルトやアイスクリーム、プリンを製造。県内では果物が豊富に獲れることもあって、加工のできない農家さんに代わり公社で農産品を二次加工しています。農産物は仕入れるだけではなく、実際に山に採りに行きジャムやペーストにしてヨーグルトに使用するそう。なかでも筑波山でしか採れない福来みかんを使ったヨーグルトは人気商品らしいです。私たちが訪れた日の翌週にも筑波山に行って、みかんが成っていたら採って加工する予定とのこと。

夏場はブルーベリーが盛んで、7トンほど仕入れて1か月半もかけて加工するそうです。そういえば、「皆藤梨園」さんも梨の他にブルーベリーをつくっていました。こうして一年を通して、季節ごとの農産物を使ってヨーグルトやアイスクリームを加工する。まさに自然と地域とともにある工場です。

ヨーグルトをみんなで試食。トッピングは自由に!

木村さん曰く、「うちのヨーグルトづくりはプロダクトアウト。マーケットを調べないようにしている。世間に人気のあるフレーバーだからといって真似しても日本一のヨーグルトはつくれない」

小美玉ふるさと食品公社は、決して大きな工場ではないけど、小さくてつよい。そんな印象でした。

つぎに印象的だったのは畜産を営む「保田農場」さん。保田農場の保田知紀さんからは、牛舎をバックに、乳牛のこと、搾乳方法や牛の出産などたくさんのことを教えてもらいました。

保田農場の保田知紀さん。

小美玉で酪農が盛んな理由のひとつに、組織的な飼料づくりがあげられるそうです。牛の糞を畑に播いて飼料用とうもろこしをつくる。すごい広い面積だから刈り上げが大変だけど、酪農家の組合が代わりにとうもろこしを刈り取ってくれる。飼料用とうもろこしを発酵させたものを飼料にして牛を育てる。こうして循環ができていることが小美玉の酪農の強みであると。そういえば、保田農場さんを訪れるその道中、車窓から飼料用のとうもろこし畑が一面に広がっている景色が見えました。

昨今叫ばれる「アニマルウェルフェア(動物福祉)」についても伺いました。

「アニマルウェルフェアを発信している牧場は本当にすばらしいです。その上で僕らみたいな牧場は、農林水産省による手引書に則ることはできているけれど、それをアニマルウェルフェアと呼ぶことで、一般の生活者が思うアニマルウェルフェアの牧場とのギャップには驚くと思います。極めた牧場の様子を見て、それがアニマルウェルフェアであって、そうじゃない牧場はアニマルウェルフェアを実践できていないと思われてしまうと困ってしまいます。こうしたギャップは埋めて行った方がいいんでしょうね。そもそも僕らは牛をとても大事にしています。牛にストレスをかけないということは良い乳がとれることにも繋がるので大事なことです。」

最後に保田さんは、「各地の牧場それぞれに役割がある。小美玉というこの土地で酪農をやるとなったから、この土地でできることの最大限をやる。牛乳を毎日飲みたいとなったときに、それに適した価格の牛乳をつくることも大事なことだと思っている。」と話されていたことが、今でも忘れられません。


DAY3 納豆と小美玉

茨城県といえば納豆!ということで、最終日には「タカノフーズ」営業推進部門の宮本幸規さんに、納豆についてのお話を聞く時間をつくっていただきました。

DAY3「納豆と小美玉」でお話を聞いた方たち
タカノフーズ
うこっけいおみたまごファーム
カフェバール まつのぢ舎

「タカノフーズ」営業推進部門の宮本幸規さん。

納豆生産量No.1の水戸工場。現在、新型コロナ感染症防止対策から工場見学ツアーを中止されているとのことで、今回は別会場で、納豆生産の様子を伺ったり、納豆の食べくらべ試食会を行いました。

なぜ納豆は3パックで売っているのか? なぜかき混ぜた状態で売っていないのか? 100回混ぜるとおいしいというのは本当か? など日々の疑問や、納豆の歴史や文化を学び合いました。

数種類の納豆を食べくらべ。タカノフーズさんの豆腐もいただきました。
親子で参加されている方も。


食と農のプログラムを終えて

「同じ釜の飯を食う」とはよく言ったもので、みんなで同じものを食べると自然と笑顔が溢れ本音が聞けます。食や農に関わるプロフェッショナルな方たちはもちろん、地元の人から身近なお話しを伺いながら同じものを食したことで、参加者のみなさん同士の距離がグッと深まった気がしました。

今回の3日間は、小美玉の暮らしに触れるきっかけにしか過ぎません。フードスコーレでは今回のご縁を機に、この後も小美玉市と食と農の暮らしについてフィールドワークを行なっていきたいと思います。

またフードスコーレでは、小美玉でプログラム化した経験をベースに、地域の食の魅力を知ってもらうための学びのプログラムは今後も体系化していきます。地域ごとに事情はちがうわけなので、同じプログラムがひとつとしてないのは当然で、だからこそ食はおもしろい。そうした地域の食のおもしろさを体験したい人と地域を繋げることもフードスコーレでは行なっていきたいと考えています。

レポートは以上です。今後もフードスコーレの活動をレポートしていきますのでおたのしみに!

(2022年2月11日)

小美玉市によるレポート
「食と農のプログラム in 小美玉」小美玉市のレポートはコチラから。

「食と農のプログラム in 小美玉」について
このプログラムは、2021年9月〜11月に実施されました。フードスコーレwebサイトでのプログラム案内はコチラから。

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