たかが『やりがい』で、自分の人生を会社に売り渡してないか?|仕事の報酬は●●である|【読書セラピー】仕事の思想 なぜ我々は働くのか
「仕事の報酬は●●である」
これは自分自身のステージによって
見えてくる景色が違いました。
どうも読書セラピストのタルイです。
突然ですが、
あなたは仕事に対して
「やりがい」は必要だと
お考えですか?
こちらは2020年に日経メディカルが
Online登録会員332人を対象に
「仕事のやりがいに対する意識調査」
を実施した結果です。
「必要(67.2%)」
「どちらかといえば必要(27.4%)」
実に9割以上の方が
必要だと回答しています。
ところで、
仕事のやりがいとは
何でしょうか?
現代の日本では
その絶対的な定義は存在せずに
多様化しているようです。
もちろん私も
仕事にやりがいは必要
と思っているのですが…
同時にこんなことも考えてます。
そもそも、仕事のやりがいは
必ずみんな得られるとは限らない
もし仮に
今の職場でやりがいを感じず
やりがいを求めて転職しても
やりがいは得られる保証がないのです。
ということは
やりがいを求めて
転職を繰り返すのならば
それは幸せの青い鳥を
追い求めるが如く
永遠に得られない
「罰ゲーム」を繰り返す
危険性もあるのです。
ではそんな罰ゲームを避けるために
私たちはどう準備を
しておいた方がいいのか?
今日はそのヒントになる
本を紹介します。
著者は大御所の田坂 広志さんです。
田坂さんは教えてくれました。
「何のために働くのか」という、
この問い掛けと
その答えにこそ
今後の長い人生を左右するような
大きな意味が込められている
ということです。
本書のキーワードは
全部で10個あります。
このうちの本書の「成長」の章では
「仕事の報酬は●●である」
といった哲学的な問いかけから
目には見えないが、
一生失うことのない
「最高の報酬」がある
と説いてます。
もったいぶらずに
結論である
「最高の報酬」をお伝えします。
「仕事のやりがい」
ではありません。
それは、仕事という
作品の創造を通して得られる、
技術の熟練、
人との出会いと学び、
完成の喜び、
その結果としての
「人間的成長」
なのです。
本書では
大学を卒業して
将来はジャズマンを夢見るが
とりあえずは無難に就職した
田坂さんのある友人との
エピソードが語られています。
この友人ご年齢を重ねていくことで
自身の考える「仕事の報酬」が
徐々に変化していくさまに
ご注目ください。
◆仕事の報酬は●●である
●ステージ1「仕事の報酬は給料である」
田坂さんのご友人は大学を卒業し
ある商事会社に就職されました。
友人の彼と田坂さんが
酒を飲んだ時に
その彼は田坂さんに漏らしました。
「俺は本当は就職など
したくなかった」
「本当はジャズの道で
生きていきたかった」
「だけれども、
それでは飯は食っていけない」
「だから給料の良い会社に就職した」
そして最後に一言
私も思い返してみると
仕事の報酬は給料だった
時がありました。
給料のために働く
これはマズローの欲求階層説で
いうところの生存欲求ですね。
もちろんお金のために働くことが
悪いことではないですよね。
令和3年度に
内閣府が実施した
国民世論調査において、
働く目的は何か?の問いに対し、
「お金を得るために働く」
と答えた人は61.1%と
最も高い割合になっています。
その後、
ジャズマンを夢見る彼は
どうなったのか?
報酬が給料のステージを超えると
次のステージが待っているのでした。
●ステージ2「仕事の報酬は能力である」
それから田坂さんとご友人の間に
3年の月日が流れました。
田坂さんが久しぶりに彼に会い
「仕事の調子はどうだい」
と彼に尋ねたところ
おっと、一体彼に
どんな心境の変化があったのか?
それは
「できなかったことが、
できるようになる」
この成功体験は、
人間にとって本源的な楽しさですよね。
石の上にも3年といいます。
一般的に
どんな仕事も3年はやると
能力は付きます。
またスキルアップは
キャリアアップにも通づるところです。
もちろんお給料は大切ですが
先見をもって腕を磨くことを
していかなければ、
結局は、給料そのものが
上がっていくことはないです。
ぜひ転職の際は、
目先の給料の高さに
目を奪われるよりも、
プロとして自分の能力を
長期的な視点から開発していく道も
考慮したほうがいいですよね。
仕事のスキルやノウハウを身につけ、
仕事の能力を磨いていくと、
その向こうに
さらに新しい世界が見えるように
なってきます。
●ステージ3「仕事の報酬は仕事である」
さらにその7年後。
30代を迎えた彼は
社会人10年目の商社マンとなり
彼の発言も変わりました。
仕事のスキルやノウハウを
磨いていくと、
これまでできなかった新しい仕事に
取り組めるようになってきます。
自ら企画を作成した
「やりがいのある仕事」
を任されることもあります。
あるいは周囲から
「やりがいのある仕事」が
回ってくることもあるでしょう。
ここまでで、
田坂さんのご友人は
社会人10年目で30代になったことで
仕事の報酬が給与から能力ときて
やりがいに変わりました。
冒頭でご紹介したアンケートによれば
各年代別に見ても「やりがい」は
半数以上の方が感じておりますが
特に30代を迎えると
増加傾向にありますね。
さて、前述してましたが
目には見えないが、
一生失うことのない
「最高の報酬」は
実は「仕事のやりがい」ではない
ことをお伝えしました。
次がいよいよ最後のステージです。
●ファイナルステージ「仕事の報酬は成長である」
そして、
さらに5年の月日を重ねた頃
彼は15年目の
中堅のビジネスマンとなりました。
彼は精神の成熟をされました。
彼は、
15年の歳月を費やして
遠い旅路を歩み
そして、
ひとつの目的地に到達したのです。
かつて若き日に
思い描いた目的地とは違いましたが
素晴らしい目的地に着いたようです。
なぜならば
「人間としての成長」は
決して失われない報酬だからです。
例えば、
仕事の報酬として
「給料」と「地位」は
給料を遣ってしまい
会社の地位から退いてしまえば
失われます。
身につけてた「能力」も
腕が落ちたりしたり、
いまでしたらAIの出現によって
陳腐化してしまうこともあります。
また、
やりがいのある仕事も
必ず得られるとは限らない報酬です。
なぜならば
さまざまな困難や障害に
突き当たることで
成し遂げられないこともあるからです。
しかし
人間としての成長は
仮に困難や障害に直面して
仕事そのものが挫折したとしても
その困難や障害と格闘する中で
必ず人間というものは
成長していくことができるのです。
成長は失われないのです。
ここまででやりがいは
必ず得られるものでもなく
仕事の最終ステージではない
ことがわかりました。
次の章では田坂さんの説を
私がマズローを引用しながら
さらに深く考察してみます。
◆やりがい≠自己成長の理由
私は、田坂さんの
「仕事の報酬」のお話は
あのマズローの有名な
欲求五段階説が
ベースになっていると考えます。
マズローといえば
ピラミッド図が有名ですが
今回注目して欲しいのは
下図の右端にある
「成長欲求」と「欠乏欲求」です。
「欠乏欲求」とは
満たすための要因を
外部環境から得なければならないため
満たされてしまうと、
それ以上のものを
求めなくなってしまいます。
田坂さんは仕事の報酬を
失わない欲求と失う欲求としました。
マズローの「自己実現の欲求」である
「成長欲求」は
自らの精神的成長のための行動に
ともなって得られる
内的な満足を求めるため
無限に求め続けます。
田坂さんの
仕事の報酬は成長である
これはまさに
自己実現欲求のことであり
失わない欲求です。
一方で田坂さんの「失う欲求」とは
マズローの「欠乏欲求」と同義です。
給料や収入、役職や地位は、
使ってしまえば無くなる報酬でもあり
その仕事を離れれば
失ってしまう報酬でもあるのです。
それは、やりがいも同様です。
●やりがいは欠乏欲求である
もう一度、こちらの図をご覧ください。
注目してほしいのは
ほぼ半数以上の方が上位にされている
「やりがい」についてです。
お礼や感謝は成果を出さないと
なかなかもらえません。
興味ある仕事も
職場の配置で就けるかわかりません。
目標を達成できればいいですが
未達に終わることもあります。
以上の考察から
多くのビジネスマンにとって
「やりがい」とは
欠乏欲求だということを
意味してます。
問題は欠乏欲求は
自分自身で
満たすのではなく、
自分以外の誰かや
社会や環境といった
外的要素によって
満たす必要があることです。
言い換えれば、
自分でコントロールしづらいのが
欠乏欲求だということになります。
これでは
欠乏欲求を満たそうとすると
自ずと自分の周りの人々の
顔色を伺わざるを得なくなりますね。
なぜならば
欠乏欲求が満たされるかは
環境に依存するため、
周りに振り回されやすいからです。
◆「起業」や「脱サラ」はやりがい過ぎる報酬
ところで
成長欲求(存在欲求)は
その欲求が満たされるかは
自己に依存するため、
周りに振り回されることが
少ないです。
よって思い切って
起業することも一つの手段ですが
失敗するリスクもあります。
ちなみに私が関連してる
飲食業界では
仮に起業しても
三年以内に70%が閉店します。
そのうち
脱サラで開業された方は
3年後に90%消えます。
3年後の生存率が10%
そのリスクがある分だけ
仕事のやりがいがある
とも言えるのですが…
全ての方に
現実的な選択とも言い切れません。
問題を整理します。
●ビジネスマンの仕事のやりがいは
自分でコントロールしずらい
●独立すればやりがいはあるが
リスクも大きい
私はこの問題における弁証法として
次を提案します。
◆〈解決策〉『欠乏』を受け入れることは自己成長です。
私の考える
ビジネスマンにとっての
合理的な解決策は、
欠乏欲求を
受け入れることです。
もしも
「受け入れる」というワードが
ピンと来なかったら
「手放す」でもいいです。
あるいは「捨てる」「認める」
「自己受容」
細かい定義の違いは
この際どうでもよくて
要は今まで欠乏欲求を満たすために
費やしてきた
お金と時間のエネルギーコストを
成長欲求に充てることなのです。
例えば
これはマズローで言うと
「承認欲求の欠乏」している
状態ですね。
これも職場内の場合でしたら
「感謝とお礼の
一言メッセージを添えよう」
という風潮なので欠乏しませんが
お仕事相手だった場合は
望んだ結果が得られないと
お礼も感謝もされない
可能性も高いです。
これを解決するならば
「自分で自分を認める心」
ことだと思います。
また
仮にできていないからとて
興味ある仕事に就けていない
自分の人生に意味があるのか?
と考えるのではなく
今この仕事をやることは
自分の人生において
どんな問いかけなんだろうか?
と逆に考えてみるのです。
これはフランクル心理学の
ロゴセラピーのやり方です。
何かとてつもなく大きな目標を課して
自分を苦しめていないでしょうか?
目標を細分化して
小さな目標を達成していくことは
満足感を得る方法なだけではなく
〈生きがい〉にもつながるのです。
以上、
欠乏欲求を受け入れることで
思考エネルギーの
分散を避けることができます。
欠乏にお金で解決することに
資金を投入せずとも
自己成長のために投資することで
限りある資金を有効活用できます。
自己成長のためにリソースに
選択と集中させることが
本当の解決策ではないでしょうか。
欠乏欲求は嘆いても
時間と思考の無駄です。
●自己成長とは無我夢中に没頭していること
ここでは
自己成長を整理してみましょう。
マズローは自己成長のためには
自己超越が必要と定義してます。
自己超越における『超越』とは
何もスーパーマンになれ
と言っているのではありません。
自己超越とは、
人間の存在がいつでも、
自分自身ではない
「なにもの」かに
向かうということです。
仕事や趣味に没頭している時、
人は時間を忘れ、自分を忘れて
極度の集中状態になります。
没入状態の時には、
自分を意識することがなく、
ふと我に返った時に、
自分の存在に気づきます。
こうした自己自身を忘れている状態を、
マズローは「自己超越」といいました。
自分を越えた存在
他人や仕事や社会や自然と関わり、
それらから求められる事に
没頭している時、
その人に潜在している
真の人間性が発揮され、
よりよい心理状態が実現されるのです。
◆〈まとめ〉『やりがい』で自分の人生を会社に売り渡してないか?
今回のまとめです。
やりがい≠自己成長
起業や脱サラはやりがいはあるがリスクもある
欠乏欲求をコントロールすることも自己成長
つまり解決策は
欠乏欲求をコントロールして
成長欲求に選択と集中をすれば
いわゆる目の前の仕事に
無我夢中で取り組んでみることが
自己超越であり、
自己成長なのでした。
前述しましたが
「やりがい」というワードは
非常に多様化していて
定義の曖昧な言葉なのです。
そして、そのほとんどが
欠乏欲求でした。
最後に私からあなたに質問です。
いま多くの会社が会社が
離職防止と定着率向上ために
「やりがい」を
数多く用意してくれます。
●褒める文化の推奨
●エンパワーメント(権限委譲)
●失敗を恐れずにチャレンジを推奨
などなど
もちろん悪いことではありませんが
問題にしたいのは
ちゃんと
「やりがい」と「お給料」の
バランス合ってますか?
それは「やりがい搾取」
になってませんか?
「やりがい」は
仕事の報酬のゴールではありません。
自分にとっての成長とは
無我夢中になれること
それは会社に依存しなければ
得られないのか?
一度、立ち止まって
考えてみる機会を
設けるはどうでしょうか?
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
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この記事はumiさんとの
スタエフでの対談から生まれました。
umiさん、機会を作っていただき
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