見出し画像

カフェインの科学 図解をもっと詳しく解説してみた

今を遡ること1週間前、こちらのツイートがおバズり遊ばれました

「この図に関して中途半端に解説してしまうと同業他社に迷惑をかけちゃうので、読み取り方は各人判断してね」というスタンスなので、あえて言葉すくなく載せてますが、本当はもっと知ってほしい!!でも140字じゃ足りない!

ということで、この図をもっと楽しむために見るべきポイントや誤解を解くための解説をしてたらなんと5000字超えました・・・。暇な時に読んでみてください。

一番言いたかったこと

あえて触れずに来てましたが、わざわざnoteにまで来てくださった方のためにこの図で一番伝えたかったことを書くと、「カフェインの濃度ばかりでなくカフェイン飲料を飲む量も含めて考えて欲しい(=横軸をしっかりみてほしい)」ということです。

玉露の例

例えば極端な例でいうと玉露。玉露はよくカフェインがたくさん入っている事例として出てきます。

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20211104_3.pdf

食品標準成分表にも出てくる有名な比較ですが、これだけ見ると玉露やべぇってなるわけです。

しかし、、、

そもそもみなさん玉露ってどんな器で淹れるかご存知ですか?

上記の説明によると玉露は一人前で30cc。普通の湯呑みが120−150ccであることを考えるとかなり少ないのがわかりますね。

そう考えると、カフェインが仮に8倍だとしても飲む量は4−5分の1なわけで、そこまで騒ぐほどの量でもないわけです。

グラフでは上に飛び出ているけどあまり右にいないのはそういうカラクリになっています。

ちなみに玉露は味のインパクトもかなり強く、これをガブガブ飲むのはちょっと難しいと思いますし、そもそも懐にも直撃しますので、何重の意味でも多飲することはあまりないかと。

基本は量を気にすべきだが・・

また、今回の作図では横軸に対して「妊婦さんはこれ以下」などの基準を入れました。この辺りはWHOやEFSAなど海外では基準値を設けているので、それを記載してみました。

そして、こうした基準は縦軸にはありませんね。つまり、世界的にみても濃度に対する基準は設けられていません。ある意味それは当然と言えば当然で、濃度に基準を設けたら錠剤が成り立たなくなりますからね(純度が飲料の比ではない)。

じゃあ濃度は気にしなくていいかというと、やはりそんなことはありません。一気に摂取して血中濃度が急上昇することによる中毒の事例もあるようですし、特に体の小さな子供などは注意が必要です。一気飲みはやめましょう。

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/injuryalert/0120.pdf

ちなみに、摂取したカフェインが体の中でどうなるかはこちらのコラムでも書いているので、かなりマニアックな話ですが興味のある方はぜひ。

製品よりジャンルで見てほしい

続いて、私の選び方が悪くて誤解を生んでそうなのでそれを正したい。

このマッピングに入れた飲料は私がパッと思い浮かんだ(おそらく売り上げの多い)ものが並んでいるのですが、もっと各社のレパートリーを考えて出すべきだったと反省しております。

ではもう一度この図をよくみていただきたい。

ボトル缶コーヒー

特にこれ。○リーズコーヒーの量が多いというコメントがものすごくたくさんあって、(しかもポジティブな意味とネガティブ(自虐的)な意味を含んでいたのも面白かったんだけど)果たして本当に○リーズボトル缶のカフェインは抜きん出て多いのか?

そこで、ボトル缶入りのブラックコーヒーに含まれるカフェイン量を複数社分調べてみましたが、200−250mg/本とどれも割と多い物で溢れてました。

つまり、○リーズボトル缶のカフェイン量が多いのではなく、ボトル缶入りのコーヒーのカフェイン量が全体的に高い、と捉えるようが正しいでしょう。

「容量が500mlと多め」「リキャップ可能で一気に飲まない人も多い」あたりから多くなっているのかもしれません。

そういう意味ではペットボトル入りコーヒーも似たような範囲だったので、クラフトB○SSについても同様のことが言えそうです。

カフェオレ

あと、カフェオレも案外カフェイン量多いねというコメントを多数いただきました。

これも今回図示したものが500mlとやや多めだったせいもありますが、そもそもカフェオレはコーヒーと牛乳の割合によって変わりますし、これはメーカーによってかなりばらつきがあるようです。

カフェオレは子供でも飲みやすい(子供の摂取については後述)ため心配な方はメーカーに問い合わせるなどしてみましょう。公開している会社もちらほらあります。

エナジードリンク

エナジードリンクの場合、カフェインを添加するので良くも悪くも企業側がコントロールできます。なので、多い場合も少ない場合もまちまち。

ただし、カフェインを多く(具体的には21mg/100ml)含む場合はちゃんと表示したり注意喚起をしようね、という業界団体のガイドラインもありますので、ちゃんと読みさえすればある意味注意はしやすいでしょう。


含有量はあくまで参考値

さて今回の作図にあたり、一次情報として各社のサイトを覗きに行ったのですが、実はカフェイン値を公表していない会社もかなりありました

というのも食品の表示の法規上、栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、食塩相当量、エネルギー(カロリー)など)は表示義務がありますが、カフェインは義務付けられていません。栄養素じゃないので。

また、カフェインは原料のばらつきによっても多少前後しますし、基準がない以上各社あくまで参考値として出しています。

ですので、グラフもあくまで参考値としてみれもらうことも大切ですね。実際の表示上の値とどれくらい違うかを前述の国民生活センターの調査でも確かめていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20211104_3.pdf

一つだけグラフをここにも記載しますが、実測値(棒グラフの値)と表示上の参考値(●や▲)とでそこまで大きな違いはなさそうです↓

ちなみに国民生活センターは、この文書の中で以下のような要望を出していました。

業界・事業者への要望
商品中のカフェインについて、消費者からアクセスしやすく適切な情報提供をすることを要望します
テスト対象銘柄 78 銘柄中、商品本体にカフェイン含有量の表示がみられたのは 25 銘柄、商品本体には含有量の表示がなく販売者等のウェブサイトのみに含有量の表示がみられたのは 22 銘柄で、それ以外の銘柄では商品本体や販売者等のウェブサイトには、含有量の表示はみられ ませんでした。
(中略)
○要望先
一般社団法人全国清涼飲料連合会

この要望に従ったところはカフェイン量を全て提示し、そうでないところは特に対応していないということなんでしょう。

ちなみに、スタバはあれだけある全製品に対して目安量を載せていたので、企業努力を感じました。


飲む人によって気をつける量は違う

さて、この図の横軸にもう一度着目していただきたいのですが、○mgまでにしましょうねという目安を入れてあります。

健康な成人

カフェインの過剰摂取によって以下のような安全性上の懸念があると言われています。

カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。 消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります

カフェインの過剰摂取について 農水省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

実際にカフェインを摂取しすぎて体調を崩した経験はもしかしたら持っている人も多いかもしれません。

欧州やカナダの基準によると、一日400mgまでの習慣的な摂取なら大丈夫とのこと。

図を見てわかる通り、一製品で400mgを超えるようなものはほとんど存在しないので、かなり大きなサイズを選んだり、何杯も飲むような人は要注意。

妊婦・授乳中の女性

妊娠中や授乳中の場合上記以外にもケアが必要です。例えば「出生児が低体重となり、将来の健康リスク が高くなる可能性、又は自然流産を引き起こす可能性」も指摘されているので、カフェインには注意が必要です。

これらの場合団体によって基準値が違うのですが、200か300mgまでと考えておいてください。

コーヒーだとカップ1杯くらいなら大丈夫そう。これ、思ったより飲んでも大丈夫と感じた人の方が多いのでは?

妊娠授乳中は確かにカフェインを避けるように言われますが、0か100かで考えるより、「これくらいまで大丈夫」「これ以上はダメ」ということで考えましょう。特にちょっとくらい飲んでしまっても心配することないというのは全妊婦さんに伝えたい!!

子供

子供は単純に体が小さいためちょっとの量で影響が出やすく、注意が必要です。

カナダ保健省ではこのような基準を定めているそうです。

・4~6 歳児:一日に 45 mg 以下
・7~9 歳児:一日に 62.5 mg 以下
・10~12 歳児:一日に 85 mg 以下
・13 歳以上の青少年:一日に 2.5 mg/kg 体重以下

https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

基本的にカフェインって苦いのであまり子供は好んで飲みませんが、糖で甘くしているもの(エナジードリンクやカフェオレ)を飲ませる時は要注意です。

ただし、個人差は大きい

カフェインに対して、代謝酵素や受容体(アデノシン受容体)など遺伝的な影響もあり、体質には個人差(人種差含め)が大きいと言われています。

最近よく唾液で遺伝子検査をしているサービスもありますが、ここでもカフェインへの影響を確かめられたりするので、気になる人はやってみましょう(あくまでコーヒー摂取頻度との比較ですが)


なので、この数値を気にするのは大事ですが、自分自身でどう感じるかも含めれ注意していきましょう。ちなみに私は、コーヒーをカップ2杯以上飲むと気分が悪くなるので、多くて1杯にとどめております。

ちなみに蛇足ですが、日本ではこういった基準は特に設けられていませんので、前述の通り各国の基準値を参照しているわけです。

カフェイン以外にも気をつけるべし


さて、カフェインの話をここまでしてきましたが、最後にカフェイン以外も考えなきゃねというお話です。

糖(コーヒー、エナドリ)

前述の通りカフェインはとっても苦い(実は遺伝的に個人差があります)ので、飲みやすくするために糖が入っているものも多いです。

糖を含む飲料の日常的な摂取は肥満や糖尿病になるリスクが上がることや、急激な血糖上昇(いわゆる血糖スパイク)は血管を傷つけるという話もある(要議論)ですので、カフェイン以外の観点でも飲み過ぎや一気飲みは注意しましょう。

アルギニン(エナドリ)

エナジードリンクには体感を高めるためにアルギニンなど血流を増加させるものが入っている場合も多いです。別にだからと言ってどこまで危険なのかよくわからないですが、カフェインの作用を増強する可能性もありますし、見た目のカフェイン量だけでなく注意は必要かもしれません。

テオブロミン(ココア)

さて、しつこいけど図を再掲。原点付近をもう一度見ていただきたい。

ココアがありますね。カフェイン少ないし余裕やん!!がぶ飲みや!!

と思うことなかれ。

http://www.chocolate-cocoa.com/lecture/q12/

ココアにはカフェインが少ない代わりにテオブロミンという成分を多く含みます。このテオブロミンはカフェインと非常に似た構造を持っており、かつ生理活性も似ています。テオブロミンもカフェイン同様過剰摂取には注意しましょう。

ちなみに、カフェインの方が(メチル基が一つ多く)脂溶性が高いため脳に移行しやすいこと、アデノシン受容体へのアフィニティが高いことなどが知られており、テオブロミンの方が多少活性は低いではあるようです。

テアニン(緑茶)

これはむしろカフェインの作用を抑える方向の話ですが、カフェインの興奮作用をお茶に含まれるテアニンは抑制するという研究も一部なされています。

ただ、あくまでそう言われているくらいに止めるべきでしょう。例えば「カフェインの錠剤取りまくったけどテアニンも取っておけばOK」みたいな思考には至らないように。

まとめ

ということで、あの図だけでは語りきれないことを書いていたら5000字を超えて今に至りました。

コーヒーをはじめ嗜好飲料が人間の営みを豊かにすることは間違いありません。

ただ、やはりやりすぎは厳禁なので、自分の上限をちゃんとわきまえつつ、より良いカフェインライフを送ってください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?