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年収安すぎワロタ…病院に勤務する管理栄養士

管理栄養士という職業をみなさんはご存じですか?

日の当たらない職業&低賃金な職業であることは自覚していますが、そんな管理栄養士でもお客さんや患者さんのために日々楽しみながら仕事に臨んでいます。

今回は病院に勤務している管理栄養士の私が、ひたすらに病院食のアレコレや自己満足を語っていきます。ぜひともチャンネルはそのままで。

これは遡ること10年前になります。私は都内の大学の栄養学科を卒業すると、大学教授の推薦で関東圏の大学付属病院に就職しました。

大学病院のスタッフは全国から選りすぐりされた、エッリート達(私のように。嘘です。)が集まってきているので、そのぶん個性が際立っている人たちが多かったと思います(私のように)。

外国人の患者さんも多く来院されるので、英語や中国語がペラペラな同僚が何人も入職していました。

私は英語や中国語はおろか、日本語も小学校3年生程度の知識でしか喋れません。

大学病院での管理栄養士の勤務内容としては、入院している患者さんの栄養管理がメインです。

もちろん、何かしらの疾患や疑いがある方が入院されているため、その患者さんの病態によって、提供する食事の内容を計算して、喫食量が少ない患者さんには栄養補助食品を提供して低栄養状態にならないように留意しています。

もちらん口から食事を摂れない患者さんには、鼻管や点滴で栄養しなければならないので、より詳細な栄養計算が必要になります。

管理栄養士は病院で献立を作る職業というイメージが多いと思いますが、患者さんの栄養状態を維持、または改善するために医師や看護師さんと協力して業務に努めています。

そんな栄養指導の中で患者さんに食事を提供するわけですが、いかんせん病院の食事はみなさんが想像する以上に美味しくないです。

そんな病院食は患者さんの保険の種類にもよりますが、1食460円という金額をいただいています。

「460円あれば、牛丼に卵を付けて食べられるだろ?こんな質素なメシじゃなくて、もっと美味いメシ出せや!!!!!!!」

お元気でハツラツな患者さんの中には、管理栄養士の顔を見るたびに、ポケモンの海パン小僧のようにバトルを仕掛けていただく方もいます。

ですが、患者さんのお気持ちは痛いほど分かります…だって本当に美味しくないです…。

多くの病院は食事を調理してくれるスタッフを給食会社さんに委託しています。

給食委託会社さんに支払うための、食材費+人件費+雑費等を考慮した結果、そこそこな値段で、そこそこなパフォーマンスを発揮してくれる食材達が精鋭され、あまり美味しくない病院食を完成されるという仕組みになっています。

もちろん、少ない予算の中でも美味し食事を提供する病院は星の数ほどあります。

大学病院は1食1000人近くの食事を調理しているので、マンパワーが乏しくなっていることもご了承下さい(定期的に献立は修正していますよ)。

そんなある日…患者さんに昼食を提供して、いつも通りに事務室でヘコヘコと事務作業をしていると、病棟の看護師さんからコールをいただきました。

「〇〇さんが管理栄養士さんに食事のことで伝えたいことがあるって言ってたよ。ものすごい真剣に訴えてきたから、よろしくね」

う…うぅ…今日の昼食の献立は魚の塩焼きか…深海魚だから、魚臭かったかな…。この献立も修正が必要かな…。

私は患者さんに病院食が美味しくないと罵声を浴びせられる気マックスで患者さんのいる病室に向かいます。

病室に伺うと、そこにはうつむいた様子で頷くおばあちゃんが座っていました。

「〇〇さん。お食事のことでお話ししてくれると看護師さんからお伺いしました。どうかなさいましたか?」

「…今日のお昼ご飯を作ったのはあなたかい?」

「そうですね…私が献立を考えて、調理師さんと一緒に作りましたよ。」

「私は生まれてこのかた90になるけど、こんな魚は初めて食べたよ…まさかずっと憧れていたガメラを食べられるなんて…。」

私にはなんのことかさっぱりでしたが、どうやらおばあちゃんは昼食に出た魚をガメラの肉だと勘違いしているようでした。

たしかに深海魚の中には、皮が黒く、強そうな鱗を持ち合わせているので、味は美味しいのですが、見た目はお世辞には食欲が沸くようなフォルムはしていません。

おばあちゃんが子供の頃に特撮好きだったのかは不明ですが、ガメラの肉を食べられたと大喜びでした。

一方、私は、そんなガメラの肉を2度と献立に使うものかと心に誓いました。

ちなみに病院の近くのスーパーには深海魚の品ぞろえが豊富なことが多いです。

おそらく、退院した患者さんが病院で食べた深海魚が身体に良い魚なのだと勘違いし、スーパーに問い合わせしている結果なのでしょう。

病院食は毎日食べても飽きないという。かっぱえびせんのようなメニューではありませんが、患者さんから人気の鉄板のメニューもあります。
それは、みなさん大好きカレーライスです。

ガンダムくらいの大きな鍋で、火拳のエースくらいの高火力で調理するので、食材の甘味が際立って、そこいらのカレー屋さんよりは美味しくなってくれています。

「それって、あなたの感想ですよね?」と言われてしまえば、グウの音も出ないですが…。グウぅぅ…。

カレーライスを提供する日には、ポケモンバトルを仕掛けてくる海パン小僧も食欲のないおばあちゃまも、美味しかったわ~と食事を平らげてくれることが多いです。

もういっそのことイチローみたいに毎日カレーライスでもいいんじゃないか、とも思う今日この頃です。

そんな妄想をしているだけが、管理栄養士の仕事ではありません。

入院中や外来に通院されている患者さんで、食事療法が必要な方には栄養相談という食事に対するアドバイスをしています。

例えば、血糖値が高い患者さんの中には、血糖値を厳格にコントロールしようと極端に糖質を摂取しない方がいます。

ですが、極端な糖質オフの食事は心疾患のリスクや筋肉低下の原因となるので、栄養相談で根拠を示しつつ適切な食事習慣を検討してもらっています。

先日、外来通院中の女性の患者さんもそうでした。

食べるのが好きで、体重100kgは超えている40代の方でしたが、お話しを始めると同時に、

「先生ぃぃぃ~ご飯とかパンとか炭水化物は一切食べていないに、なんで痩せないのぉぉぉぉ~。こんなに頑張っているのにぃぃぃぃ~(泣)。もう私は水を飲んでも太るんだわぁぁぁ~(泣)」

なんとなく、痩せない原因は分かっていましたが、話を深堀すると、主食を食べない代わりに空腹感から間食にお菓子を大量に食べていることが判明しました。

「あのね…カビゴンさん(仮名)。人間は血糖値が低くなることで、お腹が減ったっていうサインが出るんだよ。ご飯をしっかり食べないと、ずっと空腹感が続くから、お菓子が食べたくなるんだと思うな~。」

こんな簡単なアドバイスでも患者さんにとっては目から鱗だったり、灯台下暗しだったりするようです。

簡単なアドバイスでダイエットに成功して、泣きながら喜んでくれる方もいます。

管理栄養士は日の当たらない職業であることは自覚しています。

ついでに低賃金です。

私の方こそ泣きたくなる日もあります。

でも患者さんの喜んでいる姿に毎日触れられることで、なんとか今の今まで挫けないで、この仕事を続けられているんだと思います。

ここまで駄文にお付き合いいただいてありがとうございました。

みなさんに最後に一つだけ、

あなたの身体はあなたが今まで食べたものでできています。

あなたが少しでも体調が悪くなることで。あなたの大切な家族が心配に思い、心細くなる夜があります。

管理栄養士は食事や栄養のプロです。些細なことでも何か困ったことがあれば、医療機関にいる管理栄養士に相談してください。

あなたの笑顔が医療者ではなく、大切な人の近くで長く続きますように。


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