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FaY|ラオスの民話 カオマラオ



プロジェクト紹介

2021年11月からスタートした、Wisa(日本)&CAF(ラオス)の協働プロジェクト、「民話と若者」FaY(Folklore and Youth | フォークロア・アンド・ユース)。

本プロジェクト は、Wisa(Wakamono International Support Association)が2021年から開始したラオスの若者とのデジタルユースワークプロジェクトです。ラオス人の子ども・若者たちがお年寄りから聞き取った昔話を文字起こしし、その英語の翻訳をオンラインでつながった日本人の中学・高校・大学生の学生たちがお手伝いします。その後、日本語に翻訳して、イラストをつけていきます。

プロジェクトについての詳細は、こちらのActivo

今回はラオスの全域で多くの民族間でも語り継がれてきた、稲作・稲魂の神話、カオマラオを紹介します。この神話には、人間の労働の起源、人間社会の不幸の起源が記されています。

作品本文

カオマラオ イラスト、WISA|FaYプロジェクト

遠い昔、世界のすべてが調和に満ちて平和でした。

その頃、言葉はありませんでした。そのため、何も問題はありませんでした。
それぞれの生き物は、どのように生きるべきかも、またどのようにしてあるべきかも誰も知りませんでした。
人間にも自然にも、何も悩みがありません。
なぜなら、そこにはいったい何が問題で何が悩みになるのかを考える言葉がなかったからです。
ただ、森に目を向けると、森は美しい緑色をしていました。

世界中が、たわわに実ったお米であふれていました。

川に住む魚たち、森に住む動物たちはみんな、天使のように優しい心を持っていました。
何もかもが何もかものために存在している世界でした。
すべての自然は、調和して満ち足りていました。
そこには充分な食べ物も、自由も、しあわせも平和もありました。
すべての人間は健康で、病気はなく、心の中のすべてが自然のように美しい世界でした。
人々は今とはちがって、200年から400年も生きることができた世界でした。

昔の世界では、稲の米粒は素晴らしく大きなものができました。まるでかぼちゃのような米粒でした。

田植えと収穫も、今とは違ってとても容易でした。なぜなら、鎌たちは自ら動いて雑草を刈り取り、研ぎ石は自らナイフを研ぎました。
人々は働かなくてもいい今日の世界とはまったく異なります。
お米が黄金色の季節に入ったとき、すべての田んぼのお米たちは自分自身の大きくなった頭の重さで落ちていきます。
お米たちは、人間たちが住む村のラオ・カオという名前の米蔵に転がっていきました。

米を収穫する必要も家に運ぶ必要もなく、人々の生活はとても快適だったのです。

ある季節、お米たちはとてもよく熟していました。
田んぼの稲穂は、いつものように村へと転がり落ちていきました。

お米はたくさんの家族の家に行かなければなりません。
なぜなら村には、たくさんの家族がいたからです。
それでも、お米たちはそれぞれどこの家に行くべきかわかっているのです。
お米たちは、人間の家々の米蔵へ転がり入ることが大好きでした。
なぜなら大地は、太陽に晒され暑く、雨の日は寒かったからです。

お米たちは、まるで人間や動物たちのように心を持っていました。

しかし、ある一人の未亡人の女性には、米蔵がありませんでした。

彼女には夫も子もおらず、村の人々は誰もその女性の家を完成させる手伝いをしませんでした。
お米たちは、彼女の家を米蔵と間違えてどんどんと転がり込んでいきました。
しかし、不完全なその家で、お米たちはゴロゴロと集まるばかり。
お米たちは、彼女の未完成な家を不思議がり、決まりが悪い思いをし始めました。

その時、女性は初めて怒りに満ちた声で大声で叫びました。
彼女はいつも竹のマットを作るのに使っているナーンチャットと言われるハンマー を手に取り、お米たちへ振り下ろしました。
米粒は砕かれ、粉々になりました。

それから女性は、初めて言葉を話しました。

「これからは、稲のまま待ってなさい!
人間が来てお前たちを収穫するまで来るんじゃないよ!」

その事件の後、米粒たちは小さくなり、
人間たちの家に転がり込むことは

二度と無くなりました。


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