夜を追悼
暗闇に侵されて、自分が誰で何でここがどこかさえ分からなかったあの夜に、この夜に、さようなら。
あの頃腐るほど聴いてた曲を今聴いたら傷がぶり返していくみたいで怖かった。またあの恐怖に呑み込まれそうで怖かった。だけど安心した。あの頃の私も今の私も未来の私も、紛れもなく私だ。あの頃を思い出せる、かつての私がどんな気持ちで曲を聴いていたか思い出せる、どんな世界だったか思い出せる。だから、どんな時でも、どんな姿でも、私は私だ。過去の私を殺したやつら全員死ねばいいのに。私をぐちゃぐちゃにしたあいつ死ねばいいのに。
閑散とした風景は別れにふさわしい。だから冬なのかな。今年の4月の夜はピンク色のツツジがたくさん咲いててあんまり寂しくなかったよ。けど、本当にひとりぼっちみたいな夜に思い出すのは君の最後の言葉。世界は美しいって、ずっとずっと教えてくれていたのは君だったのかもしれない。
想うって、思い出すって、祈るって、美しいことなんだ。こんな概念みたいなものが言葉として存在するんだ。私が目を瞑って色んなことを考えるとき、それは小さく光る星になってどこまでも進んでいくんだ。
わざと幸薄めの曲を聴いちゃう私でもずっと不幸なんかじゃなかったね。だけど少し怖い。
だから追悼。痛みで痛みを殺して、私は今追悼する。少女を、夜を、あの頃の自分を。
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