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ニトリ会長から学ぶリーダシップの本質

1.ニトリは、日本を代表する家具チェーン

ニトリは家具だけでなく雑貨やカーテン、寝具なども扱っているのでホームファニシングという表現の方が適切かもしれません。
いずれにしてもニトリの業績はすさまじく、コロナ禍をものともせず2020年2月決算では、33期連続の増収増益を達成しています。

33期連続増収増益

2020年3月以降も前年同期比で好調な業績となっています。
3月:114%
4月:98%
5月:102%
6月:151%

ニトリの高い収益性は、ユニクロと同様にSPAのビジネスモデルにあると考えられますが、それにしても33期連続の増収増益は並大抵のものではありません。

創業53年で国内541店、海外66店を率いるのは、創業者の似鳥昭雄氏です。似鳥会長の強烈なリーダーシップがあってこその業績と言えるでしょう。本コラムは似鳥会長の書籍から経営者のリーダーシップについて考えてみたいと思います。
同氏の「私の履歴書」はかなりの話題作となりました。

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2.似鳥会長の人生

とにかく波瀾万丈な人生です。戦後、中国から一家で引き揚げ貧乏な少年時代、貧しさゆえの両親からの暴力をうけ、学校では酷い「いじめ」にあっていました。それでも人の道に外れることなく育っていきました。ただ高校時代はカンニングで大学時代は、バーの取り立てや・・・など似鳥氏の青年時代は、いわゆるワルイことばかりだったようです。
バルミューダの寺尾社長と同様、小説のように面白おかしく読み進めることができました。
「人生は冒険であり、アドベンチャーだ」書籍の中で述べられているように、人生の荒波を楽しみながら生き抜いている姿が印象的です。

3.ロマンとビジョン

人生を生き抜くうえで、非常に学びの多い書籍ですが、リーダーとしての資質についても考えさせられます。
似鳥会長の経営リーダーシップの本質と言えるのが、文中に度々出てくる「ロマンとビジョン」です。
ロマンとビジョンは、経営理念として、ホームページに掲載されています。

ニトリ経営理念

ロマンというと昭和の香りが漂ってきますが、似鳥会長独特の言い回しで、所謂企業の存立意義、ミッションに該当します。ただロマンというと、どことなく情熱的な印象を抱きます。人の心を動かすうえで、ミッションというよりもロマンとした方が日本人には伝わり易いのかもしれません。

そしてビジョンは現実的なゴールです。第二期30年ビジョン(2003年~2032年)は、3000店舗、売上高3兆円としています。2020年2月末決算では607店舗、売上高6422億円ですから未だ目標には程遠いですが、長期的で到達難易度の高いビジョンは社員のやる気を掻き立てるのではないでしょうか?

最近の企業は、VUCAの時代を理由として長期の目標設定を設定しない企業が、多い中で貴重な存在と言えます。(先が見えない中で長期ビジョンには意味がないという経営者が結構多い)
成長の原動力は、心を動かすロマンと長期のビジョンにあると考えます。

ではロマン「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」を掲げた経緯はどのようなものでしょうか?
書籍にもありますが、1972年に訪れたアメリカで目の当たりにした光景に驚愕し、大きな感銘を受けたようです。日本の1/3の価格、使用者目線で考えられた品質、色やスタイルで統一された品揃え、それらを提供しているチェーンストアの存在を見て、いつかそのような店を作りたい、豊かな日常に貢献できる会社でありたいと考えたようです。

4.心を動かすメッセージ

やはり人々の心を動かすメッセージを作るのには、原体験が必要不可欠ということと考えます。
経営者は社員が一丸となって高い価値を創造し、適切に伝達するために、心を動かすメッセージが必要です。
そのために経営者自身がどのような価値観をもとに日々行動しているのか、心の深いところで問いただすことが必要なのです。

●皆さんの人生を変えるような出来事、原体験は何でしょうか?
●社員に情熱を持って、語ることのできる「強い思い」は何でしょうか?

経営者の皆様には今一度、自らの心に聞いてみることをお勧めします。

さらに似鳥会長が長年ニトリをリードすることができたのは、ご自身の可能性と、特性を良くご理解しているからと考えられます。いわゆる自己認識力が高いということです。

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書籍やHPの対談記事ではリップサービスも過分にあって、必要以上に卑下されている箇所も多いのですが、
父からの教え、「おまえは頭が悪いから優秀な人材を使うしかない」また「おまえはのろまで、だらしない。成功するには人の2倍努力するか、人のやらないことをやるしかない」をしっかりと受け止め、実行に移していることは事実です。

経営者はスーパービジネスパーソンである必要はありません。
自身の長所(強み)は何で、短所(弱み)は何なのか見極めて、組織構築していくこと
ニトリの適材適所の人材戦略は、そのような考えが根底にあるのです。

5.強い胆力

加えて33期連続増収増益するには、強い胆力が必要と考えられます。
強い胆力は、挫折や失敗から学んでいることと関連があります。挫折や失敗を数多くすることが学びに繋がるということです。
その点について似鳥会長には、幼少期からの苛烈な体験に大きな影響を受けていると考えられます。
両親の暴力や同級生からの強烈な「いじめ」が強い心を形成していったと考えられます。加えて天性の明るさと、小さいことを気にしない大らかな性格がビジョン実現のための心の持ち方となっていると考えられます。
ちょっとやそっとのことで、へこたれない強い心が形成されたのです。
では似鳥会長のような苛烈な幼少期がなければ、強い心を醸成することはできないでしょうか?
私はそうは思いません。どんなに普通の人生を歩んできたという人(経営者)でも、これまでの半生で良いことも、悪いことも、辛いことが必ずあるはずです。そうした思いを掘り起こし、ご自身の生きざま、社会における価値(生きる意味)を再認識することで強い思いが生まれてくると考えます。
そのようにご自身にとってのCoreビジョン(強い希望)を明確にした後は、常にそのビジョンの進捗を確認、軌道修正する習慣をつけることで強い心を醸成できるでしょう。
1人では厳しいかもしれません。コーチやコンサルタント、できれば事業展開のことを理解し助言が得られる第三者の協力を得てCoreビジョンの実現に向け、努力することができるでしょう。

6.まとめ

1.企業を成長させるには、理念とビジョンが必要不可欠

2.そのためには経営者自身の原体験を探索し、自らの価値観を大切にする

3.ビジョン実現には、胆力(強い心)を鍛える

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