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【レビュー】『アークナイツ』はアウトゲームの設計が秀逸だった!

今回は、今年の1月に配信が開始された、『アークナイツ』を見ていきます。

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完成度がとても高く、個人的には今年を代表するゲームになるのではないかと思います。


どんなゲームか?

・ジャンル
タワーディフェンス

・リリース日
2020年1月16日

・開発会社
Yostar
中国に本社があるゲーム会社の日本法人です。
他には、アズールレーンエピックセブンも開発しています。


アークナイツは、メインゲームの面白さもそうですが、
ゲームを続けたくなるようなアウトゲームの設計がすごく秀逸だと思っています。
そのため、今回はアウトゲームにフォーカスを当てて見ていきます。


徹底的なUX設計

アークナイツはUX設計が秀逸だと思います。
アークナイツをプレイしていると、「この画面はこういう意図で作ったのかな」と、設計者の意図をものすごく感じます。


「この世界に帰ってきた」と思わせるUX設計

・統一感のある言語設定
プレイヤーはこの世界では「ドクター」であり、「オペレーター」(キャラクター)を指揮する指揮官でもあります。
そのため、ガチャの総称は「SCOUT」(つまり、ドクターがオペレーターをスカウトする)になっており、無料ガチャは「公開求人」、有料ガチャは「人材発掘」という名称になっています。

そして、ドクターは「ロドス・アイランド」という製薬会社に勤めている設定のため、ログインは「出勤」という言葉になっています。
そして、ゲームプレイは「作戦」になっており、プレイするためのスタミナは「理性」です。
製薬会社に務めているため他ゲームではよくある交換所も、「購買部」という名称。
言葉選びに対して全く抜かりがありません。


・「資料感」を大事にしたUIパーツ
上記の様な世界観設定のもと、我々プレイヤーは「ドクター」として製薬会社の「ロドス・アイランド」に勤めながら「作戦」を実行していくわけですが、だからこそUIパーツも、実際の会社で扱う様な紙資料の質感が出されています。

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ログインボーナスである「出勤」は会社の勤怠表の様な見せ方

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「基地」は設計図の様な見せ方

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「SCOUT」は機密資料の様な見せ方


・アイテムの届け方
アイテムの届け方1つ取っても徹底しています。
「運営」という神からアイテムを授かる訳ではなく、あくまで「購買部のクロージャからの『差し入れ』」

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これはプレゼントを受け取る方も嬉しくなります。


このように、1つの世界観を作り上げるために、これらの要素が徹底して磨かれているため、アークナイツのアプリを立ち上げると「あぁ、この世界に帰ってきたな」という体験(UX)が得られます。
これによってどっぷりハマってしまう訳です。


継続プレイを生み出す仕組み

次は継続プレイを生み出す仕組みについて言及します。
アークナイツのプレイヤーなら分かりますが、日課となっているシステムがあります。

・生活リズムに適用できる「公開求人」

「公開求人」は、時限式の無料ガチャです。

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ガチャを引くためには最低1時間待つ必要があり、(アイテムで即引きも可能)その待ち時間を1~9時間の幅で、自分で設定することができます

こうすることで、例えば、「寝る前に公開求人を7時間に設定して、朝起きた時に求人を開く」みたいなことが出来るわけです。
次にゲームを開くきっかけをプレイヤー自身が作り出しています

他ゲームだと「遠征」や「派遣」という名前で、
3時間、6時間、9時間と時間が設定されているゲームが多いですが、
アークナイツの場合は時間が自由に設定できるのが良いですね。

しかもこの「公開求人」の良いところは、

・レアリティの高い☆5のオペレーターが当たるかもしれないというワクワク
・万が一所持オペレーターと同じキャラクターが出てきても潜在能力強化(限突)ができるので安心
・潜在能力をMAXにしたオペレーターが出てきても、「一般資格証」(購買部で交換できる資源)に交換できるのでお得

という「ワクワク」「安心」「お得」が揃った仕組みであることです。
このため、初心者でもベテランでも、「公開求人」をやる理由があります。

さらに、「公開求人」をやれば「龍門弊」(アークナイツでの二次通貨)を消費するので、
龍門弊を貯めるために「作戦」をする・・・という具合にゲームサイクルが回っています。
このようにして継続プレイを生み出しています。


・ゲームサイクルを回す原動力、「基地」

「基地」は、龍門弊や強化・昇進素材を製造したり、「公開求人」の枠を増やしたりできるモードです。

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基地でできることは以下の通りで、ゲームを効率的にプレイするために不可欠なモードです。

・龍門弊を製造できる
・強化・昇進・建築素材を製造できる
・FP(購買部でアイテムと交換するための通貨)を獲得できる
・公開求人の枠を増やせる
・公開求人のタグリセット回数を増やせる
・スキルを強化できる

この「基地」も、しっかり継続プレイを生み出しています。
各施設で素材を製造するには、数時間レベルで時間がかかります。
そのため、前述した「公開求人」に加えて、「基地」にも次にゲームを開くきっかけをプレイヤーに与えています。
しかも「基地」の方でも、特に「製造所」で製造する素材の個数を選ぶ時に製造時間が何時間かかるかが設定されているため、「7時間後に作り終えているように3個にしとこう」といった具合に自分のペースで時間をコントロールできます。

また「基地」は、メインストーリーを遊ばせる要素にもなっています。
まず、メインストーリーのあるところまでクリアしないと「基地」のモード自体がアンロックされません。

そして「基地」は最初からすべての施設がアンロックされている訳ではなく、デフォルトでアンロックされている施設の数は全体の4分の1くらいです。
施設を増築していくには、基地内の「制御中枢」のレベルアップが必要ですが、
その素材の「竜骨」を獲得するためには、メインストーリーを進めなければなりません。

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そのため、

・メインストーリーを進める
・基地をアンロックする
・基地で素材を製造してキャラクターを獲得・強化する
・メインストーリーを進める
・基地のレベルをアップする
・基地で素材を製造してキャラクターをさらに獲得・強化する

といった具合にゲームサイクルが回り、継続プレイに繋がります。



さらにこの「基地」が優秀なのは、操作性が優れていることと、「任務」(他ゲームで言うところのミッション)と連動していることです。
基地で素材を製造したり、製造するために配置したオペレーターが披露状態になったりすると、ベルマークアイコンをタップすればそれを一目で確認できます。

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そして画面下部のアイコンをタップすれば、各施設をタップする必要なく一気に操作ができます。
基地で素材を製造したり、「信頼獲得」をしたりすれば、「任務」が完了しています。

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この一連の動作が日課になっていき、毎日継続してプレイしていくわけです。


その他良いところ

UX設計と継続プレイのためのシステムにフォーカスして触れましたが、その他に「これは良いな」と思ったところがいくつかあったので、紹介します。

・攻略を失敗した時に理性(スタミナ)を返却してくれる

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初回だと全返却で、2回目以降だと消費した理性を-1して残りを全返却してくれます。
失敗した時の損失が少ないので心理的ストレスもあまりなく、「もう1回やってみるか」と挑戦するモチベーションを維持したままプレイできます。

・「宿泊舎」のデフォルト設定が倉庫みたいなダンボールばかりの部屋になっている

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お世辞にも綺麗な部屋ではないため、「新しい家具を買って綺麗な部屋にオペレーターを配置したい」という気持ちを掻き立てる装置になっています。
ちなみに他のゲームでは殺風景な部屋でスタートすることが多いですが、それとの差別化にもなっていると思います。


・「強襲作戦」は理性の自動回復がない上に、使える理性が少な

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強襲作戦をクリアするには、オペレーターのコストを下げる必要があり、そのためには昇進が必要です。
つまり「時間と金」かかり、継続プレイと課金に繋がるシステムになっています。

・ログイン時の遷移順

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アークナイツでは、「お知らせ→ログボ→イベントログボ→ホーム画面」という遷移順になっています。
「お知らせ」という運営(=ゲームの外側)からの情報が微妙に垣間見える機能をゲームに入る前に見せているところが良いです。
他ゲームだと「ログボ→お知らせ→ホーム画面」という遷移順が多いですが、これだと、ログボで「ゲームの世界に帰ってきた」と感じたのに、
「お知らせ」で微妙に現実に戻された感覚を覚えて、またホーム画面に来て「この世界に帰って・・・」となるので、ゲームへの没入感が少し薄れるな、と個人的に感じていました。
そのため、個人的にはこのアークナイツの遷移順はゲームへの没入感を高めるためには良い遷移順だなと感じました。

・アイテムのアイコンをタップすると、説明と獲得場所への遷移ボタンがついている

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これはとにかくめちゃくちゃ便利です。
アークナイツの世界観設定上、最初はどうしてもアイテムの名前が理解しづらく、「これって何に使うアイテムだっけ・・・?」ということが度々起こります。
しかし、アイコンをタップすればその説明をしてくれるし、そのアイテムをどこで獲得できるか、そしてその獲得モードへの遷移ボタンまでついているので、めちゃくちゃ体験が良いです。
「このアイテムわからん!このゲーム難しい!」ということにならないよう、徹底的に工夫しています。
似た機能を持つ『ロマサガRS』でも、アイテムアイコンをタップすれば、そのアイテムの説明ウィンドウが出てきますが、獲得場所への遷移ボタンまではついていなかったので、この体験の差はめちゃくちゃ大きいなと個人的に感じました。

・スタイリッシュなUI
まず「人材発掘」画面です。
画面を左右にゆっくりスクロールさせるとその特徴が分かりますが、
背景、ピックアップキャラ、文字情報、ボタンがそれぞれレイヤーで分けられており、スクロール幅を微妙に変えています

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情報量の多い画面ですが、多層スクロールにすることで画面の奥行きを感じることができ、それほど息が詰まる印象がありません。軽い感じです。
これがスタイリッシュさを感じる要因になっていると思います。

次は「アイテム受け取り画面」です。

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他ゲームでは画面の3分の1くらいを覆うダイアログウィンドウになっていることが多いですが、アークナイツの場合は画面全体を覆っており、ウィンドウという印象がありません。
そして、画面下部に光源を起き、獲得したアイテムに光を当てて魅力的に見せると同時に、その光の上にチェックマークボタンを置いています。
そして画面のどこを触ってもウィンドウは閉じられます。
これほどアイテムを魅力的に見せるアイテム獲得画面は見たことがありませんでした。
これは発明的だなぁ・・・と驚愕しました。


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以上、アークナイツのアウトゲームに沿って見てみました。
メインゲームもやりごたえがあって面白いので、今年のアワードで何かしら賞を取ってくれることを願っています。

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