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「1ミリの後悔もない、はずがない」を読んで

久しぶりに小説を読みました。

そして最後の1ページまで読んだ今、溢れ出る思いをちゃんと言葉にしておきたくなりました。

この小説を読み終えて感じているのは、ヒリヒリ感、どうすることもできない現実に対するやりきれなさ、、ひと言では言い表せないですが、そんな感情を体験できました。

この小説は、主人公の女の子「由井」を軸に、様々な人の視点や時間軸で描かれている連作短編集です。その1番目の物語「西国疾走少女」は中学生の由井と同級生の桐原との忘れられない恋が描かれています。今を生きてると実感できて、それが世界のすべてで、閃光のような多幸感と、大人の力が加わればすぐに崩れてしまうような儚さや不安定さ、初恋のすべてが詰まったような魅力的な物語でした。お願いだからもう少し二人の幸せを見ていたい、そう願ってしまうほど物語に入り込んでしまいました。

そこから物語は大人になった由井や、由井の周りの人々の葛藤や苦悩を描いていきます。誰もが世の中の理不尽と戦いながら生きていて、人間のリアルさを感じました。そんなことを感じながらも、常に心のどこかで由井と桐原の眩い恋の行方を捜してしまいます。

そして最後の1ページを読んだとき、ずっと頭の片隅にあった二人のその後が形になって現れます。それを目の当たりにして、すぐには心の処理ができない、どこにやったらいいのかわからないような気持になりました。そして改めて由井や桐原や物語に登場した人々を想い、受け入れていく、、読んだ後に頭の中がこの物語のことでいっぱいになりました。

表現や情景もとても素敵です。しばらく小説から離れていましたが、改めて言葉で表現することの素晴らしさも思い出させてくれる小説でした。

ぜひこの世界を体験して頂きたいです。


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