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「感覚」という視点から考える「ファッション3Dモデリング」の必要性

今回は感覚という視点から「ファッション3Dモデリング」の必要性、重要性を共有させていただきます。

■83%が視覚情報

人間は五感で自分以外の外界から情報を取得しています。
五感とは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚です。

日科技連出版社出版の『産業教育機器システム便覧』によると、五感による知覚の割合は「視覚 83.0%・聴覚 11.0%・臭覚 3.5%・触覚 1.5%・味覚1.0%」であるとされています。つまり、われわれは圧倒的に目から入ってくる情報で「モノ」の確認をしているわけです。

■視覚情報(=写真やCG)だけで衣服販売が可能

衣服の購買の場合、われわれは情報をどのように取得しているのでしょうか?
購買決定に必要な情報として、五感の中の、「視覚(≒見た目)」と「触覚(≒着心地・触り心地)」からの情報で衣服の選択をしています。
「聴覚(≒いい音楽)」や、「味覚(≒美味しい)」、「嗅覚(≒いい匂い)」で衣服の購買を決定したということを聞いたことがありませんよね。

では、購買決定までの情報取得・活用の流れを考えてみます。
「見た目で選択」→「着心地を確認」→「購買決定」することがほとんどだと思います。

ECなどの通信販売(日本のEC化率19%)の場合は、
「画像で選択」→「購買決定」→(輸送)→「見た目・着心地を確認」→「情報や認識に誤差がある場合、返品・交換」であると思います。

逆に、「着心地で選択」→「見た目を確認」→「購買決定」
のように「視覚(≒見た目)」の前に「触覚(≒着心地・触り心地)」がくることはないと思います。
特にEC販売などの通販の場合、「触覚(≒着心地・触り心地)」の情報を得ることは不可能で、購買決定は「視覚(≒見た目)」のみに頼らざるを得ません。
話を「3Dモデリング」に関連づけますと、「3DCGだけで衣服の販売までつなげることができる」のです。

■3Dモデリングはクリエイション(=答えのない課題へのアプローチ)

視覚は、光のエネルギーが網膜上の感覚細胞に対する刺激となって生じる感覚です。

我々が視覚から情報を得ている世界は3次元(空間)ですが、目の水晶体を経た光を受け止めるセンサーである網膜は2次元です。つまり、脳の中では2次元情報から3次元(空間・立体)を推定していることになります。頭の中で、奥行きのない情報から奥行きを推定していることになります。
そのため人間の視覚は時折、「錯視(さくし)」と言われる錯覚(さっかく)(=間違い)を起こします。

これは、3Dモデルと3D空間を組み合わせる表現や、3Dモデルと背景の2次元の画像をどのように組みあわせ表現すれば「美しい」「かっこいい」「エレガント」・・などの表現につながるか、の正解がないことと言えます。なぜならば、2次元画像をどのように3Dに置き換えているのかの法則がない(=感覚)からです。つまり、3Dモデリングの表現力は「センス」と言い換えることができ、3Dモデリストは「答えのない命題」に向き合う者、すなわちクリエイターなのです。

■RGBの色情報を駆使するクリエイター

赤いリンゴ、黄色いバナナ…など、物の「色」は反射された光です。太陽の光を物に当てると、光が当たった物の表面は特定の光を吸収し、その他の光を反射します。そして、この反射された光の情報を網膜というセンサーで電気信号に変えて脳に伝え「色」を認識することで「視覚」という感覚になります。

絵画や写真、写真のレタッチ、3DCGなどは全て色の情報です。色の変化で形を認識させたり、奥行きや動きを感じさせたり、場所や時間、素材感までを感じさせます。
 
幅広い色を表現する方法として、RGBカラーモデルがあります。赤 (Red)、緑 (Green)、青 (Blue)の3つの原色を混ぜて幅広い色を再現する加法混色の一種でRGBは光の三原色の頭文字です。
歴史的にはブラウン管(CRT)から始まり、現代では液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)の色の表現方法のひとつとして、またスマートフォンやパソコンなどの内部の画像再現に使われています。
 
3Dモデリストは、CLOやVstitcher、STYLE3Dなどのファッション3Dモデリングソフトやその他のソフトを駆使して衣服のデジタル情報を作成し、RGB情報に置き換えて視覚的にファッション情報を創造する最先端のクリエイターです。
 
前述のように、3Dモデリストが作成する実際の商品との差異のない精緻な3DCGはサンプルの代わりにデザイン決定に使われるだけでなく、販売やPRにも活用できます。
フィジカルのサンプルを制作する前に、デザイン検討やシルエットチェックができるだけでなく、SNSにアップして事前プロモーションをおこなったり、3DCGを活用した先行受注などが可能になれば、供給量の半数以上が売れ残る環境負荷の大きな悪名高い産業からの脱却が可能になるのです。
 
ファッション3Dモデリストとして活躍中のクリエイター、また、3Dモデリストを目指して日々奮闘中のみなさまがファッションの素晴らしい未来を引き寄せてくれていることに繋がるのです。

文責:市川 雄司

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