東野圭吾の小説、全100作品からオススメの20冊を選ぶ
非常にむずかしい。
東野圭吾の作品をお薦めする、という行為は非常にむずかしい。
まずもって作品の数が多い。テーマもバラバラ。王将とみよしのの餃子を比べることは出来るにせよ、王将の餃子と信州庵の味定天丼は同じ土俵には乗らないだろう。
もう一つ、危惧していることがある。「東野圭吾」と書くことは失礼に当たらないのか。「東野圭吾さんの作品って面白いよね」とは言わないから、やっぱり「さん」はつけない。我々が口にする「東野圭吾」は、もはや個人名とは別のブランド的な扱いなのかもしれない。
不安を書き出したところで、本題に入りたい。
はじめに
「この記事の想定読者」
「この記事でわかること」
を書いておこう。
※ここまで、イトーダーキさんの「ビートルズの全13アルバム完全網羅。」の書き出しをほぼ丸パクリさせていただいた。深くお詫び申し上げたい🙇♂️💦
さて、東野圭吾の「主要作品」の選び方だが、わたしの独断と偏見で選抜試験を実施。
一次選考の選考基準は以下
・ストーリーと結末を覚えているか
・面白かったか
・思い入れがあるか
二次選考では20作品以下に絞る。一次選考はこちらのまとめサイトを見ながら好きな作品をサクサク選んだだけなので楽だった。本題はここから。
二次選考の選考基準
・1時間以上語れるほど思い入れがあるか
・余命1週間の人にオススメできるか
・涙を流すほど感動したか / 膝を打つほど感激したか
・2回以上、読んだか
おぉ。たまたま一発で20作品になった!
一部「シリーズでまとめる」というせこい手法も駆使しているが、詳細は各パートで紹介したい。
それでは、行ってみよう!
1. 仮面山荘殺人事件
オススメ度 :★★★★☆
読みやすさ :★★★★★
どんでん返し:★★★★★+++
わたしが東野圭吾作品を漁るきっかけになった一冊。
ミステリーが中心だった初期作品の中で一番読みやすく、ミステリーだけどポップさも含んだ作品。2人の強盗と監禁された8人の思惑が交錯する物語の結末は、驚きの大どんでん返し。騙される快感を味わえる名作。
2. 変身
オススメ度 :★★★★☆
読みやすさ :★★★★☆
不気味切ない:★★★★★+++
脳移植を受けた男の苦悩と、変わりゆく姿を描いた作品。
初期の作品は純ミステリーが中心だったが、徐々に医学や科学といったサイエンスをテーマにした作品が増えていく。その先駆けとなったのがこの「変身」。切なく、怖い。正直、読後感はよくない。でも何回も読んじゃう。そういう小説。
3. 分身
オススメ度 :★★★★★+
読みやすさ :★★★★★++
引き込まれ度:★★★★★+++
鞠子と双葉。2人の視点が入れ替わりながら描かれる物語は、あまりに美しく一気読み必須。
分身はわたしに「長編小説」の面白さを教えてくれた一冊。こんなに長い小説を読んだことがなかったのに、ブックオフで買ったその日に読み始め、寝るのを忘れて読み終えた。残ったのは爽快な読後感と多大な睡眠負債。
4. 秘密
オススメ度:★★★★★++
読みやすさ:★★★★★+++
泣ける :★★★★★+++
奇妙で不思議な家族の物語。ラストシーンの切なさは、全作品中No.1。
甲乙つけがたい東野作品ですが、わたしの中で5本の指に入る超名作。設定がファンタジーなのに、世界観に深く引き込む叙述クオリティはもはや異次元。ラストシーンは涙なしでは読めません。大好き。
5. 白夜行(幻夜)
オススメ度:★★★★★+
読みやすさ:★★☆☆☆
読みごたえ:★★★★★+++
東野圭吾、不朽の超大作。ドラマもオススメ。
2つ前に紹介した「分身」の比じゃないくらい長い。だけどずっと読めちゃう。先が気になって、寝れなくなる。オススメしたいけど、できない。そんな問題作(笑)
姉妹作品の「幻夜」もオススメ。白夜行よりも一つ一つの出来事のインパクトが大きく、読みやすい。
6. 容疑者Xの献身
オススメ度 :★★★★★++
読みやすさ :★★★★★++
切なすぎる愛:★★★★★+++
不器用な男の切なすぎる愛。ぜひ、映画も観てほしい!
大学生の頃、少ないバイト代で新書を買い、映画館でむせび泣いた思い出の作品。正しさとは?美しさとは?そんな正解のない問いを正面から受け止めることができず、涙になって溢れた。映画では冴えない中年男・石神を堤真一さんが好演。感涙のラストシーンは、日本映画史上に残る名場面。
※先に小説を読むことを推奨します。細かい描写が後半に効いてくる作品なので、深く味わうには小説→映画の順序が吉。
7. 片想い
オススメ度 :★★★★★
読みやすさ :★★★☆☆
考えさせられ:★★★★★+++
もっと評価されてほしい「ジェンダー問題」を扱った作品。
ジェンダー、性差、不平等な男女社会。「性別」に関わる難しい問題を、深いところまで掘り下げた良書。アメフト部だった主人公と旧友たちの間で繰り広げられる、熱く儚い友情も見どころ。ただテーマが難しく、読みやすくはない。だから、何度も読んじゃう(笑)
そんでもって、この作品を「2001年」に発行しているから東野圭吾はえげつない。
8. 手紙
オススメ度 :★★★★★+++
読みやすさ :★★★★★+++
読むべき一冊:★★★★★+++
わたしはこの本のことを「人生のバイブル」と呼んでいる。面白いとか、いい話とか、そういう次元ではない。全人類が読んで考えるべき「幸せ」への道標。
この本を「救いがない」と評する人もいるけれど、わたしはどんな状況になったとしても「この本のおかげで前を向いて生きていける」と思っている。そして、この本で描かれる「厳しすぎる現実」からは、誰も逃れることはできないだろう。
9. さまよう刃
オススメ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★☆
救いのなさ:★★★★★+++
重く悲しい、救いようのない話。
高校生の一人娘が、花火大会に行ったきり帰ってこない。翌日、強姦された末に遺体となった娘と対面する。もし自分にそんな状況が訪れたら、同じように復讐すると思う。是非など知ったことではない。この本を読んで、わたしはそう思った。そう思ってしまった。あなたは、何を思う?
10. 流星の絆
オススメ度:★★★★★+
読みやすさ:★★★★★++
心温まる話:★★★★★+++
「兄弟っていいな。家族っていいな。」読み終えたら、きっとそう思う。
手紙、さまよう刃、と超重量級作品のあとに流星の絆がきてくれてよかった(笑) 温かい作品って、やっぱりいいよね。ドラマも最高。長男のニノ、次男の錦戸くん、末っ子の戸田恵梨香。みんな最高。極め付けは中島美嘉が歌う主題歌「ORION」。最高 of 最高。
※この作品は「ドラマ先」を推奨。もしくはドラマを見た後に読み返してほしい。ORIONが抜群のタイミングで脳内再生されるはず。
11. 聖女の救済
オススメ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★☆
伏線回収 :★★★★★+++
あらゆる伏線の回収が美しすぎる傑作ミステリー。
正直、主人公の女性(妻)には共感できなかったし推理小説として面白いな、くらいの感覚で読んでいた。しかし、ラストシーンで描かれる驚愕の真実と、伏線回収の美しさに感動。ガリレオシリーズを読んでいなくても、初見で十分楽しめる作品だ。
12. プラチナデータ
オススメ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★★++
ドキドキ感:★★★★★+++
読みやすくて面白い、ドキドキハラハラ系の一冊。
テーマが特徴的なので好みが分かれそうな気もするが、警察から逃げながら真相に辿り着く疾走感はたまらなく気持ちがいい。ライトな読書を楽しみたいときにオススメの一冊。
13. 白銀ジャック(疾風ロンド、雪煙チェイス、恋のゴンドラ)
オススメ度:★★★★★+
読みやすさ:★★★★★+++
ハラハラ感:★★★★★+++
東野圭吾と言えばゲレンデシリーズ!
ご本人がスキーが大変お好きなようで、雪山を舞台に描かれる細やかな描写は、雪山育ちのわたしのアドレナリンやらノスタルジーやらを刺激しまくってくる。
ゲレンデシリーズは続き物になっているので「白銀」→「疾風」→「雪煙」の順に読むのが吉。恋のゴンドラは番外編的な扱いでOK。どの作品もポップでファニーなので重たいのが苦手な人には特にオススメ。
14. 新参者
オススメ度 :★★★★★+
読みやすさ :★★★★★+
人間の奥深さ:★★★★★+++
人っていろんな面を持ってるんだなぁ、と考えさせられる作品。
ここから「加賀恭一郎シリーズ」が続きます。まずは「新参者」ですが、ある事件の真相を追う中で、日本橋の人々の人情味に触れていく刑事・加賀。一つ一つの章がそれだけで物語として成立しているから、感覚としては短編集なんだけど、最終的に一つの結末に繋がっていくという素敵な物語。
15. 麒麟の翼
オススメ度:★★★★★+
読みやすさ:★★★★★+
父の愛 :★★★★★+++
死んでいく者のメッセージを受け取るのは、生きている者の義務だ。
父親とは、なんでこんなに理解されにくい存在なんだろう。もちろん父親側にほとんどの原因があるのだけれど。わたしが父になれたときには子どもとまっすぐに向き合おう。愛を言葉にして伝えよう。そして、我が父にもう少し寄り添ってみよう。そう思った。
16. 祈りの幕が下りる時
オススメ度:★★★★★++
読みやすさ:★★★★★+
父娘の愛 :★★★★★+++
親が子を、子が親を思う気持ちに、正解なんてない。
残酷で、どこまで読み進めても悲しさしか生まれない。読みはじめて早々、物語の冷たさに触れる。その冷たさが温まることはないだろうと気づきながらも、最後まで読みたくなる。彼女たちの結末を知りたい。そして最後まで読んで理解する。人の温かさや幸せを、他人が判断することなど出来ないのだと。
※小説、映画、どちらも名作です。どちらが先でも、楽しめると思います。
17. 虚ろな十字架
オススメ度:★★★★★++
読みやすさ:★★★★★++
問題提起 :★★★★★+++
死刑制度を題材にした社会派作品。
個人的にとても好きな作品。登場人物がそこそこ多く人間関係も複雑なはずなのに、物語としても問題提起としてもインパクトが強いので、ストーリーがしっかりと記憶に残っている。死刑制度をテーマに物事の正否を考える題材として、教科書に載せてもらいたいくらいの名作。
18. ラプラスの魔女(魔力の胎動)
オススメ度:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★☆
広瀬すず :★★★★★+++
好みがハッキリ分かれる、現実離れしたサイエンスフィクション。
わたしは好きだ。冒頭で地元の北海道が出てきたり、円華の超人的な能力に感嘆したり、ツンデレの円華がひたすらに可愛かったり。男はああいうタイプ好きだよね。わかるわかるーーって女子に言われてしまいそうな作品。映画で主人公・円華を演じるのは広瀬すず。最高♡
19. 人魚の眠る家
オススメ度:★★★★★++
読みやすさ:★★★★★++
感情移入 :★★★★★+++
脳死をテーマにした社会派作品。
「脳死」「植物状態」というテーマはありきたりではある。しかし、その状態になった娘と向き合う親の決意と覚悟に、心が震える。細かいことは書かないので、ぜひ読んでみてほしい。きっと感情がグルングルンに揺さぶられるだろう。
20. 白鳥とコウモリ
オススメ度:★★★★★+++
読みやすさ:★★★★★+++
読後感 :★★★★★+++
近代東野圭吾史上、最高傑作。
これまで19の作品を紹介してきた。長編ミステリーの代表作と言える「白夜行」、広末涼子が主演で映画化もされた「秘密」、熱狂的なファンに愛され続けている「手紙」。他にも「ガリレオシリーズ」や「加賀恭一郎シリーズ」など、東野圭吾はこの30年余りの間に数々の名作を生み出してきた。
描かれてきたテーマは数多く、物語の根底には人類が向き合い続けてきた「答えのない問い」が埋まっている。罪と罰、償うことと許すこと、生と死、希望と絶望、虚構と真実・・・
それらを一つの物語に無理なく盛り込み、人の奥深さと慈愛を感じさせてくれる作品が「白鳥とコウモリ」だ。ぜひ読んでみてほしい。読み終えた後の気持ちよさ、微かに残る希望に、学びと感動がある。
おわりに
以上、20作品でしたー!めっちゃ疲れたー!6時間半、ノーストップで書いたー!すごーい!
よっしゃ。サウナ行こ♡