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【知らない人向け?】「東方Project」とは?

こんばんは、飛び亀です。

「ゆっくり茶番劇」問題なんかで界隈がちょっとした炎上騒ぎの中、今更ながら「東方Project」とは一体なんなのか、今だからこそ書けることを記しておきたいなぁと思いました。

良くも悪くもせっかく関心をもってもらえたなら。
ということで今回は「本当に東方を知らない人向け」にまとめてみます。

もちろん何番煎じなのかって話で、「東方とは?」という解説なんて古今東西の東方ファン・オタクたちが作っています。

全部見るといいよ!
見やすい動画もいっぱいある!


○キャラと世界観――人間、妖怪、妖精、そして神様や偉人まで!

・妖怪や神様がみんな「少女」として出てくるぞ!

東方の一番のポイントは、やっぱりキャラクターでしょう。
その数、実に120以上。ほとんどみんな女の子です。
例えば……

幽谷 響子
(イラスト:kaoru 様)

いうほど人気のないこの子、響子ちゃんというのですが、かわいい耳がついていますね。犬か何かでしょうか。


いいえ。
実は響子ちゃん、「ヤマビコ」という妖怪なのです。
山に叫んだらエコーして返ってくるあれ、古来の日本では妖怪として扱われることもあったのです。

このように東方では、多くのキャラが妖怪や神様などをモチーフにしております。

作品の舞台は「幻想郷」という日本のとある山奥に存在する世界なので、特に日本の妖怪や神様、果ては偉人などを元ネタにしたキャラクターがたくさんいます。

例えば。
河童、天狗、釣瓶落とし、土蜘蛛、鬼、唐傘お化け、ろくろ首、付喪神、九尾の狐、亡霊、貧乏神、建御名方、一寸法師、月のうさぎ、かぐや姫、聖徳太子(!?)etc……

驚天動地の唐傘お化け 多々良 小傘
(イラスト:kaoru 様)
鴉天狗のジャーナリスト 射命丸 文
(イラスト:kaoru 様)

みんな女の子です。最近はそういうゲームやアニメも多いですが、90年代から続いているシリーズなので、それらの先駆けに近いところがあります。

そうそう、記事のトップ絵は昔の僕が雑に描いた「釣瓶落とし」キスメちゃんです。


・和洋折衷だ!

和風なだけではありません。西洋や中国などが出典のキャラクターもまた、たくさんいます。日本が舞台ながら、和洋折衷な世界観が魅力です。

妖精、魔女、吸血鬼、ポルターガイスト、ヘカテー、ハクタク、キョンシー、饕餮……

氷の妖精 チルノ
(イラスト:kaoru 様)
悪魔の妹(吸血鬼) フランドール・スカーレット
(イラスト:kaoru 様)

まさに古今東西さまざまなところから引っ張られてきたキャラクターたち、もちろんみんな女の子です。特にいっぱいいる妖精キャラが僕はすきです。


・とにかくデザインが秀逸だ!

ここまでご覧の通り、どのキャラもデザインがとにかく良いです。

原作者のイラストは独特でZUN絵と呼ばれ、ややもすれば「ヘタウマ」扱いされることも多いです。(この記事で使用しているイラストは、原作のものではなく二次創作です)

しかし、独特な服装や見た目の虜になる人が後を絶ちません。先の多々良小傘なんかは元ネタ妖怪「唐傘お化け」にちなんで、オッドアイで一つ目を表現しているのがおわかりでしょうか。

フランちゃん(フランドール・スカーレット)も、ひと目見て「吸血鬼だ!」と思う人はいないでしょう。あまりに突拍子もないデザインですが、姉の吸血鬼であるレミリア・スカーレットと合わせて見ると、双方の良さが分かると思います。

永遠に紅い幼き月 レミリア・スカーレット
(イラスト:kaoru 様)

ちなみにフランのデザインについて、作者であるZUNは後に次のようなことを語っています。

このひねくれ具合が実に東方っぽく、そして鵺的な妖怪が蔓延る幻想郷に戻ってきた気がして、後の東方の世界観に繋がっているのかなーと思っています。

「大・東方Project展」(2022)

また、個人的なイチオシデザインは「天人」である比那名居天子。天人らしく宇宙と空を表すような爽やかで彩りのあるデザインは秀逸も秀逸です。

非想非非想天の娘 比那名居 天子
(イラスト:kaoru 様)

帽子は黒で宇宙、髪は青空、白を基調とした服は雲を表しているのでは、などの解釈があります。
このイラストでは見えづらいですが、スカートにはオーロラを表す虹色の飾りや空模様があしらわれています。ブーツは黒系です。

そしてなんと、全キャラをパッと見られるイラスト(非公式)があります。こちら、粗茶さん@socha1980による全キャラSDです。

並べてみると、ほんと飽きないデザインだなぁ。


・いろいろ交えてアレンジしたキャラクターの設定

1つ書いておきたいのは、各キャラの設定もかなり練り込まれているということ。ただただ節操もなく色んなネタを女の子化しているわけではないのです。(いや節操はないですが)

僕がまだニコニコ動画でしか東方という存在を知らなかった頃ですが、亡霊「西行寺幽々子」の設定を読み、とても感銘を受けたのを覚えています。

亡霊の姫君 西行寺 幽々子
(イラスト:kaoru 様)

 1000年近く前、あるところに美しい桜がありました。有名な歌人が、その桜の下で歌を詠んで自ら命を絶ちました。その後も多くの人がその美しさに魅入られ、いつしか桜は人を死に誘う妖怪桜と化していました。一方、かの歌人の娘であった幽々子にも、同様に人を死に誘う力が身についていました。それを疎み嘆いた彼女も、妖怪桜の下で自害してしまいます。しかし、彼女の亡骸を礎に妖怪桜は封印を施され、以降その桜が花開くことはなくなりました。
 死後、幽々子は輪廻転生から外され、亡霊として記憶を失い、冥界の管理者の役を受け持つことになりました。生前の辛い記憶から解き放たれ、悠々と過ごしていた幽々子でしたが、いつしか妖怪桜も冥界にやってきていました。春になっても花をつけないその桜について調べた幽々子は、何者かが根本に眠り、樹を封印していることを知ります。その何者か、まさに幽々子自身の亡骸なのですが、記憶を失った彼女はそうとも知らず呑気に花を咲かせようとします。妖怪桜の封印が解かれれば幽々子の亡骸は解き放たれ、亡霊としての幽々子は消滅してしまうのですが……

「東方妖々夢おまけtxt」(飛び亀による意訳)

東方の世界観が好きな人は、新作・新キャラが出るたびに設定txtを読むのを楽しみにしているのです。

また、多くのキャラは元ネタとなる人物、妖怪や神様などを拾いつつ、関連する他のネタをうまく混ぜ合わせたものになっています。

先の幽々子なんかは、西行法師が大元のネタになっていると言われています(細かく言うと西行法師の娘です)。そこに「冥界」という死後の世界の設定を組み合わせて、キャラクターと世界観をセットで生み出しています。

また小傘も「唐傘お化け」という元ネタのみならず、関連のある「一本だたら」という妖怪から「鍛冶が得意」という設定を引っ張ってきたり、「付喪神」という存在について広げてみたりしています。

先述した「かぐや姫」「聖徳太子」のキャラクター化にしても、きっちり登場理由と設定を組んでいるので、ただただ著名なネタを使っているのとは違うのです。(なにせ双方ともゲームのラスボスになっています)

聖徳道士 豊聡耳 神子
(イラスト:kaoru 様)

こちらが「ホンモノの聖徳太子」として登場したキャラです。
彼女は表向き「仏教を広めた」ことになっていますが、それは世を統べるのに都合が良かったから。個人としては道教を重んじ、その術の一つである「尸解仙」(仮死状態になって後の世に蘇る)として復活したという設定です。

逆に、意図的に大雑把な設定にされているキャラクターもいます。「1面ボス 闇の妖怪 ルーミア」とか。これは強そうに見える設定のキャラを雑に置いたら面白いと思ったとか。後述しますが、そういう大雑把なキャラは大雑把なキャラで、二次創作するファンにはいじりやすいんですね。

宵闇の妖怪 ルーミア
(イラスト:kaoru 様)


・少女たちがスポーツ的に戦って活躍する

さて、女の子ばっかり出てくるというのは男性向けジャンルの気がありますし、もちろん実際にそうだと思います。しかし、どうも女性人気が少なからずあるらしい。

有効回答数:11,483件
男性 | 9,289 | 80.89%
女性 | 2,194 | 19.11%

第17回東方Project人気投票 アンケート結果(2021)

これ非公式の人気投票なんですが、それに参加するような層でも20%近くが女性ファンなのですね。

なぜなのか。
僕は男なので、あくまで想像ですが……

  • 女の子が主役

  • いわゆる性的アイコン(胸とかパンツとか)があまり強調されない ※あくまで原作では、ですが

  • 戦いの表現があんまり血生臭くなく、スポーツ的 ※世界観はそこそこ血生臭いのですが……後述します

こういった理由でしょうか?
(何か女性の方で知っていることあれば教えてください)

要素要素は、ちょっと女の子向けの魔法少女ものに近いところがあるのかなと思ったり。……いや、ぜんぜん違うとは思いますが。


・何でも受け入れる「幻想郷」の世界観

先述したとおり、東方Projectの舞台は「幻想郷」という異界です。

……ここでは「異界」と表現しましたが、幻想郷は「日本のどこかの山奥にあり、我々の住む世界と地続きに存在している」という設定です。しかし、ある特殊な結界によって囲われ、こちらの世界とは分断されています。ちなみに幻想郷では、我々の世界のことを「外の世界」と呼んでいます。

幻想郷マップを作ってみた(柊アザト 様)

この地続きという設定、僕はとっても好きです。
ジャンプなどの冒険漫画によくある「完全ファンタジー世界」もいいですが、「現代と繋がっているファンタジー」も夢があっていいです。(かつてはサンデーの漫画によくありました)

さて、この幻想郷を囲んでいる特殊な結界(実は2つ)によって、幻想郷はとんでもないルール(2つ)で成り立っています。1つは「外の世界で忘れ去られた(幻想になった)ものが、幻想郷に呼び寄せられる」というもの。もう1つは「外の世界の非常識を、幻想郷の常識にする」というもの。

つまり、東方の世界観には現実ではありえないことが取り込み放題なのです。妖怪や神様がわさわさいるのも聖徳太子がいるのもみんな空飛んでるのもみんな女の子の姿なのも何もかもアリなのです。

本来は古いもの(妖怪)が集まるための設定ですが、これは逆に新しいものも拒まないということ。この部分は、後述する二次創作のしやすさにも繋がっています。


○今も昔も盛り上がる二次創作――「ゆっくり」から商業ゲームまで

・二次創作が異常に盛り上がる東方

「東方」は何より「二次創作」が盛んであることが特徴で、二次創作によって一大ジャンルを築き上げてきたという歴史があります。「現在の東方ファンのほとんどは、最初に触れたのが『公式』ではなく『二次創作』だったろう」とよく言われています。僕もそうでした。

↑罪深き東方入り口動画の1つ↑

もちろん、「最初にファンアートを見て、このゲーム・アニメを知りました」なんてのはありふれた現象です。ところが東方の場合、「最初にファンアートを見て、手書き動画を見て、アレンジ曲を聴いて、同人漫画を読んで、すっかり東方ファンです」という人が本当に多いのです。

公式(原作ゲーム)にノータッチのままでも「ファン」でいられる。ファンでなくても、今話題の「ゆっくり」を使った動画を通して、東方のキャラは知っている。こんなことが可能で、許されていて、それで楽しめるのが東方なのです。(まあ、未だに一部の原理主義ファンが叩いてくることはありますが)

これ、良い意味で異常な界隈だと思います。


・グレーだった二次創作が「認められた」

そもそも二次創作(の発表)というのは、今も昔も法律的に、あるいはマナー的に「グレーゾーン」にあります。

世のあらゆる作品には著作権が存在するわけで、東方だってポケモンだってディズニーだって、公式(一次創作元)にキャラクターの著作権があります。ファンアート1つとっても、それを公に(ネット上に)さらすことに対しては、公式側に認否が委ねられています。今では二次創作の宣伝効果も広く知られ、滅多なことでは公式直々に禁止されることもなくなり、少なくともポケモン二次創作なんかは当たり前に見かけるようになりました。

それでも、公式で「ファンアートOK」「二次創作OK」と明言された作品は少なく、二次創作は基本的に「公式側が黙認してくれている(あるいは気付かれていない)」状態の中で行われていると考えます。

ところが東方は、公式が「二次創作OK」と明言した数少ない作品の1つなのです。もちろん例外はありますが「基本的にネット上や即売会などの商業流通以外であれば、二次創作とその公開を認める」ことが、少なくとも2004年の時点で既に告知されています。(ソース

そして現在、東方界隈の規模が大きくなり、かつては禁止していた商業ベースの展開も増えてきたなかで、東方Projectは公式に二次創作のガイドラインを発表しています。

まあつまり、東方では昔から公式(ZUN)が二次創作を認める声明を出していて、そのおかげで二次創作がより一層盛り上がっているというお話でした。


・イラスト、漫画、ゲーム、ボーカル、インスト、小説、SS、動画、ソシャゲ……あらゆる分野に及ぶ二次創作

さて、公式にも認められ、世界観的にも二次創作しやすい「東方」というジャンルは、実に様々なクリエイターたちが才能を発揮する場となっています。

キャラクターと設定が絶妙で人数も多いことから、イラスト・漫画・小説やSSなどはもう星の数ほど存在しています。二次創作ゲームも有償無償問わず数多く存在していて、また、現在も作られ続けています。

特に現在は同人ゲームが続々SwitchやPSなどでも遊べるようになっていますし、PCではSteamでも配信されているものが多く、ぶっちゃけとらのあなやメロンブックスまで行って買う必要がなくなり敷居が低くなっていますね。

(ちなみに人形演舞はやったことないんですが、その前提となるゲームをやったことがあって)

また、東方Projectの良さには「音楽」があります。原作の音楽がとても良いのです。後述するので、ぜひこの記事を最後まで読んで下さいね!

そういうわけで、各種動画サイト・音楽配信サイト・個人サイトなどで無限とも思えるほどのアレンジ曲を聴くことができます。ボーカル曲もインスト曲も作られています。

東方アレンジを主としていた音楽サークルが少しずつ有名になって商業デビューする、というのも既にたくさん現実になっています(ここがボカロほどじゃないのが残念といえば残念ですが)。とにかく非常に良いアレンジがたくさんありますが、なかなか言葉で語れるものでもないので聴いてみてくださいね。

最近は、ボーカル曲では森羅万象さんが好きです。


そして公式が少しずつ商業ベースを広げていったなかで、近年ついに商業ソシャゲ(スマホ向けゲームアプリ)への展開が進むことになりました。以下が2022年5月現在、公式(ZUN)によって公認されている東方ソシャゲです。

  1. 東方キャノンボール

    • すごろく

    • サービス終了

  2. 東方LostWord

    • RPG

  3. 東方ダンジョンダイブ

    • ローグライクアクション

  4. 東方ダンマクカグラ

    • 音ゲー

  5. 東方アルカディアレコード

    • 横スクロール型アクション

    • 開発中

  6. 「ケイブ」が開発中のゲーム

(セルラン的に)爆発的に売れた作品こそまだないですが、良くも悪くも続々増えております。

その他、おすすめ二次創作を過去記事で紹介したこともあったので、僕の過去記事集を貼っておきますね!

とにかく二次創作のジャンルが幅広く、多くの人にとって何かしら刺さるものがどこかしらにある、というのが最大のポイントだと思います。

以下、原作について書いていきますが、その前に自分に合いそうな二次創作を探してみるのもいいかもしれません。きっと見つかりますよ。


○「原作」のいいところ――ゲーム、テキスト、そして音楽、どれもこれも古臭いし新しい

・「東方原作」とは?

界隈では、一般的に以下のものを指しています。


  • Windows向けシューティングゲーム作品群

    • 同人サークル「上海アリス幻樂団」制作

    • 現在「東方紅魔郷」(2002)~「東方虹龍洞」(2021)まで18作

東方の生みの親である同人サークル「上海アリス幻樂団」による縦シューティングゲーム。ちなみに上海アリス幻樂団のサークルメンバーはなんとたった1名。それがZUNです。彼一人でゲームを作り、絵を描き、音楽を作っています。これが東方Projectのメインパートです。(もちろん制作のお手伝いさんはいますが)

本来は同人ゲームなので、コミケなどの即売会か同人ショップでしか買えませんでした。最近はAmazonでも買えたり(値段には注意)、全てではありませんがSteamで遊べたりします。

全6面+α制の本編シリーズに加え、色々特殊な要素がある外伝系シリーズがあります。なお花映塚は超特殊な対戦型シューティングですが本編です。


  • PC-98向けシューティングゲーム作品群

    • 「ZUN Soft」制作

    • 「東方靈異伝」(1996)~「東方怪綺談」(1998)まで5作

    • 「旧作」と呼ばれる

ZUNが大学時代に作ったのが「東方旧作」ことPC-98向けシューティングゲーム作品群。当初は学園祭で頒布してたものらしいです。

PC-98ってどれだけの人が知ってます?
WindowsでもMacでもなくて。

旧作はプレイ環境も非常に限られ、ZUN本人も過去作として扱っていることから、東方Project原作として主に推奨されるのは2002年以降の作品や書籍になります。


  • アクションゲーム作品群

    • 同人サークル「上海アリス幻樂団」「黄昏フロンティア」共同制作

    • 現在「東方萃夢想」(2004)~「東方剛欲異聞」(2021)まで7作

いわゆる格ゲーが主。剛欲異聞は一人プレイ専用。
東方Project公式作品ではありますが、一応外伝系に分類されます。

シューティングと同様に同人ゲームであるため、かつては同人系の購入ルートしかありませんでした。しかし、近年の作品はSteamどころかPSやSwitchでの販売もされています。公式作品が家庭用機で遊べます。すごい。

格ゲーらしく本格的にプレイする界隈のレベルは高いですが、比較的操作はかんたんめに調整されています。作品ごとに「デッキシステム」「オカルトシステム」など特殊なシステムもあり、ストイックなだけでない楽しみもあるので、初心者でもとっつきやすい作品が多いでしょう。

ちなみに公式作品として、ストーリーをZUNが書いていますが、基本的に本編であるシューティングより凝ったシナリオになっています。シューティングより主人公機が多くなるぶん、話がオムニバスになるので面白い。


  • 漫画、小説、設定資料集などの公式書籍

    • 基本的には原作:ZUNのもの

    • 現在、漫画6シリーズ、小説2作品、ほか設定資料集・資料本などなど

ZUNが最初に手を出した商業ベース、それが漫画や小説などの書籍です。

漫画は「東方三月精」シリーズから始まり、近年は1つシリーズが終わっても即座に次の新作が始まったり、並行して2作連載があったりと何かしらが続いています。原作はZUNですが、絵は作品によって異なる方が担当しています。

小説はZUNによるものですが、資料集などはひねくれていて「ある東方キャラが書いた本」という設定で出されているものがほとんどです。「あくまでキャラの目線で書かれた文面なので、真実(の設定)とは異なるかもしれません」などと注釈が付けられていたりします。ズルいですが、こうやって幅を持たせることが二次創作の自由度にも繋がっているのです。

それでも、ふとした瞬間に界隈で定番だった二次創作設定がブチ壊されることも多いのですが(カップリング破壊など)。それもまた楽しみである。

正直言って、原作書籍は話の構成や展開や雰囲気が独特なので、万人にオススメできる作品を挙げるのは難しいです。
が、きっちりストーリーもので3巻に収まっているのが「東方儚月抄 ~ Silent Sinner in Blue.」(ほぼ同じタイトルで小説版やギャグ漫画があるので注意)、そして日常系が「東方三月精」シリーズとなっております。あとの作品は新規よりはファン向けかなぁ。


さあここからは、原作のいいところを徹底的に書いていきますよ!
本当に東方を知らない人はもちろん、二次創作オンリーの方もぜひ。


・「弾幕の美しさ」重視のシューティングゲーム

本編であるシューティングゲームは、縦画面の弾幕STGと言われています。

STGはシューティングゲームの略ですが、弾幕とは何でしょうか。
こういうものです。

こんなもん避けられないだろwww

って感想が第一に出てくるものですが、まあそれは置いておいて、せっかくの動画なので画面全体を見てみてください。

ただの攻撃ではない、美しい弾幕が多いと思いませんか?
この動画の中で言うと、僕はやっぱり幽々子の弾幕が好きです。

東方原作のSTGは、弾幕の美しさを大事にしたゲームです。
なんと弾幕を画像とコメントでまとめた公式書籍も出ています。

東方では弾幕を推すために、「スペルカードルール」という世界観設定までなされています。おおよそ以下のようなものです。

人間と妖怪とでは、本気で戦ったときに力の差がありすぎる。妖怪はその声質上、幻想郷に異変を起こしたり人間を襲ったりする必要がある。しかし、それで人間に打ち勝ってしまっては妖怪も滅んでしまう。つまり、妖怪は人間を襲いつつ、人間に退治してもらわなければいけないのだ。そこで考案されたのが「スペルカード」である。自らの行う攻撃をスペルカードに記して事前にその枚数を伝えておき、それが全て破られれば負けを認めるという決闘方式である。基本的にスペルカードは相手方の勝ち筋を残すように作らなければならない。

スペルカードルールについて(飛び亀の理解)

つまるところルールを取り決めた決闘であり、原作STGではスペルカードが弾幕として表現されます。敵の繰り出す弾幕を全て避けきる、あるいは弾幕を避けて相手に撃ち込むことができれば勝ち、というわけです。ここが先述した「スポーツ的」な部分です。ゲーム上で相手を「殺す」ことはありません。(ただし爽快に爆発はする)

しかし本来は、実力的には「ほとんどの人間は妖怪に勝てない」わけであり、このルールがなければ(ないところでは)わりと死の近いシビアな世界観でもあります。書籍ではそれが描かれることもあります。


・ウィットに富んだ???キャラ会話とテキスト

これは本編STGでも、アクションゲームでも、もちろん書籍でもそうなのですが、東方原作は書き手であるZUNの独特なセリフ回しも特徴です。

特に本編STGでは、先述した通り「スポーツ的な」戦いとなるためか、逆に(?)殺伐とした会話をすることが多いです。

霊夢:
って、
あんた誰?

ルーミア:
さっき会ったじゃない
あんた、もしかして鳥目?

霊夢:
人は暗いところでは物が
良く見えないのよ

ルーミア:
あら?夜しか活動しない人も
見たことある気がするわ

霊夢:
それは取って食べたりしても
いいのよ

ルーミア:
そーなのかー

霊夢:
で、邪魔なんですけど

ルーミア:
目の前が取って食べれる人類?

霊夢:
良薬は口に苦し
って言葉知ってる?

東方紅魔郷 – 博麗霊夢 – Stage1

???:
くそ、背水の陣だ

霊夢:
あんた一人で「陣」なのか?

東方紅魔郷 – 博麗霊夢 – Stage3

個人的には、殺伐としている中に大変ウィットに富んだ表現というかジョークが混じっていて、非常に憧れます。

また、最近の作品である「鬼形獣」では、装備選択によって主人公の性格が変わるという謎設定があるのですが……

霊夢:
動物霊だらけね

でもこんなところで手こずっている
場合じゃないわ

???:
そこのお前!

瓔花:
こんなところで暴れるから
積み石がみんな崩れちゃったよ

霊夢:
積み石?
そんなの邪魔だから崩したのよ

瓔花:
酷い
子供達が頑張って積んだのに……

お前なんて石に当たって
死んじまえ!

東方鬼形獣 – 霊夢(狼) – Stage1

瓔花:
こんなところで暴れるから
積み石がみんな崩れちゃったよ

霊夢:
あら、ごめんなさい
気付かなかったわ

瓔花:
積み石コンテストが台無しだわ

それ以上暴れないようにしてやる!

瓔花:
ぐぐぐ……強い

霊夢:
ごめんなさいね
ここはただの通り道なんで

貴方には興味ないです

瓔花:
それはそれで……

なんか酷い……
酷いわー

東方鬼形獣 – 霊夢(獺) – Stage1

瓔花:
こんなところで暴れるから
積み石がみんな崩れちゃったよ

霊夢:
なんだって?

こんな河原で石を積んでいる
お前が悪いんだよ

瓔花:
こ、こいつ……!

石を積むことを馬鹿にしたなー!
許さん、死ねい!

東方鬼形獣 – 霊夢(鷲) – Stage1

結局どの性格でも外道な会話になっています。うまいですねぇ。

書籍などではもうちょっと優しい会話をすることが多いのですが、知性に溢れすぎていてというか、非常に難解なことを(漫画でも)語っていることがあるので独特です。

読んでるだけで雑学が増えます

そういうテキストが多いのが東方なので、設定資料集などもかなり読み物として読み応えがあります。ファンになったら、あるいは既にファンの人はぜひご一読を。


・音楽のためのゲーム、ゲームのための音楽

最後に、東方を東方たらしめる大きな柱である「音楽」について。

東方原作STGの楽曲は、すべてZUN単独による制作になっています。アクションゲームでは「黄昏フロンティア」側のメンバーや他のアレンジャーによる楽曲が多数を占めますが、ZUNも毎回1,2曲程度の新曲を提供しています。さらに一部の書籍には音楽CDがついています。またZUNは同人音楽CDそのものもたまーに頒布しています。

このように東方と音楽は切っても切り離せないものです。もともとZUNは「自分のゲーム音楽を聴かせるために自分でゲームを作ろう」と考えていたとか(もちろんゲーム制作を始めた理由はそれだけではないようですが)。そこまでの矜持をもって作られたのだから、東方の「ゲーム音楽」は非常に質が高いと人気があるのもうなずけます。

が、その「ゲーム音楽」の質の高さとはいったいなんなのか。
なんだと思いますか?

メロディの良さ?
構成の良さ?
編曲の良さ?

僕は、ひとえに「ゲームシーンに合った楽曲かどうか」だと思っています。

主な作品である原作STGの楽曲について考えてみます。
先述した通り、原作STGは90年代の旧作から始まり、Windows版に移行してからも20年にわたって制作が続いています。これだけの期間、ゲーム音楽を作り続けているので、当然楽曲の傾向も変わってきていると言われています。90年代の旧作は、FM音源(いわゆるピコピコサウンドの一種)が使われた楽曲になっていて、今となってはもうその音色だけで「まさにゲーム音楽!」と思ってしまいます。

一方、Win版以降は様々な楽器を使える音源となり、表現の幅自体は増えています。その中でもきっちり「ゲームシーンに合った楽曲」がかかるからこそ、「間違いなくゲーム音楽だ」と思えるのです。

こちら、Win版第1作である紅魔郷の1面です。
短いので2分くらい見てみてください。

シューティングゲームはステージ道中を進み、一番奥にボスがいるという決まりきったパターンなのですが、「道中からボス戦ではっきり楽曲が切り替わる」のがお分かりでしょうか。

言語化しづらいのですが、道中は道中っぽく、ボス曲はボス曲っぽく作られていることが何よりゲーム音楽がゲーム音楽であるための条件だと思います。東方で言えば、ボスもみんな女の子キャラなので、それぞれのキャラに合った曲が作られています。

このように、ゲーム演出キャラクター演出として楽曲が使われている。それがハッキリしているのが、何より東方音楽の良さなのです。

以下の動画はとても長いのですが、ぜひお暇な人は見てください。
「キャラクターに合った曲」だけでなく、「道中に合った曲」も東方の魅力です。

音楽に合わせて敵が出たり(敵に合わせて音楽が展開したり)、音楽に合わせて背景演出が変わるのがお分かりでしょうか。超エモいです。ゲーム音楽というのはこういうことです。演出なのです。

さて、東方原作STGの音楽は上記の動画で使われている楽曲のように、はじめのうちは非常にメロディアスな曲が多かったんですね。メロディアスって何なのかよくわかっていませんが。ゲーム演出として優れていて、しかも場面を盛り上げるため非常にメロディ情緒溢れた楽曲である。これがかつての東方音楽らしさでした。

しかし、近年……いや10年以上前からでしょうか。東方原作STGのゲーム音楽は、少しずつゲームBGM(バックグラウンドミュージック)としても完成されていったように思います。

いや偉そうな書き方ですね。
当初から東方のゲーム音楽はBGMとしても秀逸なものでした。ただボス戦などのメロディアスな楽曲が目立ち、結果としてメロディのハッキリした楽曲が単体で人気となり、アレンジも多く制作されていました。ゲーム上の使われ方、つまり「ゲーム音楽」から切り離されたところで人気になった楽曲が非常に多かったのです。もちろん、これは悪いことではありません。

しかしここ10年程度の作品の楽曲は、なんというか完全にゲームに組み込まれた楽曲が増えたような感想を抱きます。ゲームから切り離すといまいち映えない、でもゲーム音楽としてはこれ以上なくピッタリ!みたいな。

暗い中で陰鬱なボスと戦ったあと、開けた神聖な場所に出たぞ……!
っていうゲーム進行をBGMできっちり表しているなぁ、と思うシーンです。

このことと関連しているかわかりませんが、近年の作品はラストステージ曲がラスボス曲のアレンジというパターンが多いですね。曲単体を求めるファンには「1曲減った」感がありますが、演出としては大変盛り上がります。まあラストステージ曲って昔から演出重視で単体人気ある曲は少ないですけど。

ちょっとこのBGMのくだりは僕個人の感想が過ぎるのですが、とにかく何が言いたいかというと、東方の音楽は何よりゲーム音楽として成り立っていて素晴らしい!ということです。

もちろん楽曲それぞれが単体として素晴らしいので、二次創作アレンジも盛んなわけです。みなさんは原曲とアレンジ曲、どちらが好みでしょうか。


○「東方」で遊べ

以上、東方とは何かを語りました。
語り足りないところもあります。それはつまり、語り過ぎたということでしょう。結果、全然「知らない人向け」ではなくなっていきました。難しいものですね。

兎にも角にも、みなさん「東方」で遊んでほしいなぁと思います。

これは、「原作を遊べ」という意味ではありません。
無数にある二次創作作品からお気に入りを見つけて楽しむこと。
そして自らも二次創作を行うこと。
そういうのも「東方で遊ぶ」うちに入るかなぁと思います。

もちろん、原作を遊ぶこともオススメします。
ゲームとしては、ぬるくはないですが……


遊ぶのにこれだけ幅広いジャンルもありません。
語れる仲間が増えたら嬉しいです。


ちなみに好きなキャラは妖夢・天子・小傘・大妖精・チルノ・サニー・ルナ・スター・小鈴です。好きな作品は妖々夢・大戦争・神霊廟です。好きな楽曲は幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life・万年置き傘にご注意を・亡失のエモーション・偶像に世界を委ねて ~Idoratrize World・神々が恋した…………

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