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帽子をめぐる冒険

この夏、2回も帽子を買わされてしまった。

私は自他共に認める帽子がなかなか似合わない人で、身体の中でこの丸い顔が一番存在感があるせいかどうも帽子を被ると面白くなってしまう。

特に最近流行っているキャンバス生地のバケットハットなんて帽子を載せた雪だるまになってしまう。(特に黒は駄目だ)

隣にいた夫も、接客に来た店員さんも感情を押し殺した顔をする。

それでも、日差しが強い上海の夏。私はどうしても帽子が欲しくてお店で見かけるたびに被ってはみるもののいつも悲しい気持ちでそっと売り場に戻していた。

最初は夫と笑い話にしていたが、まあ、ことごとく惨敗なので彼はついに憐れみの視線を私に向け始めた。

そんな状況だったので、あの日面白くならない帽子を見つけたことは、もはや私たちにとって事件だった。

それは少しお姉さん風(語彙力)の手編みのストローハット。

『え?!え?!』

と言いながら、幸せすぎる夢の中で頬を何度もつねるみたいに10回くらい帽子を取ったり外したりする。

いやいや、似合うのは正面だけかもしれないから!と横と真後ろも写真を撮って確認する。

……悪くない!!! 

それでも、買うのを躊躇う私に夫は受験生を教える塾講師さながら私を鼓舞する。

『muniちゃん!今までの惨めな気持ちを思い出して!!
こんなに似合う帽子これまでにあった?!』

『はい!買います!!ここで買わずにいつ買うんだ!!』


こうして、私は実に5年ぶり帽子を新調した。


何かを買う時には大なり小なり、いつも何かしらドラマがある気がします。日常って面白いですね。

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