アイアンガーヨガのつよい女たち
昔インドネシア人の男性同僚に「男と女の人生ってどっちが大変だと思う?」と聞いたら
「たぶん女だろうね」
という答えが返ってきた。
理由は「いろいろ責任を押し付けられて家庭を支えないとダメだし」「社会的に弱い立場でもある」だからだそう。
今の時代、「女性」と言っても生き方や環境が様々なので一括りにはできないが、やはり弱い立場、責任を押し付けられる立場というのは言えると思う。
すぐに「女」と答えた同僚には少し感心した。
日本で同じ質問をしたら、答えは「男」と返ってくるのがほとんどなのではないかと思うがどうだろう?女だって仕事を持って働くし、しかも女性ということで妊娠、出産の身体的精神的苦労があるし、それによって仕事で差別されたりする。
お恥ずかしながら私は自分をハーミットクラブ・クラブ(ヤドカリ部)と呼ぶほど、仕事は自己完結系であればあるほど安心する(笑)変人なので一般の会社にフルタイムで働くということができず、一度も正社員として雇用されたことがない。なので職場であからさまに差別を受けたという経験があまりなく(お茶汲みなどはバイトでやっていた)、その点では「みんな大変だなあ」と何処か他人事なので申し訳ない。親戚付き合いも舅姑もいない。特に誰からも性別を押し付けられることなく育ったのである。
なのであまり自覚はなかったのだが、女性とは大変なものである。そりゃ男だって大変だと思うが、ただでさえ大変な世の中、女性だと言うだけで差別されたり押し付けられたりするのだから生きづらい。差別が特になくても、こんな私でさえ、つらつらと自分の出産、子育てを思い出すとよく生き延びてこれたなと思わないでもないくらいだ。笑
でも世の中にはつっよーい女がたくさんいる。
アイアンガーヨガ界にはつよい(というかキツイというかお節介やきというかw)先生がたくさんいる。
もうずっと受けていないけれど(怖すぎてw)、パンデミック以前にニューヨークのアイアンガーヨガ協会でたまにクラスを受けていたL先生。怖いので名前は伏せておきます(笑)。あれ、つよい女性について書こうとしたのにいつの間にか怖い女性に・・・(爆)
あの頃は私もアイアンガー・メソッドがまだ体に馴染んでいなくてたぶんそれが目立ったんだと思うが、クラス前に私がロープウォール(ロープがつけてあるアイアンガー特有の練習壁)で練習していると、何も言わずにしかめっ面でずーっと見ていたL先生。そしてその後いきなり弾丸トークで「何やってんのよ、こうこう、こうしなさい!」「あなた、お腹に力入れてるんでしょ?」となどと、ばばばーっと言ってきた。本人はお腹に力入れてるかなんてわかってないんですよって今なら思うけど、そんなこと言えないような雰囲気なので「は、はい〜、すみません」と言うと、「すみませんなんて言わなくていい!私はただ教えているだけよ!」と怒鳴る。ひえー
いつもはクラスで言われるくらいの英語は簡単にわかるのに、この先生だけは超早口でそれも言うことがいろいろややこしく頭がついていけない。比較的簡単なことも何を言ってるのか最初分からず、そうすると「私はこう言ってるのよ!」と怒るので(たぶん本人はこれが普通モードで怒っているわけではないと思うのだが)クラスが終わるのが永遠に感じられた。まあ、これは随分前のことなので今だったら何の問題もないような気もする。しかし人は怖くなると体がうまく動かなくなるので、教師としては注意しようと思う。笑
しかしながらアイアンガーメソッドとは結構厳しい面があるので、性別に関わらず探求ズンズン型、直球バッシーン型の先生が多いような気もする。特にインドで長くグルジ(BKSアイアンガー師)とギータジ(グルジの娘のギータ・アイアンガーさん)に直接習っていた先生にはバッシーン型が多い気もする。
でもその直球バッシーン攻撃が心地よく感じる自分もいる(マゾ)。
元々ボディワークやアレクサンダー・テクニック、リリース・テクニックなどを勉強していた私は、力を抜くことは入り口であって、ただそれだけでは問題が解決したり向上したりすることは難しいと感じていた。本当に優れたアイアンガーヨガ教師というのは、その実際のやり方をはっきりと段階的に示すことができる。ただ受け取る側に、やわらかな視点というか全体を見るような感覚がないとやりすぎてしまうことが多々ある。その意味ではずっと緩める、観察する、というような真逆のアプローチをしてきた人間にとってアイアンガーヨガは宝の山である。
つよい(怖い)女の先生の話に戻る。
アイアンガーヨガには表現がダイレクトな先生も多い。
多くの場合、動きを段階的にやっていくので、少しでも飛び越して違うことをやってしまったり、早く次の段階に行かないと「アキーコ!もう降りてきなさい、それはもう終わった!」などと言われる。ZOOMでも自分のタイミングでチンタラできない。
私の大好きなイリノイ州のロイスなんかは「何してるの、あなたこのポーズのセットアップ知らないの?それは私が言ってることとは違う。次回からは違うクラスを受けなさい。これはあなたのレベルじゃないから。」とズバズバ言う(私が言われたことじゃないです〜 笑)。でもロイスの素敵なところはその後で「本当に大切なのは自分のレベルにあったクラスで学ぶこと。アイアンガーヨガというのは体と心を統合するシステマティックなアプローチが確立されたメソッドだから」と大切なことを伝えて、彼女が経験したインドであった面白いエピソードを紹介してくれるようなところだ。
ロイスはものすごく勉強家でもある。
アイアンガーヨガだけでなく、病理学や栄養学、新しいボディワークのメソッドなど常に勉強している。彼女がアイアンガーヨガの先生向けに行っている「Teacher Education」というワークショップに私が参加した時、5〜6人の参加者が一つのポーズを一つのディレクション(動きの指示)だけで順番に70名くらいの参加者に教えていくということをやった。実はアイアンガーヨガの認定教師ではない私(修行中)。先生からの推薦状があればトレイニーでもこのワークショップは受けられるのだが、まだトレーニングを終了していないことを躊躇していたら、ロイスは「そんなことは気にしなくていいのでシンプルに正直にやりなさい。私たちはみんな、結局のところいつも学び続けているのだから」と言ってくれた。つい「(ヨガ)おっかさん!」と膝の上でゴロゴロしてしまいそうな大らかな(たぶん)先生である。
ロイスはシャバサナで急に囁くような優しい声になる先生のことを(他の流派ではよくある)「テレ・セックス・マシーンの声」と冗談で言う。あんなふうに呟かれたらはっきり聞こえないし、私だったら「エクスキューズミー?」って聞き返してしまうわとのこと。
精神がリラックスするのに甘い声を出す必要はない。大きい声を出す必要はないが、ただシンプルに指示を伝えて観察するだけでいい。グルジはシャバサナで「ナウ、リラーックス(さあ、リラックスしろ!)」と大きい声で言ってたこともあったそうな。ポーズとポーズの間に「リラックス、クイックリー!(素早くリラックスしろ)」と言ってたこともあるそうで。好きだわあ、その感覚(笑)。
つよいと言うのは正直であることのような気がする。
インドと欧米諸国でやっているヨガが違うと言って、いろいろ教えてくれたインドのグルナーズ先生。文化的、思想的な違いを正すと言うことは勇気がいると思う。
ニューヨークで長年教えているイギリス出身のボビィ先生(女性)。よく女性のためのクラス(女性の生殖サイクルにあったヨガ)や乳がんなどのがん患者さんのためのヨガを教えている。彼女はこう言う。
「年のいった女性は社会から邪魔者扱いにされることが多い。私は女性にそんな思いをさせたくない。」
「閉経の後、女性は自分のための女性にならなければならない。あなたを女性にしていたマザーアースはもうあなたから去ってしまったの。その時期にはいろんな行動を起こす女性がいて、いろんな変化が現れることがある。仕事を全く変えてしまったり、離婚したり、ゲイになったりね。私の場合は新しい大陸に引っ越した。」
私のメインのメンター、ジョーンにもいろんなことがあったようだ。それについてはまた書くことがあるかもしれない。
たくさんのつよい女の味方がいて心強い限りである。