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【FLSG】ニュースレター「Monthly Report」日経平均は調整局面進行中、11月底入れか

10月の日経平均は3.13%の下落、今年最大の下げで4か月連続となった。米国の金利上昇が主たる要因だが、中国の景気減速懸念も足かせになっている。3万円割れたところで底値近辺ではないだろうか。 
(11月1日 文責太田)

所得減税、支持得られず 与党「年内解散は困難」広がる-内閣支持率最低の33%(日経新聞より)

増税メガネへの市場評価とGDP世界4位に転落
 10月30日の日経新聞1面に、「内閣支持率33%、発足後最低」という記事が載っている。直近のテレビ朝日の支持率は26.9%、30%台は政権維持が岐路に立っていることを意味するそうだ。10月の日本株低迷は米長期金利の上昇が主因だが、少しは岸田減税を反映しているのだろうか。

岸田首相は「増税メガネ」という自らのあだ名が気になって仕方がないようだ。このあだ名の払拭のためかどうかわからないが、主に所得税で減税を行う案を10月24日にメディアに報道させた。25日の参議院の代表質問でも詳しい答弁を避けた。24日、25日の両日の日経平均はプラスで終わった。ただし、減税を評価したとは思えないが。

注目すべきは、自民党の参院幹事長である世耕弘成氏の代表質問だ。同氏は「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待する『リーダーとしての姿』が示せていないことに尽きる」「首相が何をしようとしているのかまったく伝わらなかった」と苦言を呈した。まるで野党の質問のようだ。

岸田氏は過去の自民党総裁選での発言や、財務省の影響が強いとみられる政権運営、防衛費の増額や、「異次元の少子化対策」の財源に対して垣間見える増税姿勢などが加わって「増税メガネ」があだ名になったものだろう。
「増税メガネの所得減税は、どうせ後から増税して取り返す“偽装減税”にすぎない。だまされないぞ」というのが国民の見方であり、支持率低迷に繋がっているのだろう。

「減税の岸田」を印象づけて「増税メガネ」のあだ名を返上し、さらに支持率を上げて、巷間言われるような解散総選挙を可能にする政治的状況を得たいのであれば、唯一、消費税率の期間を限定しない引き下げを打ち出す以外に方策はないように思われる。引き下げは「10%から5%へ」でいいだろう。

 市場、特に海外投資家から見ても、岸田減税案は評価に値しないのであろうか。年末には、防衛増税と異次元の少子化対策の財源確保に関し、先送りしてきた負担増に決着をつけなければならない。ここで減税を打ち出すのは経済政策のダッチロールと言える。

GDP規模で日本は4位に転落、ドイツに抜かれる-IMF23年予測(ブルームバーグより)

IMFの予測によると、2023年の日本の名目GDPは、ドイツに抜かれて3位から4位に転落するという。ドルベースの数字なので、円安、さらにドイツの高い物価上昇率も影響を考慮する必要があるが、世界は日本の経済力の長期低落傾向の表れとみている。

 具体的には、日本は前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)で、ドイツは8.4%増の4兆4298億ドルである。1位のアメリカは26兆9496億ドル、2位の中国は17兆7009億ドルとなっている。GDPでドイツの後塵を拝するニュースが世界を駆けまわっているのに、減税議論ばかりの岸田内閣の頼りなさ目立ってしまう。

日経平均の4年周期
長期的な日本株のチャートを見ていると重要なことがわかる。世界金融危機の底値を付けた 08 年 10 月以降、日経平均はおよそ 4 年周期で底入れしている。つまり、08年10月28日の日経平均6994.90円を底に上昇、そこから44か月後の12年6月4日の8238.96円の安値。そしてさらに48か月後の16年6月24日に14,864.01円の安値。45か月後の20年3月19日に16,358.19円を付け、これがコロナショックの底入れになっており、現在の相場はコロナショック底を起点とする 4 年サイクルの終盤にある。

23年9月15日に TOPIX は 33 年ぶり高値を更新した。同じ日に付けた 日経平均33,634 円を以て、4 年サイクルは天井を付けたとみられる。以来、 日本株は4 年サイクル底に向けた最後の調整局面が進行中と考えられる。筆者は現行 4 年サイクルが終わるのは、前の安値から48か月後の24年3月ころ、相場の格言で彼岸底に安値を付けると想定していた。彼岸底とは、一般に新春相場で盛り上げり節分ころに天井、3月決算というイベントを控えお彼岸ころに益出しなどで株価は調整するという季節的な要因でもある。

まもなく4年周期の安値に
今年の安値は現時点では大発会(1月4日)の25,661 円(この日の引け値は25,716円)は、前述したコロナショック底(20 年 3 月)から 34 ヵ月後、大発会が年初来安値になっている。そして4年サイクルの過去の例から44カ月後から48か月後に2番底を付けるとするなら、44か月後は今月。つまり安値を付けるのは11月以降とみている。

それでは底値の目途はどのくらいの水準だろうか。まず、長期波動の日経平均の200日移動平均は10月30日現在で30,335円。おそらくこの水準を一時的にでも割ってくるだろう。そして安値の目途では、1月4日の安値22,661円から6月19日の高値33,772円(ザラバ高値)の半値押しである29,717円を想定している。10月最終日の日経平均終値は30,858円と3万円を維持したが、11月には4年サイクルの安値を付ける可能性が高いと考えている。そして次の4年サイクルに向けて上昇が始まる月かもしれない。

米長期金利上昇を背景に円安で海外投資家の買いが鈍る
8月以降、株価の低迷とともに海外投資家の買いが細ってきている。なぜか?それは同時期に急速に進んだ円安にある。ドル建て日経平均は6月12日の高値236.99ドル(この日の円建て日経平均33,229円、円は1ドル140.21円)。10月30日にはドル建て日経平均は205.11ドルまで下落。この日の円建て日経平均は30,696円、1ドル149.66ドルだった。円安は海外投資家にとって歓迎されないのだ。そうであれば円安のピークを付けた後、円高に向かえば海外投資家の買いも徐々に戻ってくる。

円安、株安が続いた要因としては、10月に入って、ガザ地区での紛争勃発という地政学リスクが加わったこともあげられるが、やはり米国の長期金利(10年国債金利)が一時5%超となるなど、急上昇していることが大きな要因になっている。なぜそうなったか?10月に入ってから、FRB(連邦準備制度理事会)の多くのメンバーが、この長期金利上昇が金融引き締め的に作用するため、「長期金利上昇が利上げに代替する」との認識を相次いで示していることで、長期金利は上がりやすくなったようだ。

夏場以降の、米国の長期金利上昇にはさまざまな要因が複合的に影響しているが、大幅な「逆イールド(短期金利>長期金利)」の修正が進んだ側面が大きいと見ている。7月に政策金利が5.50%(上限)へと引き上げられる中で、10年債金利は3%台後半にあったが、このときは歴史的にも、かなりまれな「逆イールド」であると、市場関係者が認識していたのではないか。

そろそろ米長期金利上限へ
2年国債金利と10年国債金利の差で見た逆イールド(通常期間が長い債券のほうが利回りは高いが、今は2年債の利回りが高い状態)は、7月時点では1%まで広がっていた。これは1982年以降の逆イールドのときと比べて2倍以上の大きな金利差であった(10月30日現在では0.23%の逆イールドに縮小してきた)。

景気失速への懸念が和らぎ、2024年の利下げが遠のく中で、長期金利が上昇し歴史的な逆イールドが縮小、解消へと向かうのは「正常化」のプロセスとも言える。おそらく債券市場が織り込む今後1年の米景気後退確率が低下したということだろう。この長期金利の上昇が日米株価の調整を招き、同時に円が対ドルで150円近辺まで売られたことの要因でもある。

米経済動向に目を転じると、9月分の米国の雇用、小売販売などの経済指標の上振れをうけて、2023年のGDP成長率に関して見通しを引き上げてきている。ただ、市場は現在では、米経済の堅調な成長は想定よりも長引くと判断を変えてきている。ただ、米国経済はインフレの再加速をもたらすほど、高成長が持続する可能性は高くないと考えている。

例えば、「中小企業が借り入れを容易にできるかどうか」という調査では、3月の銀行破綻以降も総じて安定していた。だが、9月分の調査でやや悪化する兆候がみられているとのこと。これまでの長期金利上昇の、景気抑制的な効果が強まりつつあることを示すシグナルといえる。企業の信用状況の変化は、急速な経済失速というよりも、成長を徐々に抑制し、2024年にかけて、経済成長やインフレは、より安定して推移しつつあるのではないだろうか。そうであれば米長期金利5%はそろそろ上限とみており、同時に日米金利差で動いていた円安もそろそろ止まるのではないだろうか。円安が止まったと確認できれば必ず、海外投資家は日本株に再び関心を示してくることは間違いない。

日本株再加速と中国リスク
 様子見をしている海外投資家が再び動き始めるには何が必要か。1つは企業業績の上振れ拡大。現時点では23年度、24年度の上場企業の最高益が予想されている。2つ目は値上げと賃上げの好循環が生まれるか。連合は来春の春闘で「5%以上」の賃上げを要求するといわれている。そして来年からのNISA拡大で個人マネーの流入拡大が予想される。こうした条件が整えば、海外投資家も安値を確認した後から年明けにかけ参戦が期待でき年度内3万5000円も射程距離内だ。

 日本株の再加速への期待は根強い一方で、下落リスクも残る。最大の懸念材料は国内でなく中国にある。投資家の中国経済への不信感は強い。中国の不動産市場が最大のリスク。
不動産大手の中国恒大の清算審理はアッサリ12月4日に延期された。今までも延期に次ぐ延期で、今回が最後としているが、6月末2兆3882億元(約49兆円)の負債は減らない。清算シナリオでは回収率3%未満で話し合われている様だが、それすら怪しい。香港高裁は同業の龍光集団の審理も12月4日に延期した。

 中国不動産はGDPの3割を占めるとも言われている。このまま不動産不況に歯止めがかからなければ中国経済全体の低迷につながる。
10月27日李克強7前首相が急逝した。改革開放の最後の継承者ともいえる李氏の早すぎる死は、中国経済の改革とは反対の閉鎖性、政治的な締め付けが厳しく、イノベーションが止まれば中国経済は長い低迷期に入ったことを示唆するのではないだろうか。
10月24日、中国の常務委員会は1兆元(約20.5兆円)の国債増発を認めた。中国株の反応は非常に限定的であった。党が民間の自由な活動を抑える限り中国経済が再び活力を取り戻すことはないと、思われる。

PBRの意味を3つのポイントで解説!(耳で楽しむ日経より)

長期株価上昇には、企業は資本をどう生かすかにある
日本株はバブル崩壊から30年以上経ち、その傷跡が癒えはじめてきた。どうやらバブルの呪縛が解けるタイミングに来たようだ。海外投資家の関心には、80年代初めの米国市場に似ているとの指摘もある。当時の米国は大企業が成熟化し、日本やドイツの追い上げに苦慮していた。上場企業の半数がPBR(純資産倍率)1倍割れという状況であった。

 そして81年ころから買収ファンドが胎動、産業の再編が加速していった。ベンチャー投資への規制緩和で年金の参入、のちに有名になるハイテク企業が育っていった。株高が続き確定拠出年金を通じて家計も潤ってきた。
 今年3月、東証は上場企業に対して、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などに関するお願いについて」という異例の通達を行った。上場企業に対してPBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指せと要請したのだ。改めてPBR(株価純資産倍率)を説明すると、PBRとは「Price Book-value Ratio」の略。企業について市場が評価した値段(時価総額)が、会計上の解散価値である純資産(株主資本)の何倍であるかを表す。株価を1株当たり純資産(BPS)で割ることで算出できる。PBR1倍割れは株価が本来の企業価値を下回っているとみなせるので、割安とみることもできる。

日本も賃上げが動き、設備投資も増加、そして次に「キャッシュリッチでPBR 1倍割れの日本企業が資本をどう生かすか」を問う時代に入ってきたのだろう。
 日本企業が米国の80年代を見つめ背中を追い、人や資本をどう配置するかが見えてくれば、日本独自の推進力も伴い89年に付けたバブルのピークを越える株価4万円が来年にも期待できる。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。


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