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哲学対話「成長」の開催レポート

毎月第4土曜日の定例のオンライン哲学対話に加えて、11月からは進行役をお迎えして平日にも開催することになりました。11月16日(水)に開催した際の様子を、進行役のたからんさんがレポートしてくれました。

哲学対話の概要

哲学対話とは「普段はあらためて考えない疑問」、「すぐには答えが見つからなそうな疑問」について、みんなで語りあって思考を深めていく場です。過去のテーマはこれまで「対話」、「時間」、「夢」、「言葉」、「弱さ」、「笑い」、「つながり」、「学ぶ」、「遊び」、「信じる」、「読む」、「書く」、「聴く」、「楽しさ」、「無駄」、「不安」、「記憶」、「努力」、「考える」、「協調」、「変化」、「労働」、「プレゼント」、「味わう」、「ハマる」、「共感」、「旅」、「役に立つ」、「自尊感情」、「ほめる」、「本音と建前」、「違和感」、「配慮と遠慮」など。
34回目となる今回のテーマは「成長」で、参加者は10名でした。

※以下、当日出た意見を、個人が特定されない範囲で紹介します。個人の具体的な体験などは省略した他、進行役の解釈・編集が入っていますのでご了承ください。

◉チェックイン

音声確認の意味も含め、①ニックネーム、②今の気分、を一人ずつ話していただきました。

◉前半(フリートーク)

前半は、「成長とは?」というテーマに関して思うことを出し合いました。
今回は、下記のような観点が出されました。

・成長は漢字で「長く成る」と書くが、長く成るのは良い事なのだろうか。
「気は長く」は良いことだと思うが、他には?植物が長く成るのは、領域を広げる為に良いことだろうと思う。

・成長は、サイズが大きくなる事や背が伸びるだけでなく、長く続けて継続することなのかなと思った。どうして成長ってポジティブに使われるのだろう。成長を強いられて苦しかったと聞いたこともある。

・成長は、数字であらわせるものに使う。モヤッと精神論的なものの「成長」って定義がない。発達という言葉もある。日本語ではごっちゃになっている気がする。

・植物が高く伸びるのは、多くの光を得られ次の成長につながり、優位な生存戦略をとれるから。国の場合、例えばGNPが下がったからといって幸福度が下がるとは言えないし、数字で表すものが全てではないのでは。植物が高さだけではなく横に枝葉をのばすのと同様に、高さだけでははかれないものがあるのでは。

・子どもの成長を考えると、家庭の規定の中から出て、1人暮らしを始めて自分で選択できるようになったことを成長とみる事も出来るが、それは新たな自由を得たとも言える。自由を得る事と成長も関連があるのだろうか。

・子どもの独立で一歩踏み出したことを成長と考えたり悩んだりする親もいるが、自分の都合の良いようになってくれる事が成長と思っている場合もある。

・植物の話から、家のガジュマルの木が成長して鉢をかえなければと思った。子どもの反抗期も成長と思うが、イライラもしている。

・子どもが、母親の与えていた服をダサいと思うようになったり、親や周りの大人の価値観を疑ったり否定するのも成長か。

・子どもの成長は、小さいうちは大人が教えた事が出来る事で、ある程度大きくなると自律・改変などが成長といえるのかもしれない。自分で優先順位をつける事ができるのは自律だが、その為に健康管理が疎かになった点は成長とはいえないのでは。何もかもが成長するのではなく、取捨選択の結果の成長もある。

・数値化されたものは客観性があるので成長と言われても違和感はないが、親子関係とか他者として見た時に、合意ができていないと、片方は成長とみていても他方は「何言ってるの?」という感じ。一方的で暴力的な感じがある。数値化できないものに対しては「発達」が使われることがあるのかと思う。

・数値化できるものは他の言葉におきかえる事も出来る。拡大・向上など。逆に成長は数値化できないものが多い気がする。成長という言葉は自分は、身体的・スキル的・精神的な面に対して使っている。
スキル的なものは、出来なかったことが出来るようになること。それは発達と言えるのではないか。通常成長というときは、精神的なもの、意思や思考の成長を「成長したなぁ」という感じで使っている。なので、「数値化されたものが成長で、それ以外は一方的な暴力的な見なしなんじゃないか」という意見は違和感がある。

・成長というとき「数値化されたものが多い」が、別にそれだけではない。成長と発達の違いは何だろう?

・「発達」は、段階化できるものでは。例えば、逆上がりができるようになる時などは、プロセスを段階化できる。逆に逆上がりができなかったのが出来たるようになったことを成長というだろうか?成長という時は、「自分で考えて自分で判断する」という部分が入ってくると思う。

・試験に落ちた時、同じく落ちた仲間から「キツイよね。これを『成長痛』と呼んで次は頑張ろうね」と言われた。精神的な成長痛がスキルをのばすのに役立つ事もある。

・数値化されていても外国の経済成長など、疑わしいものもある。発達というのは、社会的に親和性があるということではないか。また、蹴上がりを頑張っても出来なかった人、あまり努力しなくてもできるようになった人を比べた場合、成績をつける時には努力してできた人の方が成長したとみなされる。

・成長は評価を表す言葉。プラスの評価。自分の中だけで終わる時はいいが相手の事に及ぶとき、その根拠が必要。数字など客観的な視点などがないと認識に違いが出てくることもあると思った。

◉問い決め

前半のフリートークのなかで出された問いかけや多くの人が言及していた論点のなかから、後半深めていく問いを決めました。

1.成長したかはだれが決めるのか? 
2.成長が起こるためには何が必要か? 
3.成長に伴う代償は何か? 
4.数値化以外の成長は他者とどのように共有するのか? 
5.何が成長かは時代によって変わるのか? 
6.精神的な成長とはどういうことか? 
7.成長は評価を表す言葉か? 
8.老いは成長か? 
9.成長の意味は? 

◉後半(対話)

投票で選ばれたのは「老いは成長か?」という問い。この問いを入り口に対話をスタートしました。

・老いはネガティブなイメージがある。老いは衰退するようなマイナスなイメージ。年を取る・老いるという事は自然なことなのに評価というとマイナスなイメージがあるのはどうしてなんだろう。

・「年を取る(重ねる)」と「老い」は同じこと?違う?

・子どもも含め年齢に関係なく年を重ねていくが、今回は老いるという意味で考えていきたい。

・スピーカーや靴など「エイジング」という形で、いい音になったり馴染んでくる。それも成長と考えると、老いには馴染んでくるという良い面もある。

・「年を取る」と「老い」は違うのかという疑問と同じく、「老い」と「エイジング」も同じだろうか?分けないと考えにくいと思う。

・エイジングと老いは分けて考えていきたい。

・例えば体脂肪が落ちてくるなど、評価軸で見られる成長もあるだろうし、経験・体験が積まれることでの成長はあるのでは。数値化できるものと経験からの両面の成長があると思う。

・若さへのあこがれや評価が商業的に利用され、老いがネガティブにとらえられている。新陳代謝がゆっくりになる事でリスクを減らせることもあるので、悪いことばかりではないと思う。

・老いと成長は全く違うと考えていた。抵抗力が落ちる分、犠牲になる成長もあるのでは。

・老いがマイナスなイメージに捉えられがちなのは出来ていた事ができなくなるから。社会の評価に依存しているのではないかと思う。例えばアスリートは引退したら現役のようには動けないだろうが、他の同年代の人からみたら高い身体能力の場合もある。
インターネットができないとお年寄りと言われたり、社会の多数派と同じ事が出来ると若いねといわれたり、全体の基準ありき。老いは単純に変化。多数派の為の社会で機能しづらくなってきている人に向けて、「老い」というレッテルを貼られるのでは。

・公民館で、スマホやネットが使えなくても当たり前で全然不便を感じていない高齢者のグループに入って活動している。俳句やパステルアートをやってみようと楽しんでいる。「足るを知る」中での成長ってあるのではと感じている。

・老いの中にある成長の要素ってなんだろう。

・経済界など、高齢者がマジョリティとなっている場合もある。外圧かも知れないがパワハラに対しての制度改革などを行い変化させようとしているのを成長と捉えられる。
一方で、取り残されている人もいて悩ましい。

・元老院・老中などにみられるように、一歩引いてみる事ができる事が老いの良さなのでは。若い頃のような欲望がなくなることも良いことだと思う。

・老いる事は不安で怖い部分もあるが、経験・体験があったからこその深みや成長も楽しみたいと思う。

・ハリーポッターの中で、不死だが自ら選んでおじいちゃんになった登場人物を思い出した。若い時とは違うような生き方、欲望がなくなるのではなくて、柔軟に対応できるようになるのが老いる事の価値では。

・老いも成長も変化。変化には良いものも悪いものもある。身体的にはできない事が増えるが人は学ぶ事ができる。80歳になってからでも新しい事を増やせる人はいる。
大きなスキルではなくても、日々の中での新しい気づき・新しい景色を見たのであればその人は成長したと言えるのではないか。
老いてから欲望に正直になる人もいる。老いと成長をイコールで結ぶと無理がある。人はどんなタイミングでも成長もあるし別の変化をする場合もある。

・年をとって忘れる事が増える。忘れる事ができるのも1つの成長か。年を取ると欲望のブレーキがきかなくなることもある。

・出来ることが増えてもそれ以上に出来ないことが増えるとか…全体量の問題なのだろうか。差し引きするのは難しい。こういう経験を積んだとか出来るようになったという事は、成長として評価して良いのでは。

・衰えるのは、肉体が先か脳が先か。脳のどの部分が衰えるかによってブレーキがきくきかないがかわってくる気がする。

◉進行役感想

問いを決める際に、前半と全然つながりがない問いが選ばれたというのがとにかく面白かったです。理想論的に「老いる事は経験を積んで成長する事」と流れるのは簡単ですが、「単純に変化」と捉えたり、「出来なくなることは増えるが新しい気づきに出会えたら成長と呼んでいいのでは?」と、ハードル低めの成長に救いを感じたりしました。

12月の開催予定

■12月15日(木)10:00~12:00 
オンライン哲学対話#36:テーマ「ユーモア」

■12月24日(土)10:00~12:00 
オンライン哲学対話#37:テーマ「沈黙」

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大前みどり
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