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哲学対話「違和感」の開催レポート

毎月第4土曜日にオンライン哲学対話を実施しています。9月は別の予定の関係で第3土曜日の9月17日(土)に開催しました。その際の様子をレポートします。

哲学対話の概要

哲学対話とは「普段はあらためて考えない疑問」、「すぐには答えが見つからなそうな疑問」について、みんなで語りあって思考を深めていく場です。過去のテーマはこれまで「対話」、「時間」、「夢」、「言葉」、「弱さ」、「笑い」、「つながり」、「学ぶ」、「遊び」、「信じる」、「読む」、「書く」、「聴く」、「楽しさ」、「無駄」、「不安」、「記憶」、「努力」、「考える」、「協調」、「変化」、「労働」、「プレゼント」、「味わう」、「ハマる」、「共感」、「旅」、「役に立つ」、「自尊感情」、「ほめる」、「本音と建前」など。
32回目となる今回のテーマは「違和感」で、参加者は11名でした。

※以下、当日出た意見を、個人が特定されない範囲で紹介します。個人の具体的な体験などは省略した他、進行役の解釈・編集が入っていますのでご了承ください。

チェックイン

音声確認の意味も含め、①ニックネーム、②今の気分、を一人ずつ話していただきました。テーマに関することを軽く話していただくことも多いのですが、今回も人数がいつもより多かったので簡単なチェックインで始めました。

前半(フリートーク)

前半は、「違和感」というテーマに関して思うことを出し合いました。以前は最初に問いを立てる時間をとっていましたが、最近はテーマについて思うことを自由に話してから問いを立て、後半にその問いについて話すというやり方で進めています。今回は、下記のような観点が出されました。

・違和感はとても大事なもの。違和感に気づかないと痛い目にあう。

・違和感は身体で感じるちょっとしたドキドキ感。いつもと違うという感じ。ふりかえってみると、気づいて行動した方がよい結果になることが多かった。また、一緒にいる人が違和感を感じていても、自分だけ気づかないときもある。

・店員さんの「~からいただきます」など、表現に違和感を感じるが、どんどん慣れていくと違和感がなくなっていく。

・おもしろさ、発見、気づくなどは違和感がきっかけになることが多い。主には視覚から入ってくる。

・違和感は、何かあるけどそれが何かはわからない、でも察知はしているというもやもやした状態。原因が特定できない状態。原因がわかると、それは違和感とは別の何かになるかもしれない。

・違和感というと否定的な感じがある。不快感、気持ち悪い、他者否定、自己否定につながっている。

・自分が当たり前と思っているここと違うことが起こったとき、胸のあたりがもやもやして違和感を感じる。例えばレストランに家族や友人と何人かで来ているのに、お互いにスマホを見ている様子とか。パチンコ屋さんの照明が煌々としているとなんでここまで電気をつけるんだろうとか。

・違和感には心地わるさとおもしろさの両方がある。例えば哲学対話で、居心地が悪いとかついていけないときに感じるのは心地わるい違和感で、岡本太郎展で「なぜここにネギが!?」というような、自分では到底思いつかないような違和感はおもしろい違和感。

・具合が悪いとき、病気のときにも違和感という表現を使う。

・こうあるべし、こうの方がいいじゃん、なんでそうしないんだろうと思う違和感以外にも、第六感的に感じてしまう違和感、原因はまったくわからないんだけど、あのときのあれはこのことだったのかと後で気づくような違和感もある。

・違和感を感じたとき、それを放っておくか取り扱うかには基準がある。そのときは直感的に判断しているのだけど、後で考えると相手方の不利益になるようなときは意見を言っている。

・違和感を感じたあと放っておくと、その違和感は消失するのか?たまっていくのか?

・考えるパワーが足りないときはスルーする。あとから思い出すことはあるけど、ずっと残っているというわけじゃない。

・違和感を感じると吐き出したくなるけど、相手との関係による。言う相手と言わない相手がいる。

・言語化できるかどうかで、違和感かどうかが決まる。言語化できない状態が違和感で、言語化できるとそれは「問題」「困りごと」など別の何かになる。

・ジュエリーの仕事をしていて、厚みや大きさが違うなあということがあるが、うまく言語化できない。お客様の「しっくりこない」という発言にも、どんな風にしっくりこないのかをとらえきれない。

問い決め

前半のフリートークのやり取りを踏まえて、後半深めていく問いをいくつか提案していただきました。

ところで、これを書いている開催1週間後に気づいたのですが、このときのZoomのチャット欄の保存を失念してしまい、どんな問いが出されたか、どんな問いが選ばれたかの記録が手元になく、かつ、問いそのものをメモっていないという状況です(汗)。

少し違っているかもしれませんが、最終的に投票で選ばれたのは「違和感を感じたとき、何によって取り扱うかどうかが決まるのか?」という問い。

ここでいったん休憩をはさみました。

後半(対話)

後半は選ばれた問いを入り口に対話をスタート。

・取り扱うって、そもそもどういうこと?

・取り扱うを別の言葉でいうと「スルーする、解決する、解釈する、保留する」などではないか。

・1)違和感を身体で感じる⇒2)身体で感じたものを自分の内でどうするか考える⇒3)目の前の状況や他者に対してどう働きかけるか(かけないか)を考える、という3段階がある。取り扱うというのはおもに2番目の段階のこと。

・2番目と3番目は分けられるものなのか?

・非日常の空間や習慣というのは、自分の日常ではないので違和感を感じる大きな要素となる。

・常識から外れたときも。

・他の人はどうかわからないが、自分の中では「体調・気分、相手との関係性、場所・場」によって取り扱うかどうかを決めている(と、後から分析すると思う)。

・哲学対話などで自分の常識が変わるのは楽しみだし、ポジティブな面があるが、小さな痛みがある。以前、あるところで「死ぬことがわかっているのになぜ子供を生むのか?」という問いかけがあり、そんなことを考えたこともなかったので小さな痛みがあった。ただ、自分のなかにそういう考えがまったくなかったので、違和感は感じなかった。

・繰り返し違和感を感じていると、最初はスルーしていても扱うことになることが多い。自分のタイミングというのがあるんじゃないか。

・固定観念や常識からくる違和感もあれば、自分自身の感覚やセンス、教養が磨かれてきて、今まで感じていなかったのに新たに感じる違和感もある。

・好奇心を持っているかどうかも、違和感をどう取り扱うかに影響しているんじゃないか。

・たしかに、自分に対する探究心があると、何で違和感を感じたんだろうと思い、2番目の「身体で感じたものを自分の内でどうするか考える」というところへの関心は高くなる。

2時間の対話を終えて

後半の対話で、「違和感を感じさせる原因やメカニズム」と「違和感を感じたあとその違和感をどうするか?」という観点が入り混じっていたため、途中で少し整理をしたのですが、ファシリテーターがどこまでハンドルを切るかというのはとても迷うところでした。

この日残ってくださった方々の感想をご紹介します。

「問いがよくわからなかった。問いを出してくれた人が何を知りたいのかをもっと聞きたかった」
「違和感は感情の話のような気がするが、今日は頭で判断している話になっていた。違和感という感情を何が起こしているのか?というところを話したかった」
「自分の中にある常識が物事をはかる定規になっていて、いつもそれを基に判断している。が、その定規ではかれない物事に出くわしたときどうするかを問われているのだと思って聞いていた。はかれないと思ってスルーするのか、新たな定規を求めるのか」
「違和感のもととなる価値観とか常識は、何が生じさせているか、そっちに関心が移っていった」

10月の開催予定

■10月9日(日)13:00~16:30
童話を使った哲学対話ワークショップ(オンライン)

短い童話を読んでからみんなで問いを出し合い、そこから哲学対話をしていきます。童話を読んで感じた素朴な疑問から哲学的な問いへと問いを変化させ、対話をしながら共同で1つの見解を出すことに取りくみます。

■10月22日(土)10:00~12:00 
オンライン哲学対話#33:テーマ「配慮と遠慮」

「配慮と遠慮」はどんなときに、どうやってするものなのか?「配慮と遠慮」はどのように違うのか?考えていきます。

■10月29日(土)、30日(日)13:00~17:30(両日とも)
ソクラティク・ダイアローグ体験ワークショップ

知的権威に頼らず自分たちで考える哲学対話ワークショップです。1つの例に基づいて、問いの答えを探究し、その答えについて合意を目指していきます。テーマは「真面目(まじめ)」。真面目とはどういうことなのか?何によって真面目かどうかが決まるのか?じっくりゆっくり時間をかけて探究していきます。

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