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哲学対話「思い込み」の開催レポート

毎月第4土曜日の定例のオンライン哲学対話に加えて、進行役をお迎えして平日にも開催しています。少しレポートをお休みしていましたが、5月23日(火)に開催した際の様子を進行役のりおさんがレポートしてくれました。

哲学対話の概要

哲学対話とは「普段はあらためて考えない疑問」、「すぐには答えが見つからなそうな疑問」について、みんなで語りあって思考を深めていく場です。48回目となる今回のテーマは「思い込み」でした。

これまでのテーマ
「対話」、「時間」、「夢」、「言葉」、「弱さ」、「笑い」、「つながり」、「学ぶ」、「遊び」、「信じる」、「読む」、「書く」、「聴く」、「楽しさ」、「無駄」、「不安」、「記憶」、「努力」、「考える」、「協調」、「変化」、「労働」、「プレゼント」、「味わう」、「ハマる」、「共感」、「旅」、「役に立つ」、「自尊感情」、「ほめる」、「本音と建前」、「違和感」、「配慮と遠慮」、「成長」、「鈍感」、「ユーモア」、「沈黙」、「選択」、「もやもや」、「差別と区別」、「感情」、「先延ばし」、「したたか」、「嘘」、「後悔」、「常識」、「距離感」

チェックイン

音声確認の意味も含め、①ニックネーム、②今の気分、を一人ずつ話していただきました。

フリートーク


まずは、参加者の皆さんに<思い込み>に関するような【体験談】や<思い込み>に関する考えを自由に発言していただいた。

● <思い込み>は「意志の力が強い」とも言い換えられて、選択肢を狭める反面、行動を起こす原動力にもなる。また、結果を見て判断した結果、使う言葉ではないか。
● 【体験談】北海道の料理であるラーメンサラダはラーメンかサラダかという議論をしたが、そもそも地元の人々はラーメンサラダが全国にあると<思い込ん>でいた。
● 【体験談】ゴミ袋に入れたので、ずっと捨ててしまったと<思い込ん>でいたものが、最近偶然見つかった。
● 「とけた」ときに<思い込み>だと判断する。信念は自分で仕込んでいるように思う。素直すぎると思い込みが増えるのではないか。【体験談】夏休みの宿題はやらなくてはならないと<思い込ん>で、終わらないと泣いてしまう子どもだった。
● <思い込み>とは、一時的で無意識的なものではないか。【体験談】認知症の人は病気のために、無意識的に何かを<思い込む>。それが間違えていると言っても聞かない。
● 頑固すぎると<思い込み>やすいと思っていた。<思い込み>に気づけるのも素直ならばこそではないか。
● 常識やルールと思い込みとの関係性を考えたい。【体験談】小学生の息子は「遅刻してはいけない」という学校のルールにもっと<思いを込めて>ほしい。
● <思い込み>に共通することは根拠がないということではないか。破ると罪悪感を持つ。特定の時間までに学校に行かなくてはならないというのは、自分の場合は<思い込み>ではなく、それを受け入れていたのだと思う。
● 【体験談】自分は、「遅刻してはならない」という思いから、苦しくて泣いたこともあった。相手に迷惑をかけているという罪悪感があったように思う。だが、海外へ行き、公共交通機関すら時間通りに運航しておらず、遅刻が当たり前になっていることを知った。そこで、遅刻をしてはいけないことに対する<思い込み>から脱し、「しなければならない」ということの幅が広がった。
● <思い込み>には意識的なものと無意識的なものがある。常識やルールを守らなければならないと思うのは社会のすりこみで、洗脳や教育を通じて行われる。教えられた当初は意識しており、根拠を疑う。のちに、その疑うという行為そのものがなくなり、無意識的なものとなる。
● 気づいたタイミングにより<思い込み>の種類があるような気がする。

問い出し

<思い込み>に関連する問いを参加者の皆さんに出してもらった。次の9つの問いが挙げられた。

  1. 思い込みと信念はどう違うのか?

  2. 何によってそれを思い込みだと判断するのか?(他者からではなく自分が)

  3. 「都合の良い解釈」は思い込みか

  4. トラウマも思い込みか。

  5. 思い込みは感染・伝播するのか?

  6. 思い込みはなぜ起きるのか 

  7. 思い込みとルールはどう関係しているのだろうか?

  8. 思い込みが形成される時の構成要素とは

  9. 思い込みに対する適度な「ゆるさ」とは? 

それぞれの問いの背景等を説明していただいたのち、参加者の皆さんとともに問いを整理し、最終的に対話する問いを「<思い込み>と信念は何が違うのか?」に絞った。

問いに対するトーク

● <思い込み>とは無意識的に行われる一方、信念はとりわけ自分が大切にしているものなど意識的なものも含まれる。
● <思い込み>は自分でコントロールしたり、努力したりできない一方、信念はコントロールでき、自分が努力できることである。
● 信念の中にも、狭い自分の経験から出てきたものと、企業の経営理念などにみられるような、他者と共有されているものがある。

ここで、ある参加者の方から他の参加者にむけて疑問が出された。
<思い込み>は、自分の外側からくるもので、プラスの側面とマイナスの側面がある一方、信念は自分の内側で、軸がしっかりしているというプラスのイメージがある。信念のマイナスの側面はあるだろうか。

この疑問に対して、次のような発言があった。
● 信念の例としては、宗教が挙げられる。宗教を信じることそのものが悪いわけではないが、宗教は戦争などネガティブなことを引き起こしうる。だから、信念も悪い影響を及ぼすというマイナスの側面がある。

ここで、今日の問いに照らしたときに、信念がプラスかマイナスかを考えることは不毛ではないかという意見が上がった。それに対して、その考えそのものが<思い込み>の例ではないかという意見があり、確かにと笑いあう場面が見られた。

和やかな雰囲気になる中で、対話は続く。
● 以前は、男が働き、女は家事をするという考えが広く受け入れられていた。

この例は、<思い込み>なのか信念なのか。

● 比喩的に表現すると、外側からさらさらと経験や知識といった砂が自分の中にたまっていき、<思い込み>となり、教育や本などによる力が加わることで、強化され石化したものが<信念>となるのではないだろうか。

この比喩が分かりやすいという方がうなずく方が多くいる一方で、

● このイメージは分かるが、感覚的には、思い込みは気づいたらあるもので、思考停止した状態であり、自覚がない。一方で、信念には自覚があり、合意し、納得しており、言葉にしているものでないだろうか。

という意見も出され、さらに、次のような異なる視点が出された。

● <思い込み>は決めつけに近い。一方で、信念は目的があり、不安や迷いを伴いながらその人の成長を促すものである。
● <思い込み>はそもそも<思い込み>として降ってわいたものではない。のちに振り返った時に、時代状況の変化に応じても<思い込み>ととらえるか信念ととらえるかは変わってくる。
● <思い込み>も信念も自分の中で、自分を支えている点では共通している。他者に押し付けようとすると、人間関係が崩れる。

残念ながら、時間のためここで対話は終了となる。

対話を終えて~<思い込み>と哲学対話~

参加者の皆さんが互いに問いかけあう姿が印象的でした。自分の意見を言い合うだけの「モノローグ」ではなく、相手の意見を聴き合う「ダイアローグ(対話)」の場に、皆さんとともにいられたことをとても嬉しく感じています。「ダイアローグ」を通して、自分の<思い込み>に気づけ、新たな考えを知ることができるのではないでしょうか。私は、ここに、哲学対話の面白さがあると思います。新たな考えを知ったとしても、それを取り入れるかどうかの選択権は自分にあります。だから、安心して哲学対話の世界に飛び込んできてくださいね。

今後の開催予定

最新の開催情報は下記Peatixページに掲載しています。

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