『顔自動販売機』 #毎週ショートショートnote【あったらいいな？編】

「洗顔自動販売機だって！」

　婚前旅行として訪れた有名な宿。温泉に向かう途中にあった自販機を前に、彩あやが楽しそうな声を上げる。

「なんだそれ」

そう言いつつ、気になった俺も自販機を眺める。

そこには小さい歯磨き粉のチューブのように

顔色が良くなる洗顔料
目元がパッチリする洗顔料
笑顔が魅力的になる洗顔料

といった見た目に効果がある売り文句の商品（併用可能らしい）もあれば

視力が良くなる洗願料
免疫力がつく洗願料
寝つきが良くなる洗願料

といった眉唾物もあった。

どれも500円だったこともあり

「お土産にしよっと！」

と彩は嬉しそうに、いくつか購入していく。
俺もついでに買ってみるか。

「ふぅ、いい湯だった」

先に一息ついていたところ

「おまたせ～」

と現れた彩の顔を見てギョッとする。

顔は異様なほど真っ白で、目元はパンダのように黒く縁取られ、口角が不自然なほど上がっていたからだ。

「変かな？」
「いや、可愛くなったね」

俺が使ったのは
嘘が上手くなる洗願料だ。

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　顔のパーツをそのまま買うのでは、ひねりが足りないかなということでこんな感じに。

イメージは昔、よく見かけた31日違うフレーバーの歯磨き粉です。（調べてみたら、いつの間にか64種類にも増えててびっくり！）

色の顔料と、洗礼を受ける願料といったところですかね。さてはて、なぜ婚前旅行でそれをチョイスしたのやら……