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短編小説 『舞うイチゴ』 #シロクマ文芸部【一粒目】


 舞うイチゴを、私は生まれて初めて見た。

そしてこの先、そんな光景を見ることは一生ないだろう。というか、そんなことが人生のうちにそう何度も起こっては、たまったもんじゃない。

主役を引き立たせるために抑えられた照明の中、一粒のイチゴが美しく煌めきながら天高く舞う。

履き慣れない下駄と、長い袖を翻しながら、持っていたスマホを投げ捨てる勢いで、その麗しきイチゴを私は口でキャッチした。

時間にして15秒もあるかないか。

何が起こったのかすら気づいていない列席者達は目を丸くし、瞬時に察したスタッフが率先して拍手をしたため、いつの間にやら私は喝采の渦に巻き込まれていた。

決して食い意地が張ったわけじゃない。

そして、目立ちたかったわけでもない。

 兄の結婚披露宴でファーストバイトのイチゴが床に落ちるなんて、そんな縁起の悪いことを起こしたくなかった。

ただそれだけのことだ。


 ちょっぴり実話です。というのも私は自他ともに認めるハプニングガールでして……(もうガールちゃうやろ! って突っ込みはとりあえず置いといて。)

 兄の結婚披露宴の日はもはやハプニングしか起こしてなかったと言っても過言ではないレベルでした。実際には、ブーケトス一投げでまさかの三束飛んできて、一束が今にも地面につきそうで「落としたら縁起悪いやんか!」と我ながらなかなかの瞬発力で見事にキャッチしました。(決してブーケが欲しかったからじゃないからね! どちらかというとその後に兄が投げたブロッコリーのブーケの方が欲しかった。花より団子!

その後もキャンドルサービスで兄夫婦が各席を巡った後、突然名前を呼ばれ、キャンドルを持って兄達の元へ向かったのですが……

運悪く私の席に置かれていたキャンドルがひ弱で今にも消えそうながらもそろりそろりと運んだものの、兄に火を移す時にはふっと消えてしまい……

「すみませーん! 兄妹の灯火消えちゃいました~!」

で、とりあえず爆笑をかっさらっときました。(我ながらなかなかのアドリブだったと思う。)

出逢いがありそうだからと参加した、兄の友人達が開催した二次会のクイズ大会でも極力大人しくしとこうと思っていたのに、指名されボケたつもりが正解してしまい、挙げ句の果てには兄夫婦がチョイスした景品をもらうという……(なんで私が回収するんだ……)

でも当日は、私にとって人生で一番幸せな日だな、と感じるほどうれしかったです。

兄には散々泣かされてきたけど、一時期、結婚するなら兄がいいな、と思っていたこともあった(兄妹が結婚できないこともわかっていた)はずなのに、その兄が結婚したことがなぜだかとてつもなくうれしかったんですよね。(まあ兄が結婚したから、これで私は自由に生きられる! ひゃっほー🤗実家のことはよろしくー👍️! って思いがなかったとは言いきれないけども……)

 ちなみに小学校からの友人もその日、二次会の会場となったお店で交際が始まって結婚しました。不思議な縁ってあるもんですね~

 みなさんの作品も読みに行きますね~♪
よかったら、二粒目もご賞味あれ!


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