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詩小説 『初夏を聴く』 #シロクマ文芸部

 初夏を聴くといえば
 カエルの鳴き声。

 明日は雨になるのかな?
 傘を忘れずに持っていこう。


 初夏を実感するといえば
 朝晩と昼間の温度差。

 朝はまだ冷えるけど、日中は暑くて
 ブラウスの袖口をまくる。


 初夏を仰ぐといえば
 目にも眩しい葉桜。

 薄ピンクに咲き誇っていた桜は
 お先に衣替えしたみたい。


 初夏を眺めるといえば
 青空に映えるうろこ雲。

 屋根より高いこいのぼりが
 空に散りばめたうろこなのかもと思うと
 ちょっぴりおもしろい。


 初夏を嗅ぐといえば
 湿気を含んだ地面の香り。

 もう雨が降り出したのかな?
 路面にポツポツと残す雨の足跡。


 初夏に想うといえば、彼のこと。

 「やっべ! 雨降ってんじゃん!」
 と昇降口で声を上げる彼に

 「よかったら、これ使っていいよ」
 とそっと差し出す黒い折り畳み傘。

 「いいの? でも君が濡れるんじゃ…」
 「大丈夫、置き傘があるから」

 一緒に入ろうと誘われるより早く
 私はそう告げる。

 「まだ時間ある? ちょっと待ってて」

 彼は私が貸した傘を手に握ったまま
 雨の中を駆け出す。

 「これ、お礼」
 と手渡されたのは白地に水玉模様が浮かぶ
 ペットボトル。

 「傘は来週、返すから!」
 そう言うと今度は私が貸した傘を広げて
 立ち去った。

 彼の姿が見えなくなってから
 ようやく私はペットボトルの蓋を開けて
 一口飲む。



 初夏の初恋といえば甘酸っぱくて
 どこか切ないカルピスの味。


 青春ですね。「初夏を探す」ために、色々と調べてみたのところ、うろこ雲は初夏から秋にかけてよく見られるようですが、季語としては秋だそうです。

 詩にしようか悩んだのですが、ちょっぴり物語性も含みたかったので勝手に“詩小説”と名付けてみましたとさ。

 みなさんの作品も読みに行きますね🏃💨

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