氷河期世代当事者などを食いものにする怪しい支援業者・団体にご注意を!

 以前から、「あなたもアイドルになれる」「プロ作家としてデビューできる」「〇〇クリエーターとして稼げる」などを謳い文句にして、夢見る若者たちを食い物にする悪質な業者・団体は珍しくなく、あちこちに出没してはトラブルを起こしてきました。

 最近では、氷河期世代問題(8050問題を含む)が解決困難になっていることを利用して、氷河期世代当事者を対象とした悪質支援業者・団体も登場するようになってます。

 バブル崩壊後の経済政策の失態により生み出された氷河期世代当事者たちは、社会的にまともな支援がほとんどなされまいまま、自己責任論で長期間放置されてきました。その結果、80歳の親が50歳の子どもを経済的に面倒を見る「8050問題」も引き起こしています。

 そして、社会的孤立や生活困窮などの生きづらさを抱える氷河期世代当事者たちを、「こんなご時世だからこそ夢を叶えてやりたい仕事をしませんか」のような謳い文句で勧誘して契約させ、まともな支援をせずに多額の金銭負担を要求したり、劣悪待遇で働かせるなどして当事者を食いものにするだけの悪質な支援団体があちこちに出現しています。

 例えば、国の若者支援事業である「サポステ」の中には、「多額の金だけ取って無償労働させる」などの「名ばかり支援」を行う悪質な団体が存在しています。

 国の支援事業を委託した団体がこのような悪質なことをやっている有様では、当事者が国などの支援に対して不信感を抱くようになるのは当然のことだろう。

怪しい支援業者・団体の特徴を挙げてみました

 ここで、怪しいと思われる支援業者・団体の特徴をピックアップしてみました。

・「確実に正社員として就職できる」「〇万円稼げる」みたいなことを謳って、仕事や生活に困っている当事者を勧誘する。この国の閉鎖的な雇用システムを考えたら、一度雇用システムのレールから脱落した者たちが、まっとうな待遇で正社員として雇われることは至難の業のはず。

・有名人や有名団体とのつながりを前面に押し出して宣伝する。悪徳商法や詐欺グループなどは、よく有名人や有名団体と親密な関係を出して相手を信用させようとしてますが、それと同じパターンと見ていいだろう。

・利用規約を見せない、成果物の権利の帰属や金銭のやり取り(利用に伴う金銭負担、何らかの作業をした場合の報酬など)についての取り決めが曖昧、活動する場所などが不明確など、重要事項について十分な説明をしない。これらについて説明を求められると、「和を乱すな」「生意気だ」みたいなことを言いながら逆ギレする。

・当事者を集団に依存・一体化させて、当事者が集団から離れたらやっていけないように仕向ける。

・具体的かつ、ある程度再現性がある手順を示さず、精神論で片づけたり、運任せで何とかなるような話をする。

・正当な根拠を示さないまま、金銭の支払いや個人情報の提出を求めてくる。

・あからさまに「団体の借金がゼロ」を前面に出している場合は、当事者を「訓練」「研修」などと称して低賃金(場合によっては無償ボランティア)で働かせることで人件費を浮かせて運営している可能性がないわけではない。

・環境が劣悪(安全・衛生基準を満たさないなど)な施設に相場からかけ離れた法外な料金を徴収して宿泊・居住させる。さらに法外な金額で日用品などを売りつける場合もあります。

・合宿などの共同生活をさせたがる、私物を没収したり持ち込みを拒否する、外出や外部との連絡を禁止する、自由行動がほとんどできないなど、合理的な必要性が無いにもかかわらず、異常なほど当事者の日常生活を縛ろうとする。このような団体は、当事者を自分たちの都合の良いように「飼い馴らす」ことを目的にしていると見ていいだろう。

・農村部での暮らしを異常なほど賛美する団体については、単に自然志向というだけでなく、「当事者に不便な暮らしをさせたい」「外部からの目を入りにくくしたい」などを目的としている可能性も考慮した方がいいかもしれない。

 上記のうち、1つでも該当したら、その支援団体は要注意。さらに複数該当するようであれば、当事者を食いものにすることが目的な怪しい団体と見てもいいだろう。

親からの依頼で当事者を無理やり連れ去る暴力的支援団体はより悪質

 当事者を丸め込んで悪質契約を結ばせる団体・業者以上に始末が悪いのが、親その他の家族からの依頼で、当事者を無理やり連れ去ってしまう暴力的支援団体です。

 このような暴力的支援団体は、「子どもが部屋にひきこもって働かない」「非正規の職にしか就けず経済的に自立できない」「子どもが親の言うことをきかない」などの悩みを持つ親と契約を結び、親から多額の報酬を受け取るとともに、当事者を本人の意思を無視して暴力的に連れ去ります。

 連れ去られた当事者は、逃げられないように私物を没収された上に、業者・団体の施設で監禁状態に置かれます。そして、スタッフからの暴力にさらされながら、「訓練」と称して当該業者・団体が経営する事業などでタダ同然の待遇で働かされることになります。

 このような暴力的支援業者・団体の特徴は、上記で出した怪しい支援業者・団体の特徴に加えて、「あなたのお子さんを必ず自立させます」「ひきこもりを矯正します」「親子・家族関係の修復」などを謳っているなど、当事者の利益を完全に無視して、親や家族の方を向いたサービスになっている特徴があります。

 氷河期世代などの当事者を経済的に自立させることが目的というよりも、親から依頼を受けて、親の手に余る子どもたちを「人目に付かないように処分」するためのサービスと言った方が実態に近いかもしれない。

 この国は、「子どもは親の所有物」みたいな価値観が根強く残っている。さらに福祉が家族任せになっていることもあって、氷河期世代当事者などの経済的に自立できない子どもの世話が家族に押し付けられてきました。加えて、親の側も世間体などから自立できない子どもを部屋に閉じ込めるなどして隠したがる。

 そして、世間体を気にする親からの「子どもを人目に付かないように処分したい」要望が、このような暴力的支援団体を生み出して、ビジネスチャンスを作っていると見てもいいかもしれない。

 当事者が経済的に自立できなくなくなった要因に、親の独善的な教育に起因することも無視できない。世間体などから、子どもをレールから脱落したら詰んでしまうような育て方をしたのは、その親自身でなかろうか?そして、子どもが経済的に自立できないなど親の望んだように育ってくれなければ、暴力的支援団体などに高額な報酬を渡してでも、「人目に付かないように処分」してもらう。あまりにも身勝手ではなかろうか?

 暴力的支援団体は親向けにサービスを行っていることから、当事者を言いくるめて悪質契約を結ばせる支援業者・団体以上にヤッカイです。当事者側が怪しいと認識していても、イカれた親が契約して当事者を引き渡してしまうので、当事者側がこのような団体から身を守ることを困難にしています。

怪しい支援業者・団体の洗い出しで参考にしていただければ

 今回は、氷河期世代当事者を食いものにして収益を上げている悪質な支援団体の特徴についてまとめました。

 このような悪質な支援団体の蔓延を防止するための第一歩として、当事者主導で問題のある支援業者・団体を洗い出した上で、注意喚起をしていくことが考えられます。私が今回ピックアップした怪しい業者・団体の特徴を参考にしていただければ嬉しいです。

 加えて暴力的支援団体の場合は、業者が悪質なだけでなく、身勝手な親などの問題が絡んでくるため、当事者サイドによる注意喚起だけでは不十分で、毒親問題についての取り組みもセットで必要になってくる。暴力的支援団体に依頼する親から当事者の人身をどのように保護してくかの議論も待った無しだろう。

 最後に、最近はコロナ禍によって倒産・廃業が相次いだり、新卒採用枠が減らされるなどして、第二の氷河期世代が作られようとしています。このような社会事情を背景に、コロナ禍で就職を逃したり、失業した者を対象とした怪しい支援業者・団体が出現することが十分に考えられるため、注意が必要です。

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