6月読んだもの観たもの
レイモンド・カーヴァー『Carver's Dozen』
小説。先月読みかけで月を越したので、再度記載。
『ダンスしないか?』以降を6月に読んだ。『ぼくが電話をかけている場所』を読みながら、『カッコウの巣の上で』、をいま再読してみたら全然感じ方違うだろうな、と思ったり、酒関連でクォン・ヨソンの『春の宵』を思い出したりした。なんとなくわたしの中でトーンが似ていたのだと思う。『わたしが・棄てた・女』とかもちょっとだけ。
『大聖堂』と『ささやかだけれど、役にたつこと』と『使い走り』が、ものすごく好きだった。わたしは親しい人を突然に亡くすことをうっすら常時恐怖していて(別にそういう人が具体でいるわけではなく、全体として)、でもこういうフィクションがあれば、なんとかやっていけるかもな、と思うんだよな、と少し安心した。お守りみたいなもん。『死んでいない者』の「ずっと、いつかばあさんが死ぬことを哀しみ続けて生きてきた気がする」と一緒。須賀敦子のエッセイと同じ引き出しに入れた。
トミー・オレンジ『ゼアゼア』
小説。アメリカ文学を読む読む期なので、読むといいかもと思って、読んでみている。書いてあることの外側に、書いている人と読んでいる人の間の共有事項がたっぷりあるのを感じるけれど、わたしはそれを分かっていないな、と感じつつ読む。こういう時はわからなくても前に転がしていくに限る。
『七つの殺人に関する簡潔な記録』に似てる。
フランク・パヴロフ『茶色の朝』
絵本。演劇になって日本で上演されてた時にメモ取ってて、それで借りて読んでみた。シンプルディストピア。
植本一子 滝口悠生『ひとりになること花をおくるよ』
往復書簡。やはり私は子育てにまつわる感覚について読むのが好きだと思う。私の知らないことだから、という面と、私も知っているような気がすることだから、という間の物事だからなのか、なんなのか。でも毎回面白いな、と思う。
先月からオモコロチャンネルの沼にはまって、そのまま匿名ラジオとありスパ聴き始めて恐山のnoteにも課金してしまった(恐山泥酔回の匿名ラジオを恐山目線で読みたくて…)。何かにハマると行けるところまで一旦行ってみたいなと思ってズンズン進み、急に憑き物が落ちたように元に戻るというサイクルたどりがちで、そのズンズンフェーズにあるのを感じる。でも、すごい生活に組み込まれつつあるので、もしかしたらこのままなのかもしれない。
トップガン
映画。新作観に行くので、予習で観た。小学生が中学生の時に観て、それが最後なので久々にみたら、当時いろんなことわかってなかっただろうな……という部分結構あった。でも筋書きはすごくシンプルでわかりやすい。
マーヴェリック観に行こうかなどうしようかな〜〜みたいな話をしている時に、カーチェイスより絵面が地味だから戦闘機の映画って難しいみたいな話をしていて、そうかな〜〜みたいなこと言ってたけど、たしかに、色々映画見た上で観てみると、絵的には物足りないのかも。やっぱ道路の枠があってそこを暴れまくるし、町並みとかが相対的に凄スピードで去っていくからカーチェイスは盛り上がるのかもしれない…。今の技術だともっと撮り方の選択肢があって面白いのかもなーという気がしたので、観るのが楽しみになった。
トップガン マーヴェリック
映画。めっっっちゃよかったったったー!!!
めちゃくちゃ映像かっこよくてすんごかったので、ぷりっぷりに潤って出てきた、良すぎた。
観たあとインタビューとか裏話とか読んだら、トム・クルーズの意向でマジに戦闘機乗って撮影した、とあって、ドローン機体に対してパイロットに拘るマーヴェリックと同じすぎる〜〜となっちゃった。よかった。
翌日起きてからも、気持ちがザワザワする〜〜というくらいよかった。観たものの余韻を翌日まで引きずること最近はほとんどないのですごい余韻。サントラを聴く。
堂園昌彦『やがて秋茄子へと至る』
短歌集。まえーに、新宿紀伊國屋で特集されてて、気になるな〜と思って買わなかったんだけど、別のところで見つけて買っちゃった。タイトルが秀逸。
内容は、恐怖と音韻の世界の章以降の作品が好きだった、前半は少し柔らかくて明るい。それに対して後半はちょっと翳っていて、その方が好き。「冷たさの光のなかで刻まれる紫蘇、その紫蘇の放つ芳香」
寺尾隆吉『ラテンアメリカ文学入門』
書籍。どういう歴史を辿って、現在に至るんだっけーというのをきちんと知りたく読んだ。
政治的な背景と結びついた動きが大きくて、世界史勉強し直さなきゃ、と思った。全体観めちゃわかりやすく、各作家の作風とか重要な作品が抑えられるので、ほんとタイトル通り入門になる。
いかにして、ラテンアメリカ=魔術的リアリズムのレッテルができたか、とかも書いてあり、これを読むことでより正確にラテンアメリカ文学の像が掴めた。なるほど〜〜。
フエンタス読んでみたいな。
ばったん『姉の友人』
漫画。共用のKindleで友達が買ってたので読んだ。あんまり話は好きな方ではなかったけど、絵がめちゃめちゃ良かった。
清水玲子『秘密』1〜12巻
漫画。9巻やば……。構成がすごいしぎぇ〜〜ってなった。しっかり情たっぷりに書くけど手厳しい展開なので感情ぐちゃぐちゃになってしまったけどめっちゃ良かったな〜〜。心構えとしては、バナナフィッシュを読む気持ちと同じ感じで挑むといいのだと思う。
アーーーー!!!ってなりながら読んだ。めっちゃ良かったな〜。連載されてたの思ったより最近だった。生まれる前かと思ってたら生まれたあとだ(作品の現在時間が読者の未来という設定が、実際に2022年よりもちゃんと未来なのに納得)。エピソード0も読みたいし、他の作品にキャラが出てることがあるらしいので他もよみたいな…。
よみながら、そういえば映画もやってたよな〜と思ったけど、これは第九の面々が長い時間をかけて一緒にいることが表現されてこその関係性の厚さが情に訴えかける面白さだし、サスペンスの方向性でも、メインディッシュの事件に関わる伏線や情報量が多くて、映画1本分の長さじゃどうにもならないだろうな…と思った。調べてみたら、やっぱりエピソードは序盤の短く切り取れるものだったみたいだけど、構成はあまり上手くいってなかったっぽい。
荒木飛呂彦『STEEL BALL RUN』1〜24巻
漫画。お風呂カフェで読んだ。着火までかかるけど、ちょっとずつジョジョになっていく。オラオラオラオラ!出たところで、でたぁ!!と思った。
大統領の顔がどんどん、キリッとしてくる。
どっちかっていうと、5部と4部の方が好きだな。
荒木飛呂彦『ジョジョリオン』1〜6巻
漫画。お風呂カフェで読んだ。完結してるし読むかぁと思ったらお風呂カフェにあるの8巻までで、27巻完結だったので諦めた……。しかも多分前に7巻目くらいまで読んでいるけど全然覚えてないので、ジャンプラでコイン使いながら読んでる。これ、結構5部の次に好きかもしれない(5部が一番好き)。
『怪盗クイーンはサーカスがお好き』
映画。クイーンが、クイーンが動いてるね〜〜!って喜んじゃった。最近のクイーン、めちゃ規模がでっかくて、結構深刻に生死と世界を左右するので、平和だったな〜〜最初は〜〜と懐かしくなった。ずっと最新刊積んでるので読まねばだ。
丸顔めめ『スーパーベイビー』1〜4巻
漫画。こういうの好きなんだよな〜、あ〜と眉間押さえた。
こういうお互いがめちゃピュアでいい人間なのでほっこりしながらうまくいく恋愛の作品って、勧善懲悪であってほしいと思っている部分があるから欲望が満たされて気持ちよく水戸黄門を見ることができる、というときの罪悪感と同じ罪悪感を抱えずには読めないのだけれど、しかしやっぱり好きですの白旗をあげずにはいられないというやつだった。
自分の欲望にブレーキをかけながら読む(虚像の消費に際して、ギリギリ現実にあることを望める程度の虚像は、現実の他者への過剰な期待や勝手な失望につながりそうで怖い、という、己に対する厳重なコレはフィクションだぞ注意喚起ブレーキ)。
でも、それはつまりとてもいい漫画なんだよな〜〜という裏返しでもあって、かなり好きだった。この世の全ての人がこうであったらいいのに、と、結構思っているという状態に近いし、とても好きなキャラクターたち。
篠田桃紅展
展覧会。よかった! 午後は何しようかな〜と思って喫茶店で本を読んでいるときに、インスタで好きなイラストレーターさんがめっちゃよかった、と言っていたので、ふむふむ、と思ってその場のノリで観に行ったらすごくよかった。特にリトグラフを使い始めてからのやつがすごくよかった。惜墨1〜4のシリーズに惚れ惚れした。
古井由吉『私のエッセイズム』
随筆など。読むのに時間かかった……。解題を読んで、かなり理解が進む。仕切られた言葉ではなく、解け合いうねった言葉が多いので、理解するのに忍耐と時間がいる。
意外と、小説のほうが読みやすいんじゃないかと思う。
また読み直そうと思っている。多分書き込みしながら読んだほうがいい。
メルヴィル『書記バートルビー/漂流船』
小説。バートルビーがずっとダヴィンチ恐山の陰を纏っていた。体型とか口ぶりと、私がオモコロチャンネルをみすぎていること。読みながらこれはどういう……はなしだ、と思ったけど、主人公の「私」が結構バートルビーに肩入れしていて、最後にバートルビーの過去の職業について、嘆きと共に触れられているあたり、社会批判の文脈なんだな、とふむふむ理解した。悪いのは人間を損ねる社会。バートルビーにイライラしてしまう自分もまた、社会に馴染みだした人間……さもありなん……と、少し悲しくなった。2年前くらいならバートルビー応援しながら読んでいたかもしれない。
栄留里美/長瀬正子/永野咲『子供アドボカシーと当事者参画のモヤモヤとこれから』
書籍。しばらくぬったりした文の読書が続いていて、明晰な文体が良かったので、次読もうかな本リストの中から選んだ。
『なぜならそれは言葉にできるから』の延長にあるんじゃないかと思って、本屋で見つけて読んでみようと思ったが、医療系の棚の中に置いてあっただけあり、かなり実践的で現実的だった。
ストラテジックシェアリングの考え方が面白かった。安全に自分の実体験を話す、自分の体験を売るように話さないための手法のことということだった。傷ついた人間が、それについて話すときに、かなり必要だろうな、と、思う。この本は子どもについての話だが、『なぜならそれは言葉にできるから』の地平でもそう。
ロロの三浦さんが、震災の経験を講演で話す人が、毎回同じ話をするのではなく、それが毎回毎回繰り返しのおなじみの語りではなく、新たに語られているというパワーをすごいと思った、それはある意味俳優という人たちがやっていることと近いのかもしれない、というようなことを言っていたのを思い出す。
読みながら、こういう人間が相対するときの細かいあれやこれやの力学ってとても重要なのに、社会はぶよんぶよんにでかいので、そういう個々のというよりは、集団と集団の在り方に特化していて、カレルチャペックの『母』にもその影があったので、人間が集団でいる限りどうしようもねぇんだな、と悲しくなる。バートルビーの言うことももっともだ。
奥村忍『中国手仕事紀行』
書籍。民藝品の買付をおこなっている著者の紀行本で、雲南省と貴州省の話。
柳宗悦100周年的な民藝の展示を見に行ったときに、外から暮らしに顔を突っ込み価値づけをする、と言う構造はどうしてもあるので、それがいまいちしっくりこないかもしれない…、好きとは思うが……と複雑な気持ちになったのだけれど、今回もちょっとそうなった。民藝、好きになれそうでハマりきらない。でも、なんかその民芸品を使って生活をしている人たちは、そういうことそんなに気にしてないかもな、とこれを読んで思う(あと、この間わたしはベトナムの古いバッチャン焼きの小皿を買うなどしているし)。みんなごく普通に変な人が来たな、とか思いつつ台頭に売買をしていて、嫌な感じはなかった。
牛やヤギの胃の消化液を食べるビエ(漢字が変換されない)という珍味が出てきて、面白かった。知らない味のもの、食べたい。
高見浩『われらの時代・男だけの世界 -ヘミングウェイ全短編1-』
小説。すごい淡々としてて読みやすい。結構好きかもしれない。とりあえずわれらの時代と『白い象のような山並み』を読んだ。
結構、細いペンで精密に描かれた風景画という感じがするのと、草木が生えている雰囲気がある(フォークナーってなんか、草木が生えてなさそうなので、その対比かも)。
結構好きかもしれないので、全短編のシリーズ揃えてもいいかもな…。
野田彩子『ダブル』1〜4巻
漫画。休載していたのが、最新話が更新されたので、嬉しくって、最新巻だけ読み直した。読み直したら全部読み直したくなって結局全部通して読んだ。うっれしいー!
もう一度読んでみて、友仁さんが、華江さんに「超えるんですよ」というシーンは、才能を持って堂々と立つ者の側にいる人としての2人のシーンだから、グッと来るんだよな〜〜と改めて思って熱かった。本当にいい漫画だ〜。
最新話になる前3回分くらいがもうもんのすごくて、どうなっちゃうんだ……うぅ……と、ドキドキしていたのだけれど、なんかすごい方向にゴロン、と転がってきていて嬉しい。作者が身を削りながら書いているだろうなと勝手に思っていて、面白いものを読ませてくださってありがとうございます、と心の中でなむなむする。
モクモクれん『光が死んだ夏』1巻
漫画。あ〜〜絶妙に嫌な感じのコマがたくさんあって、嫌だけどいい〜〜面白いよ〜嫌だ〜。厭という感じに近い嫌。いや〜〜でも面白いよ〜。
普通になんなんだコレはどうなるんだコレは、というのと、絶妙にゾッとする構図や擬音の表記のされ方と、キャラクターの表情がよくって、ズンズン読んじゃった。どうなっちゃうんだ。
裏那圭『ガチアクタ』1巻
漫画。ギャグの感じが、スポンジボブっぽさを感じる瞬間がある。ベースがものを大事にしようなので、若干かっこよさとは遠くなっちゃうもっさりの感じがあるけど、絵のパワーが強いし、続きが気になるし後の方で回収されるぞってリズムなので気になって読むやつ。
保坂和志『言葉の外へ』
書籍。友達と話していて、なんかそのテーマと一緒に読んだら面白そうな本積んでたっけな?と、ゴソゴソ積読を引っ掻き回していたら見つけた。パラパラめくってそのあらゆる文が、今必要!!!という感じがして手に吸い付いてきたので嬉しくて読んだ。
ほんと、保坂和志のこと気になってて、ずっと読んだほうが多分いいなーと思ってるのに未だにしっかり読めてないから、ほんとなんか読むぞ……!!
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