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6月読んだもの観たもの

ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『フライデー・ブラック』
書籍。前にオススメされてずっと積んでいたが、Black Lives Matterについて自分なりに向き合うべきだなと思って、まずはこの本を読むことにした。作品ばかり観て行動しないのもよくないと思ったけれど、考えるための1つの手として。
ネトフリオリジナルドラマの『ブラックミラー』のような、にがーい風刺の効いた短編集で、主人公のものの感じ方が今まで触れてこなかったもので、色々発見があった。

湯浅政明『夢みるキカイ』
短編映画。youtubeに公開されていたので観た。1つ1つのものの動きを観るだけで、湯浅監督を感じる。マインドゲームもう一回みたいな。

『13th 憲法改正第13条』
Netflixオリジナルドキュメンタリー映画。
すごくわかりやすくて、勉強になる。ほとんど何も知らなくても、どのような歴史で、どのような構造が、アフリカ系アメリカ人を苦しめてきたのかというのがわかりやすく詳らかにされていく。イメージというものが、どれだけ暴力的に作用するのか、ステレオタイプはどれだけ醜悪かということを久々に思い出した。

『ロドニーキング』
Netflix映画。
1人語りの記録映像のようなもので、鬼気迫る語りだった。すごい。恥ずかしながらロスの暴動について全然前提知識がなかったので調べながら観た。何かの運動をする時に暴力がいかにして扱われるか、ということや、差別に相対するとき、被差別側とされる人々にも様々な人がいるということ、それぞれ個人で違う経験があることとかに、思いを馳せた。

『デュヴァネイ監督とオプラが語る憲法修正第13条』
Netflix。13thの監督と、オプラが対談するおまけムービーのようなものなのだけれど、13th で描かれるようなシステマティックレイシズムが広く知られているものではないのだな、ということを知った。
あと、どういう風にこの作品を作ったかについて存分に語っていて、観た人にどういう効果を与えたくてどういう行動を取らせたいのかという意識がしっかりあって、こういう問題においてうまく伝えることというのは大きな課題の1つなのだ、と思った。
(ルポールのドラァグレースで、オプラについてキャッキャって話していた記憶があって、名前は知ってたんだけど、確かにこりゃ魅力的だ……と思った。)

『サーカス・オブ・ブックス』
Netflixオリジナル映画。
ハードゲイポルノを売っていた書店のドキュメンタリー。面白かった。
同性愛者たちの歴史を、横でずっと観ていた書店、というような存在で、知らないことを色々知った。たまたま、何となく観たけれど、今月はプライド月間だった。『ポーズ』とか『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』とか、早く観ようと思う。

『クィア・アイ』のシーズン3の5本目
リアリティーショー。辛くなったら観ることにして溜め込んでいたのだけれど、本当に辛い時は何も観る気になれないと気づいたので、普通に気が向いた時に観ることにした。
ちょうどちょっとヘコんだ、くらいのときに観たらめちゃめちゃ良かった。今までのやつの中でもかなり好きかも。アフリカ系アメリカ人の女性でレズビアンの人が今回のターゲットだったんだけど、ちょうどBLMをきっかけにきちんと黒人差別の歴史について、インプットしていたので、カラモと彼女がなぜああいう風に関わるのか、ということが何となくわかった。
シーズン5はターゲットによって、前より5人の底力をぐっと出す回があって結構好きだな。

『私はあなたの二グロではない』
映画。アマゾンでレンタルしてみられる。
差別との戦いとは、伝わらなさとの戦い、と思うことがある。知ろうとされていない、目をそらされている、そういうもどかしさと怒りだ。それをふと思い出すような映画だった。白人の憎しみは恐怖から、黒人の憎しみは怒りからという作中の言葉を噛みしめる。
観ながら、60年代の運動に関して私が知っていることは、小学生くらいの時に読んだキング牧師の伝記の内容だけだな、と思った。もっと色々知りたいし知らないといけないな、と思った。
この作品の中には多くの映画などが引用されて、いかにして"黒人"というもののイメージが作られてきたかというのがわかる。こういう小さな1つ1つが大きな影響を及ぼし大きな苦しみをもたらす、というのを思い出す。
ボールドウィンの小説読んだことないので、読もうと思う。

『LA92』
Netflixオリジナル映画。ロドニーキング事件を端に発するロサンジェルス暴動のドキュメンタリー。『ロドニーキング』を観ていて、一人芝居の内容から脳内で想像していたことや、印象的なセリフが、なるほどこういうシチュエーションでの言葉だったんだ……とか、色々理解が進んだ。
頭の中で考えていた以上に、全てが壊され略奪され、燃やされていた。コリアンタウンで銃撃戦が起きているのとかを見ながら、こんなことがあったのか…。と思う。司法や警察に信頼がおけないし、無敵の人のような状況に置かれている人々があれだけの暴動を起こしたとして、無理もないな、とも思う。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』
映画。前に早稲田松竹でスパイク・リー特集をしていたとき、『ブラック・クランズマン』だけを見て、この映画は泣く泣く諦めたのだけれど、とてもよかった。感想はfilmarksにて。

上野千鶴子 伊藤比呂美 『のろとさにわ』
詩集・散文集。ひさびさに湿度の高い、ねっとりしたものを読んだ。川辺座って読んだ。ないすないす。

ジョセフ・ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』
書籍。おもしろいおもしろい、ってもそもそ読んでたんだけれど、返却期限きてしまったので、右派の誤解(前半部分)までしか読めず、左派として誤解したまま(後半は左派が誤認していることについて書いている)図書館に返した。またいつか残りを読む。きっと。

東畑開人『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』
書籍。快活で軽率で楽しくて鋭くて面白くて最高の本だった…! 久々に読んだ後にハイな気持ちになった。同じ本読んでたともだちに「爆裂面白拳かませるくらい、ばちくそにおもしろいな!!!さいこうだ!!!」って連絡しちゃうくらいグッドだった。

はやみねかおる『めんどくさがりなきみのための文章教室』
書籍。はやみねせんせいを節々に感じる。
自分の好きな小説を真似して書いたり、キャラクターの性格などを決めずに書いたりしていた中学生だったので、反省したとともに、基本が大事! と思い出す本だった。いつまでもはやみねせんせいはヒーローだし、はやみね先生のような大人でありたい。

ロロ 『ポートレート』
さいっっっこうな、リモート演劇シリーズだった……。触覚、聴覚ときて、むしろ逆にここで視覚!!!という感激がすごい前半、そこから巻き返して聴覚や触覚を感じさせる後半…。ほんとーーによかった…。

東畑開人『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』
書籍。はっっっとするくらいおもしろい。書いているひとの力量をみしみしと感じる。面白くて、読みやすくて、学術的で、ガツンとくらわされる(読みやすさが全てではないがこれは力量がないと出せない読みやすさ…)。
野の医者を呼んでいる最中に、面白すぎるわ!!!って、買ったのですけど、ちょっと軽くつまむだけ…と思って開いたらその日に読んでしまった……。強引なパワフルさよ…。
内容も面白くて勉強になる…!!糧だ!と思っていたけれど、読みながらこんな文章が書けるようになりたい…ぐぅぅうううともなる。
『日本のありふれた心理療法』も例に漏れず購入済みなので、はやく読もう〜とワクワクしている。

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる
東京都現代美術館、はじめていきました。
かなり楽しかった。久々に身体を感じました。キャプション結構重要だと思うのだけれど紙にしか書かないスタイルで、入り口でこの説明の紙を手にしなかった人は全てよくわからないままとにかく体験するということになるのだなぁと思った。

平山亮『介護する息子たち 男性性の死角とケアのジェンダー分析』
書籍。面白かった! 今までトキシックマスキュリニティについて書いてある本とか、あとは男性学的なものに触れたことがなかったのだけれど、この書籍を通してその辺に対するぼんやりしたイメージがだいぶくっきりしたと思う。
著者は、男性学に対して懐疑的な人なので、自分で男性学ど直球の本を読んだときにどんな感想を抱くかがまたきになるところではあるけれど、差別コストというものがどういう仕組みなのかだいぶよくわかった。
いままで、名もなき労働、つまりケア的なものと、自立した個人の関係性について、全然気づいていなかったのだけれど、なるほどそういう仕組みか!!というのがよくわかった。いま、『フェミニズムの政治学』を読んでいて、自立した個人(ケアをされなくても大丈夫)が公的な空間に参加するという考え方がある、というのを読んで、ぎえぇなるほど!!と、この本と合わせてビシビシ脳内でつながっている。
私的な空間でケアされていることが、透明化してしまうという部分はなるほどだった。

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