【超短編】 物忘れ世界大会
僕は物忘れ日本代表である。
色々な大会を渡り歩き、連勝に継ぐ連勝でとうとう日本代表まで登りつめた。
この大会はどれだけ早く、正確に忘れられるかを競う競技が沢山ある。
だから、忘れる能力の高い選手が沢山エントリーしているのだ。
ただ、僕には秘密がある。
誰にも言えないのだが、僕は物忘れをしているフリをしているだけなのだ。
一度、悪ノリで大会に出たところ、優勝してしまった事で、あとに引けなくなってしまった。
そのまま、なんとなくで出場し続けてしまい、日本代表になってしまったのだ。
今日は世界大会。
世界ともなれば、強烈な物忘れの猛者がエントリーしているはずだ。
競技場に着いた僕は始まる時間を待つ。
さすが、世界レベル。
誰も現れない。
国内大会のレベルだと数人はやって来る事もあるのだが。
今日も不戦勝で、とうとう世界一になってしまったのだった。
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