【超短編】時間を戻せる力

とうとう、私は手に入れてしまった。

この能力を。

『時間を戻せる力』だ。

長年修行して来た成果だ。

くしゃみをすると、10時間戻れるようになった。

これなら、何があろうと、桃太郎電鉄でリセットボタンを押すがごとくやり直して、良い結果だけを受け入れる事が出来るのだ。

私は失敗したらくしゃみ、失敗したらくしゃみを繰り返した。

そのおかげで、秋冬の半年間は仕事もプライベートも好調であった。

しかし、春になって、その状況が一変した。

忘れていたのだが、

私は酷い花粉症だったのだ。

くしゃみが我慢できない。

時間が進まないどころか、戻り過ぎて訳が分からなくなってしまった。

今が何日かも分からない。

会社にいるのか、家にいるのか。

朝なのか、夜なのか。

次々に出るくしゃみと、混乱する頭。

気温が寒くなって来たので、冬に戻ったのだろうか。

今日は何をする日だったか・・・

そうして、私は春と混乱がループする地獄に落ちたのだった。