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多様性のある社会で、お金の価値がやけに高くなる理由

深津 貴之 (fladdict)

世界が多様になるほど、なぜかお金や数字のパワーが強くパラドックスについて、仕組みと対策のお話。

社会が多様になるほど、年商やフォロワー数、RT数のアピールが増えていきます。

多様な社会は価値観が多様

多様な社会には多くの価値観があり、人によって大事なものが異なります。

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まさに十人十色、理念の上では素敵なユートピア。

…ですが、価値観の多様化は、無条件の善ではありません。よいことと合わせて、課題やデメリットも生まれます。

たとえば、コミュニケーションのコストの増大。これは多様性社会がかかえる、大きな課題の1つです。


多様な社会は意思疎通のコストが高い

価値観が多様になるほど、社会のコミュニケーションは、どんどん高まります。

多くの友人と、飲食店にいくシーンを想像してください。

中華マニアと、ラーメンマニアと、フレンチマニアと、ファーストフードマニアと、バーマニアと、居酒屋マニアと、宅飲みマニアで、予算高めの飲み会セッティング…そんなシーンです。一部の人はアルコールが飲めず、アレルギーの人もいれば、宗教的な禁止食材がある人もいます。

このように色々な人が増えるほど、利害調整が難しくなります。

飲み会程度でも大変そうなのに、こういった大調整がもっと難しいことでも発生します。中絶や死刑や社会保障や教育制度などなど…これが多様性社会の必要コスト。

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このように多様性社会のコミュニケーションは、地道な調整の連続です。自分の提案はなかなか通らない。通ってもモヤモヤする妥協案になりがち。そのうえ、自分の案は通らないくせに、どうしても許せない案に限って採用されたりします。しかも時間がひたすらかかる。

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本気で多様性社会をめざすならば受け入れるべき前提。それが高いコミュニケーションのコストです。

…ですが、そういう状況はとてもストレスフル。このため、社会が多様になるほど、全員が共有できる土台が求められます。

そういう、にっちもさっちもいかないコミュニケーションの末、お金や数字の需要が少しづつ高まりだします。

お金や数字は、多様性社会の共通言語

お金や数字の最大の強みは、「その表すものが思想信条によらず、一定なこと」です。

職業が異なっても、1万円は1万円。人種や宗教が異なっても、180cmは180cmです。宇宙全体で1 + 1 が必ず2になります。肌の色や性別で1 + 1が、400になったりはしません。

このため社会が多様化(or 分断化)するほど、「ブレない共通言語」として機能する「数値」の役割は、ますます重要になります。

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お金という概念を導入すれば、様々なコミュニティが共通の基盤をもって交流できるのですね。


お金は全てをフラットにする

共通言語としてのお金(or 数字)には、とても強力な機能があります。

それは、多様な価値観を一本化して比較できることです。

たとえばなにかを比較する場合…ある料理の美味しさと、漫画の面白さと、絵の美しさは、概念としてバラバラで、感じ方も人によって異なるため、比較できません。

でもお金をつかえば、料理と漫画と絵は、値段として比較可能になります。多様な価値観を一本化して比較できるわけです。だいぶ乱暴に。これがお金の機能です。

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フォロワー数やRT数も同じです。フォロワー数やRT数を介せば、アイドルとお医者さんとサラリーマンとユーチューバーが比較可能になります(それが正しい比較かはともかく)。

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だから、多様性社会では、お金や数字が重要な共通言語になります。

それなのに多様な社会になるほど、お金や数字で評価する行為は、嫌われがちです。

多様な社会ほどお金や数字の重要度が上がり、多様な社会ほどお金や数字が嫌われる。不思議なパラドックスです。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

なぜお金が嫌われるのか

それはお金(や数字)の持つ「あらゆるものが同じ尺度で比較可能になる」という機能が、多くの人々にダメージを与えるからです。

「あらゆるものが同じ尺度で比較可能になる」とは、「あなただけの聖域が無くなる」でもあります。

「ギター奏法のこだわり」や「筆の色使い」は、あなたにとって、あるいは所属コミュニティにとっては、プライスレスの大事さだったかもしれません。

多様性社会では評価の共通尺度として、お金や数字が採用されます。あなたの大事なプライスレスな価値観も、みんなに理解可能な中立的な価格に変換されます。つまり、社会全体では、あなたの作品は「売り上げ」や「いいね数」として評価されてしまいます。

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あなたにとって命をかけられるモノが、多様な人々にはまったく価値のないことも多々ある。それが多様性社会の宿命です。

そして、あなたの「特別な何か」は、社会全体の多様な人々にとっては「否定しないけど、お金を払う価値ほど興味がない」ものです。

逆にあなたの価値観と関係なく、多様な人々に刺さるモノ(メジャーなもの)は、天井知らずの価値がつきます。

あなたが命をかけたものが、他の人にとってはそこまで大事でない。ちょっと凡庸でも、大衆に届くメジャーで分かりやすい作品に天井知らずの価値がつく。

全てがお金に換算される社会では、誰もがその現実をつきつけられます。お金はメジャーな評価指標なのに、お金でしっかり評価されるモノやコトやヒトは、マイノリティなんです。

これが、多様性社会においてお金が嫌われる最大の理由です。

多様性社会の全体評価に乗っかる限り、残念ながらほとんどの人の「特別」や「大切」には値段がつきません(自分とは価値観が違う人が多いから)。自分は社会から、それほど評価されない。ほとんどのクリエイターはその現実を常に意識させられます。

これは、物を真摯につくる人ほど、アイデンティティにダメージを受けます。正直ツライ。多くの人は、逆に「お金」や「数字」によるグローバルな評価を避け、自分たちのコミュニティに立てこもりたくなってしまいます。


心安らかに創作を続けるために、どうすればいいのか?

それでも多様性社会は重要で、推し進めるべきもの。

上記のような背景から、多様性のあるプラットフォームは、統一ランキングをできるだけ作るべきではないと考えます。ランキングはお金と同じように、多様な価値観を無理やり一本化して、不必要な勝者と敗者を作ってしまうからです。

同じように収入やRT数などを誇るカルチャーが、メイントレンドにならないような、そういう世界観を作っていくのが大事でしょう。

十分に多様で流動性のある社会において、絶対的な価値指標を作ってしまえば、大半の人々の営みは絶対価値指標の高い場所に集中してしまうでしょう。結果的に、多様性は破壊されてしまいます。

もちろん共通言語であるお金(や数字)を全否定する必要はありません。ですが、構造的な問題から、そういった指標が強くなりすぎないようにする。

スキ数はあってもよい、でもスキ数による絶対ランキングは作らない。そういうバランス感覚が大事かと思います。共通価値に対する調整こそが、多様性社会では重要なのでしょう。

そんなことを考えながら、サービスの設計をしています。



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深津 貴之 (fladdict)
noteのCXO。THE GUILD。ユーザーの行動を設計するデザイナです。 サービス設計や日々の学び、note.comのカイゼン報告などについて書いていきます。