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読書

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#読書の秋2020

あれ以来、火傷の少女の姿は見ていない

あれ以来、火傷の少女の姿は見ていない

「自由になりたくないんです。この靴をはいたまま、標本室で、彼に閉じ込められていたいんです」

主人公は、働いていたサイダー工場で薬指の先を欠損させてしまう。
肉片はサイダーの中に沈んでいった。

サイダー工場を辞めた主人公は、「なんでも標本にする」という弟子丸氏のもとで働き始める。ー楽譜の音、鳥の骨、火傷の傷の跡、火事のあとに生えたきのこーなど、繰り返し思い出し、懐かしむための品物を持って来る人は

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大人たちに乱される子供の運命

大人たちに乱される子供の運命

「事件を起こして、あなたの言う”社会”を見せて、世の中は変わったんですか?」

物語は、実際に起こった『グリコ・森永事件」という実話を元に書かれたフィクション作品である。

京都でテーラーを営む曽根俊也。
ある日、自宅で父の遺品として、テープとノートを発見する。
そのテープは、覚えのない、自分の幼い頃の声を録音した者だった。
そしてノートには、『ギン萬事件』の犯行計画が綴られていた。

もう一人の

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幸せのかたちは一つなんかじゃない

幸せのかたちは一つなんかじゃない

「本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。あの日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。」

優子には三人の父と二人の母がいる。
血の繋がらない親の間をリレーして、4回も名字が変わった今は、森宮優子。
優子はいつも、出会う家族の誰からも愛されてきた。
愛情にあふれた家族の姿、様々な幸せのかたち。
時に大人の都合に振り回されながらも、過去と

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