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大人たちに乱される子供の運命

「事件を起こして、あなたの言う”社会”を見せて、世の中は変わったんですか?」


物語は、実際に起こった『グリコ・森永事件」という実話を元に書かれたフィクション作品である。

京都でテーラーを営む曽根俊也。
ある日、自宅で父の遺品として、テープとノートを発見する。
そのテープは、覚えのない、自分の幼い頃の声を録音した者だった。
そしてノートには、『ギン萬事件』の犯行計画が綴られていた。

もう一人の主人公、阿久津栄士は、新聞記者として働いており、年末企画として『ギン萬事件』を追うように命令される。

『ギン萬事件』とは、食品メーカーの脅迫から社長誘拐、最終的には無差別殺人未遂事件へと発展した、昭和最大の未解決事件である。
犯行グループからの指示のためのテープの録音に使われた声は三人の子供。

京都、大阪、ついにはロンドンを舞台に『ギン萬事件』についてそれぞれ調べていく二人だったが、ついに犯人の一人が生きていることをつきとめる。

何不自由なく育ち、京都でテーラーとして働き、生活をしていた男。
「逃げ続けることが人生だった」と述べる男。
そしてその姉。
三人の子供たちの運命はどうしてここまで違ってしまったのか。
なぜ彼らの運命は狂わせられなければならなかったのか。
なぜ事件は引き起こされたのか。


罪の声/塩田武士


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