見出し画像

評価において大切なこと(その12:最終回)

最終回となる今回は、「評価制度の運用」について書きます。
人事部門や経営者の皆様向けの内容となっています。該当しない方は、最後の部分だけお読みいただければよろしいかと思います。

これまで、評価制度づくりで大切なことや評価にあたって気をつけるべきことを書いてきましたが、評価制度をいかに運用するかということも大切なポイントです。
なぜなら、評価制度は忙しい管理者にとってはどうしても「余計な仕事」と感じられてしまうためです。これは無理もないことで、商品やサービスを作るとか、いかに宣伝するかとか、お客様に届けるとか、売上を回収するといったことがビジネスの本流であるとすれば、評価や部下マネジメントはその裏側の仕事です。評価だけを専門に行う管理職はおらず、自分のメインの仕事をしながら、傍らで評価を行うということにならざるを得ません。ましてや、評価は年に1回とか2回、「季節的行事」として行われることになります。であればこそ、運用側がしっかりとサポートして、管理職が適切な評価と部下育成に繋がるフィードバックを行うように支援する必要があるのです。

運用で大切なこととして、以下の事項が挙げられます。
 1.スケジュール設計
 2.趣旨の再徹底
 3.取りまとめと調整
 4.フィードバックのための支援
以下、一つひとつ解説します。

まず、「スケジュール設計」です。
適切な評価とフィードバックを行うためには、それなりの時間がかかります。忙しい管理者にとっては付加的な仕事となるため、ある程度の余裕を持ったスケジュールが必要になります。また、評価の調整を行うための時間も必要です。各社の制度によって異なりますが、一例として以下のような流れが考えられます。

  評価実施通知
   ↓ 
  評価実施
   ↓ 
  取りまとめ
   ↓ 
  一次調整
   ↓ 
  二次調整
   ↓ 
  最終調整
   ↓ 
  フィードバック実施通知
   ↓ 
  フィードバック
   ↓ 
  昇進・昇給・賞与などへの反映

このような流れを滞りなく行うために、他の事業活動の日程なども考慮しながら、計画的に進める必要があります。
年間の事業日程に織り込んでおくことが望ましいでしょう。

次に、「趣旨の再徹底」です。
評価を行う管理者に対して、自社の評価制度の趣旨や仕組みについて、その都度しつこいくらいに説明することが大切です。できれば、評価実施通知の段階で評価者を集めて意思統一を行うことが望ましいです。それができない場合には、メールや依頼文書でしっかりと伝えるようにしましょう。

3点目は「取りまとめと調整」です。
ここが最も難しいところです。評価者の皆さんは自分なりの考え方で評価を行いますが、それぞれに基準が違っていたり、評価者による甘辛が出たり、評価者の心理的エラーによる歪みが出たりして、結果的に不公平が生じる可能性があります。
これを適正に調整するのは、人事部門や経営者の仕事です。
上記の例では「一次調整」「二次調整」「最終調整」と書きましたが、評価のプロセスの中に予め調整の仕組みを組み込んでおき、それが適正に機能するように運用するのです。
そのためには、人事担当者は個々の社員の日頃の働きぶりや評価者の癖などを把握しておく必要があります。その情報をもとに、評価が的確に行われているかを見定めながら調整していきます。
人事担当者としての手腕が問われる場面です。

最後に、「フィードバックのための支援」です。
評価が最終決定した段階で、結果を評価者に伝達し、評価者から被評価者にフィードバックを行います。よい評価結果のフィードバックは比較的容易ですが、厳しい結果をフィードバックするのはなかなか難しいものです。評価者がフィードバックを行うにあたっての注意点や効果的なフィードバックを行うためのアドバイスを提供することにより、評価者を支援することも人事担当者や経営者の重要な役割です。

以上、評価制度の運用について考えてきました。
最も大切なのは、一連の業務を「作業」と考えてこなすことがないようにすることです。評価は、会社経営の中において極めて重要な機能です。経営者、人事担当者、評価者の全員が魂を込めて行うことが必要です。
また、最近では評価を行うためのシステムを導入している会社が多いと思います。システムは便利ですが、その便利さに流されて表面的な評価にならないように注意する必要があります。目的を見失うことなく、しっかりと運用するよにしましょう。

評価において大切なこと、
その12は「評価制度は魂を込めてしっかり運用する」です。

いかがでしたでしょうか?
次回からは「『箱』と外向き思考」について書いてみたいと思います。

株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?