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自分を役立てるために、経験をためていくこと。

大学を卒業してから5年近くが経った。卒業してからこれまで、大学時代に築いた人間関係だとか、日常の過ごし方のコツだとか、「経験」の貯金で生きてきた、と思う。

18才、地方から上京し初めての一人暮らし。帰る部屋の静けさを知ったこと、孤独の紛らわし方。歳上の人と付き合い、全力で向き合ったこと。疲れて、人との距離を置くようになったこと。映画館に入り浸った日々。バイト、サークル、遊び、、自動的に埋まっていくスケジュールに空しさを感じ、何もかも一気に辞めてアメリカに行ったこと。授業で出会った人たちと、団体を立ち上げ活動したこと。旅先で出会った人がきっかけで、過去のトラウマに気付けたこと。時間はかかったけど自分の痛みを少しずつ受け入れたこと。社会にすっと出られず、自分と向き合うために卒業を遅らせたこと。愛されたいと願うことから、少しだけ愛することができるようになったこと。・・・

大学では時間があったから、とことん悩めた。その度に喫茶店に入って、自分の気持ちをとにかくノートに書いた。少しずつ経験を話せるようになって、自分だけだと思っていたことが、他の誰かとも共有できることを知った。自分の経験を元に、友人が少しでも元気になれればいい。

「話して、聞いて、気楽になった。」そんな言葉をもらう度に、自分の存在価値を感じられていたと思う。

私は弱いので、何かで相手の役に立っている、と思えない限り、すぐ自分の存在価値を感じられなくなってしまう。仕事で役割を果たしているのでは?と思っても、何かが足りない。もしかしたら、仕事上のスキルで役立つのではなく、自分という人間そのものを役立てたいのではないか。経験から学んだこと。生きるための知恵、考え方。痛みを和らげるためにできること。自分という人間を役立てて生きていくことがしたい。そう気づいたらすこし腑に落ちた。

東京での暮らしは10年目に入る。経験はそれなりにしているはずだけど、社会に出てからの自分は、自分の経験に対してまだはっきりと価値を見出せていない。言葉のストックが少ない。だから自信が持てず、自分自身がすぐにぐらぐらする。もしかしたら、「経験」までいかず、体験として流れてしまっているのかもしれない。

自分を役立てるために経験をためていく。それはつまり、体験したことを言語化し、すぐに取り出せる「経験」のストックをつくること。そしてその経験を、自分の物語として意味づけていくこと。

体験や気づきを共有できるよう言語化できているか。相手に対してかける適切な言葉を持っているか。相手の悩みにすっと共感できるような解像度で、感覚を分解できているか。

山田孝之は、ドキュメンタリー"No Pain, No Gain"の中で「楽しく生きるために、楽をしない」と語っていた。自分を役立てるためには努力がいる。少しずつでいいから、経験をためていって、誰かの力に少しでもなれたら良いなと思う。

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