マガジンのカバー画像

超短編集

14
運営しているクリエイター

#自殺

自殺日和①

自殺日和①

積雲の1つもない。
魂は激昂しているが、心は至って安らかだ。

ある日、掴んで離さないようにした大切なものが、指の隙間からスルリと落ちてしまう。それは空気中にふわりと漂い、握ることができない。

春の部屋に秋の風がいたずらに吹く。空気の中の棚上の孤独が、ふんわりと浮き出している。

私は持ち物を一つ一つ、手のひらに載せて丁寧に握る。それらはどれも、耐え難き受難の後に得た大切な宝物だ。

何も感じる

もっとみる