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嘆き全集 | Franz K Endo
2024年8月24日 19:27
積雲の1つもない。魂は激昂しているが、心は至って安らかだ。ある日、掴んで離さないようにした大切なものが、指の隙間からスルリと落ちてしまう。それは空気中にふわりと漂い、握ることができない。春の部屋に秋の風がいたずらに吹く。空気の中の棚上の孤独が、ふんわりと浮き出している。私は持ち物を一つ一つ、手のひらに載せて丁寧に握る。それらはどれも、耐え難き受難の後に得た大切な宝物だ。何も感じる