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超短編集

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2023年7月の記事一覧

また騙されて

「嗚呼、あなたをとても愛しているわ!」と女は歓喜に満ちた表情で叫ぶ。

私はステージに立っていることに気づく。口元に手を添えると、私の口がつらつらと何か愛の台詞を喋っている。「君のいない世界に意味など何もないよ!」

「あなたは私だけのものよ、私だけを見て!」

誰かの雑多な想像のなぞり書きとはいえ、相手の表情には、その言葉に含まれる感情を読み取れるような気がする。私の気分は段々と高揚する。身は引

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病院にて

もう二度と元に戻らない状態になってしまったことに絶望するが、同時にその苦しみにも安堵している。もうこれで本当に私は諦めることができるのだ。これから実ると信じていた様々な淡い希望が頭から離れていき、私はゆっくりと意識を失う。

目が覚めると、薄汚れた天井と私を覗き込む医師が視界に入る。不幸にも、仲間の懸命な処置で私は一命を取り留めてしまったのだ。またこれから起こるであろう数々の苦難を想像して、私は気

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正しい相席

傷心故に発狂した若い女が、1本で寿命が20年も縮むという煙草に何本も火をつける。金切り声で男の名前を叫びながら、煩憂の発露たる煙を街中に撒き散らす。

女を諭そうとした小綺麗な中年の男は、その図々しさの罰で、陰鬱な煙に巻かれるとすぐにその生涯の幕を閉じる。

それに遭遇するなり、通行人達は半狂乱で身体に取り入れた煙を吐き出す。口に指を突っ込んでは嘔吐し、汚染された服を脱ぎ出す。ヒステリックな呪術で

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必要なくなると手に入る

噛み合わせの悪い引き出しから双眼鏡を取り出し、せめてもの思いで、あの心臓が消えた方角を向く。

うねるような鼓動の音をこだまさせ、森へ一直線にかけるのが見える。その力強い鼓動から漏れ出た心臓の思惑が、私の鼓膜を波打つ。私にはそれが何を意味するのかが分かるのだ。

私はかつて愛し崇拝したその心臓のその後を想像し、祝福と絶望にかきこまれ、また涙する。霞んだ視界には、かすかにその心臓が半身を切ってこちら

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