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12月31日(土):「個別最適な学びと協働的な学び」②

休日モードとして本日も書籍の紹介をしていきます。

本日は昨日からの続きで「個別最適な学びと協働的な学び」についてです。

同書は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」で提起された、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実は、一考のカリキュラムの中でどのように実現可能なのか、といったことに触れています。

山形県天童市立天童中部小学校での実際に具現化してきた取り組みとその背景にある考え方を説明しているのですが、そこでの観点は小学校での学びだけに留まらず様々なカテゴリー、組織における学びにも参考になる点が多いでしょう。

具体的には個別最適な学びだと「マイプラン学習」として単元内の学習進度を生徒が自分で自由に決められるものや、「フリースタイルプロジェクト」になると今度は学ぶ内容も自分の興味関心のあることを選び、学び方も含めて自分で計画して進めることができる、といった具合です。

これをある1時間の授業として実施する、というレベルではなく、10時間や20時間分など、まとまった時間を生徒に委ねる自由度を持たせながら、それぞれに深い学びに至る状態を整えているのが秀逸です。

一般的な公立の小学校の現状と比較をすると相当に前衛的にも感じますが、近代以前の寺子屋時代の教育はそもそも個別最適がベースだったということだから、完全な新しさというよりもかつてあった個別最適の良さと現代の学習環境との掛け合わせによる螺旋的発展と捉えることもできるかもしれません。

ポイントは「学び方の得意」と「学ぶ領域の得意」という2つの得意を習得していく点だと説いていました。

前者の「学び方の得意」とは個々に異なる学習適正のもとで自分が理解しやすい学び方を体得していくことで、後者の「学ぶ領域の得意」は文字通り得意分野を創る意味合いで、学び方の得意が学ぶ領域の得意の獲得に寄与していく旨も示唆されています。

また協働的な学びでポイントだなと感じたのは「視点を移動する(立場を変える)こと」で、多面的・多角的に考えたり、公正に判断することの難しさを知る点です。

これは自分一人で学ぶだけでは得難いもので、他者の異なる考えや判断に触れることで養われていく面が大きいからです。

ただ、これも個々の独自学習がベースにあっての相互作用でもあり、「個別最適な学びと協働的な学びは相補的、相互促進の関係」との示唆も合点がいきます。

昨日も記しましたが小学校は自立性や多様性のもとで多くを学び、個々の可能性を広げることがゴールだと思いますが、私たちは企業組織で自社であればフィットネスクラブ運営をしているので、広げた可能性や個々の資質を用いて組織という枠組みのなかで結果を出していくまでがゴールになります。

単に個々のやりたいことや多様性だけを尊重するならフリーランスや趣味で事足りますが、それを顧客にとっての価値と結び付けて対価を得ることが前提になる企業活動では、個別最適だけではない全体性もまた必要です。

そのなかで個別最適と協働的な学びを共存・両立させるための区分けでいえば、以下のようになるのかなと捉えています。

個別最適
自立までのプロセス、専門領域(得意分野の獲得)

協働的
理念の理解・浸透、カルチャーの醸成、戦略的な強みの形成

あとはこれをどのように進めていくかの方法論については、本書の内容をヒントにトライをしてみて、そこからの改善による模索を続けていくイメージでしょうかね。

学びとしてのあるべき姿だなと思うのは本書で触れられていた以下の2つです。

「学びがただちに自分自身を見つめること、生き方の探求(自己存在の核心に迫っていくこと)になっていくこと」

「学ぶとは本来、わかっていると思い込んでいたことが、一段深い水準においてわからなくなること」

社会人になってもこうした学びを続けていけるかどうかは本当に大事だと思うので、それを組織内に広げていければと思っています。

「個別最適な学びと協働的な学び」
奈須 正裕 著
東洋館出版社


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