11月30日(水):地域コミュニティでも大切なお節介
一昨日は「『お節介』から生まれる信頼」と題して国内最大級のシニア向けオンライン旅行サイト「ゆこゆこネット」の電話対応や、兵庫県明石市の地域コミュニティーについて意見が交わされたパネルディスカッションのことに触れました。
本日もこれらに共通する「お節介」に関連した話をもう少しばかり。
私が以前に読んで書籍に「その島のひとたちは、ひとの話をきかない ~精神科医、自殺希少地域を行く~」というものがあります。
ここでいう「自殺希少地域」というのは自殺をする人が非常に少ない地域のことで、平たくいえば「生きづらさ」が少ない地域だと言えます。
本書はかねて行われたそうした研究からクローズアップされていた地域を精神科医の方が実際に訪れ、そこでの住民の方々とのやり取りを通じて感じられたことが記されたルポのような内容です。
同書には6つの地域が取り上げられていましたが、書籍の末尾では著者がそれぞれの自殺希少地域を訪れて気付いたこと、聞いたことをもとに7つの原則として以下のようにまとめています。
1、即時に助ける
困っている人がいたら「いま、即、助けなさい」とのマインドがあり、困りごとが見つかった時点で問題が大きくなる前に皆で集まって、よってたかって助けるような姿勢だと言います。
「病は市に出せ」という言葉もあるようで、困っていることは抱え込まずに外に出すと同時に、それを当たり前のこととして受け止める素地があるように思います。
2、ソーシャルネットワークの見方
人と人との関係は「疎で多」だと表現されており、自ら人を避ける人はいたとしても、孤立はしていないし、孤立させない状態とされています。
ただ、「疎」と表現をされてはいるものの、都市部の私たちが考える「疎」とは水準が違う気がしましたね。
家の鍵をかけずに生活をしていて、急に雨が降ってくれば断りもなく近所の家の洗濯物を相手の家に取り込んでおいたり、収穫したものを相手の玄関に置いていく、といったことが日常になっています。
必要以上に深く交わらない点で「疎」というだけであり、互いにおける一定の安心感、相互認識は都市部の近所づきあいの状況とは違う水準だと思います。
「困っている人がいたら、できることはする、できないことは相談する」というスタンスで、人はいつも人との関係のなかにあり、人を助けるのは人である、との考え方が浸透しているように感じました。
3、柔軟かつ機動的に
こうした地域では物事が現場で考えられ、現場で意思決定されるような状況になっているようです。
だから柔軟に動けるし、機動力が高く、それが「いま、即、助けられることにつながる」のだと思います。
4、責任の所在の明確化
同書では「この地域の人たちは、見て見ぬふりができないひとたちなんですよ」との言葉が紹介されていました。
先に記載した「できることはする、できないことは相談する」とつながるもので、自分ができるところまでは責任を持ち、できないと思えば相談して次に責任をもって受け渡す姿勢で、相談を受けたら解決するまで付き合う、あるいは解決するとわかる道筋が見えたところでバトンタッチする形のようです。
無関心で放置、たらいまわし、といったことが起きにくい状況のように感じます。
5、心理的なつながりの連続性
先ほどの内容と重複する面もありますが、「解決するまで関わり続ける」との姿勢が心理的なつながりの連続性を生んでいるように思えます。
実際に同地を訪れた著者が受け手の感覚として、自分が困ったことに直面した際に「不安にならないようにずっと気持ちがつながっていると感じた」と記しています。
6、不確かさに耐える、寛容
「自然は厳しい、相手を変えることはできない、何が起こるかわからない、だからなるようになるし、なるようにしかならない」といった心持ちが平穏さを保つことにつながっているのでは、との考察でした。
不確かさに対する寛容さが生きやすさと関係するとの見方もあり、こうした点もまた大事な要素なのだと思います。
7、対話主義
相手は変えられない、変えられるのは自分との前提に立つと、「自分がどうしたいのか」、それだけであるし、それだけでいい、とも触れられていました。
タイトルにもなっている「この島のひとたちは、ひとの話を聞かない」はここからきています。
でも、それでいながら常に相手とは真正面から向き合っていく姿勢があり、どの地域でもおしなべて対話がベースになっているということでした。
こうした対話をはじめ、各地域の方々のオープンスタンス、人に対しての寛容さに加え、見栄やプライド、損得抜きに自分が相手にしてあげたいことをする姿勢は、お節介と呼べるものかもしれません。
地域のなかに、そして人と人との接点に少しばかりのお節介があるぐらいが温かみを生み、生きづらさを和らげているのだと感じます。
そのように捉えると今の時代にこそ、身の回りの方々へのお節介を焼くぐらいがちょうどよいのかもしれません。
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