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リリースしたら一段落するどころかヒリヒリ度が増した

今まで書いてきたnoteの中でたぶん今回が一番ダサい記事だと思います。サービスをリリースしてから2カ月。県や市の方と仕事をする機会をいただいたり、初受注があったり、IT導入補助金に採択されたりといいニュースもたくさんありました。

ただこれはあくまでも対外的な話。

発信していなかっただけで、実のところこの2カ月は正直めちゃくちゃしんどかったです。リリースするまでも大変でしたが、リリースしてからの方が輪をかけてもっと大変でした。これまでの人生で一番精神的にきつい2カ月(継続中)で、心が折れそうな日々の連続でした。

リリースで何が変わったか

これまではリリースという大きな目標があり、そこのお尻に向けて開発するのが最優先事項でした。現場からインプットを得て、フィードバックをもとに改善する繰り返しの中でサービスの品質を高めることが何よりも大事で、かつ60点でもいいからとにかく上市することをゴールに頑張ってきました。

そして、リリース後はプロダクト開発に加えて、追わないといけないものがもうひとつ増えるんです。そう、売上です。

1.いいサービスを作ること
2.売上を立てること

売上を立て、利益を出せなければ仲間にも適正な報酬金額を分配できないし、社会(もっというと一人ひとりの生産者)の役に立つこともできません。サービスの継続も不可能です。人の役に立たないものは事業とは呼べないと思っているので、役に立って価値に対してお金を頂く構造を作る、つまり売上を立てるということはとても大事なことです。

圧倒的に苦手な仕事、営業

じゃ、「営業頑張ろうぜ!」って話なんですけど、これが僕の場合はとにかくきつかったです。なぜかというと職業適性も経験も全然ないからです。

僕も人間なので当然、できないこと・苦手なことがたくさんあります。企画はできても開発はできません。こだわりが強いです。ルーチンワークが苦手です。キラキラしたインフルエンサーにもなれません。大人数の中でワイワイするのも苦手です。人見知りです。超夜型で、朝がすこぶる弱いです。空気や表情が読めないので、対面コミュニケーションも苦手です。平たくいってしまえば、マネジメントや営業には向かないタイプなんですよね。

そんなできないことだらけの人間なのですが、この中でも特に営業は鬼門でした。圧倒的に自信がなくて、世界中のありとあらゆる職種の中でもっとも適性のない仕事だと思って生きてきました。サラリーマン時代も営業の部署に異動させられたら会社をすぐに辞めようと思っていたくらいです。

起業家は営業からは絶対に逃げられない

でも僕らは正式には(協力してくれている人は他にもいますが)2人のチームです。エンジニアの開発工数が逼迫する状況で動ける人間はというと、僕以外にいないんですね笑

じゃ、社外から連れてこようと思うわけですが、これも実はサービスを立ち上げたばかりのシード期では選択しづらいんです。なぜなら給与原資がないからです。人を増やすような余力はありません。

くわえて、シード期は問い合わせの数がそこまで多くありません。往々にして起業家ひとりだけで十分捌ききれる量であることが多いんですよね。PMFしているかわからないのに、広告予算を投下するのも馬鹿げています。

また「どうすれば売れるのか」の勝ちパターンが確立しきれていないのも採用に踏み切りづらい理由でした。鉄板のセールストークや強みが整理できていないと採用された側も困ってしまうでしょうし、採用コストの回収にも時間がかかります。実績がないシード期は起業家自身の情熱や想いみたいなものが案外大事なんじゃないかという考えもありました。

辿り着いた結論は「事業が軌道に乗るまでは起業家自らがサービスを売っていくしかない」ということでした。身も蓋もないですが、サービスについて一番多くのことを知っているのは起業家である僕自身です。起業家として生きるには営業をやりきる覚悟が必要なんだと今更知りました。

腹を括る

プロダクトや目指している世界観には自信があったし、今更やめるつもりも毛頭なかったので、営業を自分1人でもやってやろうと腹を括りました。

最初にやったのは名刺情報のデジタル化でした。hubspotというCRMツールを入れて、そこに名刺データを集約・整理しました。リスト整理ができたあとはいよいよ電話です。シーフードショーで名刺交換した方、特にサービスに興味を持っていただいていた方を優先して電話をかけたり、メールを送ったりしていきました。

メールで済むならメールでいいんです。でもやってみたらほとんど返信こないんですよ…生産者さんにあまりメールを見る文化がないというのもあると思います。だから結局、電話になるんですね…

電話番号を押すだけ。なのに、手が震える

電話をかけるというのは、とてもシンプルなタスクです。でも、僕にとってはとんでもなく難しいタスクに感じました。今まで自分ひとりで営業をしたことは一度もありませんでしたし、何をどうすればいいのかまるでわかりません。思えば、これまでの社会人人生の中でも、そもそも電話をこんなに使うような仕事の仕方はしたことがありません。

だから電話番号を押す手が震えるんですよ。戦場にいくような感覚になってしまうんです。プルルルル、プルルルル、プルルルル…という待ち時間の音も嫌いでした。失礼なことを言ってしまわないか、何を話せばいいんだろうか、売り込みって思われたらもう電話出てもらえなくなるんじゃないか、忙しいとあしらわれるんじゃないか、とか毎度毎度ネガティブなことばかり考えてしまうんですよね、あの時間…

「要らない」と言われる恐怖

電話が繋がったら繋がったで、その後も営業に不慣れな自分にとっては大変でした。話し方や順番、流れなど全てに型がないので、常に手探りです。

興味を持ってくれている人にしか電話しないので、実際の通話内容は前向きなものが大半です。それでも連絡がつかなくなったり、冷たい対応をされたりすることもあります。

とりわけ何よりも怖かったのは、可能性があると思っていた人に断られることでした。「うちには必要ないですね」と言われるのがやっぱり辛い。自分たちで作ってきたサービスはもはや身体の一部というか子どもみたいなものです。サービスと自分の距離が近すぎて、「要らない」と言われると人生を否定されているかのような感覚になることもありました。

思えば、僕はサラリーマン時代、交渉の経験をほとんどしてきませんでした。だから交渉に失敗するという経験にも慣れていないんだと思います。

確率ではなく、行動量

でも当たり前ですけど、数を打たないと導入してくれるお客さんにも出会えません。勝率90%なのに10回しかアプローチしなかったら、成功できるのは9回だけです。勝率50%でも100回アプローチすれば、50回成功できます。

事業の立ち上げ時期において大事なのは勝率よりも、成功した回数です。つまり行動量。失敗した回数が増えないと成功した回数も増えません。

だから逃げたい気持ちも、断られるのが怖い気持ちも全部押し殺して、震える手で毎日電話番号を押し続けました。結果的には前向きに聞いてくださる方が多く、上司の方への説明資料を作って説明してくださる方がいたり、要望をExcelでわざわざ整理してくださる方がいたりして、それが救いでした。

月の半分が出張。育児参加が困難に

営業は電話だけではありません。対面営業だってあります。オンラインが苦手な方も多いですし、現場に行かないとわからないこともあります。信頼関係を築くためにも、対面で話をすることには意味があると思っています。

リリース後、僕の予定は月の半分くらいが出張になりました。東京の自宅からのアクセスはどこも悪く、生産現場にいくまでに平均9~10時間くらい必要でした。そうすると移動だけで往復1日ずつ潰れます。個別のアポ先の距離も離れているので、1日に入れられるアポの件数にも限界があります。

だからどうしても家を空ける期間が増えてきました。子どものことも、家事のことも、妻にほぼ全面的に任せるような形になり始めました…

数のプレッシャー

この電話と打ち合わせの山をこなすことで圧倒的に成果が積み上げることができていれば救いがあるのですが、素人のおぼつかない営業で最初からうまくいくほど現実は甘くありませんでした

売上も導入数も疑う余地のない明確な数として可視化されます。数で表現できるということは比べられるということです。目標、他社、シェアなど比較対象は様々ですが、いずれにせよ数値が期待通りなのかは一目でわかってしまいます。徐々に契約いただく方が増えてきているのは嬉しいのですが、どうしても毎月出ていく資金量にはまだまだ遠い状況で、目標に対しても売上の積み上がり方の初速は遅かったです(見立てが甘かった)。

営業をしてもしても、預金残高は減り続ける一方。残高を見るたびにこのままだと資金ショートするんじゃないかと毎回毎回不安になりました。結果を出しきれていない状況に焦る気持ちが募りました。

そこから「数字を積み上げないとヤバい」というヒリヒリ感が強くなり、日々の営業活動もさらに精神的に追い込まれるようになりました。

開発への負荷も異次元

きつかったのは僕だけじゃなくて、エンジニアも同じです。

60点でサービスを出しているので、足りない機能もたくさんあるし、もっとこうしたいという理想もあります。クラウドサービスのリリースはスタートであって、ゴールではありません。当然開発は続くし、要望や導入条件みたいなものもあるので、優先順位や要件もコロコロ変わってしまいます。ゆえにエンジニアにかかる負荷もかなり高くなりました。

uwotechはわずか2カ月の間に20個の新機能開発と改善をしましたが、こんなことができたのはエンジニアが驚異的に頑張ってくれたからです。

限界までヒリヒリする日々

この2カ月はずっとこんな感じで、とにかく毎日ヒリヒリしていました。肉体的にはまだ余裕があるはずなんですが、精神的な限界が先に来てしまって毎日燃え尽きるように寝ていました。わりとメンタルは強い人間だと思っているのですが、こんなに追い込まれるとは思っていませんでした。

大手企業のサラリーマンという安定はもうありません。年収も半分以下。プライドも捨てました。1日のほぼすべてが苦手な仕事で構成されるようになりました。子どもも妻に任せきり。ライフワークバランスは崩壊。減り続ける預金残高。めちゃくちゃです。とにかく自由なので、起業という選択肢を選んだこと自体には全く後悔していないんですけどね。

とはいえ、これでは経営者としても実力不足、営業としても三流、旦那や父親としても落第点です。僕が営業が苦手ということが、経営や家事・育児といった他領域のすべてに跳ね返ってきていることだけはわかります。出口の見えないトンネルの中にいるような気持ちです。今はとにかくできることは全部やってみようと思っています。

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