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タネじゃない!

桜も咲き始め、だんだん春らしくなってきました。先日、山奥の公園に行く機会があったのですが、花が咲き始め、カエルが冬眠から目覚めていました。そんな中、つくしが生えているのを発見したので、これを使ってちょっとした観察をしてみました。

オタマジャクシがいっぱいいました。

ツクシってどんな植物?

ご存知の方も多いと思いますが、「ツクシ」という植物は存在しません。ツクシとは、スギナEquisetum arvense)というシダ植物の胞子茎のことです。生物のことが詳しくない方にとっては、植物なのに何か専門用語がでてきたと思うかもしれません。
そんな生物が苦手な方に少し質問です。知っている植物を3つ挙げてみてください。桜、チューリップ、ユリなどでしょうか?おそらく、植物というか“”を思い浮かべたと思います。これらの植物は、子孫を残すために花を咲かせて、受粉して、種子を作る“種子植物”といいます。花粉症の方にとっては憎きスギやヒノキも、桜ほど綺麗ではありませんが、無骨な花を咲かせています。
一方、スギナは種子ではなく、胞子を作って、まわりに跳ばすことで子孫を残します。正確には、種子≠胞子なのですが、ツクシはスギナの胞子を作るためだけに作られた茎ということです。

表紙のツクシは先端が閉じている状態です。緑色の胞子が少しシャーレ内に落ちています。

観察方法

胞子の観察は、ツクシと顕微鏡(スライドガラスとカバーガラスも)を用意するだけですが、どんなツクシでもいいわけではありません。先端に緑色があるものか隙間のないものを選んでください。スカスカで緑色の綿?のようなものもないツクシは胞子をとばしたあとのものです。
緑色の胞子があるツクシは、しばらく放置しておくと、緑色の粉が落ちてきます。これをスライドガラスの上において、水を一滴落として、カバーガラスをかけて顕微鏡で観察するだけです。私は使用済みのペットボトルに胞子と水を混ぜた物を入れて、大人数でも一気に観察できるようにしています。この方法では長期保存できるのですが、教科書にあるような胞子が動く様子は観察できません。
顕微鏡で観察すると、緑色の粒がつまった球が見えます。この中の胞子がとびだすと動きます。透明の塊がありますが、これは胞子のかたまりを跳ばすためのものです。

400倍での顕微鏡写真

種じゃない?

先述しましたが、胞子は種子とは異なります。正確に説明するためには、減数分裂や配偶子という言葉を用いて解説する必要がありますが、ここでは割愛します。種子を作るには、おしべで作られた花粉めしべで作られた胚嚢細胞が接合しなければなりません。動物(ヒト)で説明すると、花粉=精子胚嚢細胞=卵子です。
一方、胞子は種子というより、花粉でもあり胚嚢細胞でもあります。種子は発芽すると新たな植物が生まれますが、胞子が発芽して生まれるのは「前葉体」です。この前葉体は成長すると、体の中に“造精器”と“造卵器”が作られます。名前の通り、精子と卵子を作ります。ここでできた精子と卵子が受精して新たなシダ植物となります。言い換えれば、種子植物の花がシダ植物の前葉体になります(花=前葉体)。
もう少し詳しく違いを説明すると、生物の細胞の中には染色体のセットヒトは23本で1セットが2組入っています。これは、父親と母親から1セットずつ受け取っているためです。生物は次の子孫を残すために花粉や卵子のような生殖細胞を作りますが、この細胞には染色体をあえて1セットしかいれません。染色体のセット数も種子と胞子で異なります。種子を作る細胞は染色体を2セット持っていますが、胞子を作る細胞は染色体を1セットしか持っていません。胞子は、種子ではなく、花粉や胚嚢細胞に近いと言えます

ペットボトルに入れた胞子と3日間放ったらかしにしていたら落ちていた胞子の山

研究にするには?

この記事のテーマは、自由研究のネタにするというものがあります。ツクシの胞子をみただけでは、研究にはなりません。私も実験や観察をしたあと、課題としてレポートを提出させますが、特定のものを観察しただけでは、考察がなかなか書けないようです。ツクシの胞子の観察でよい考察を書く最も簡単な方法は、他のシダ植物の胞子と比較することです。観葉植物にもシダ植物のものがありますので、インテリアにこだわるお家だったら身近にあるかもしれません。

また、先述しましたが胞子=花粉(もしくは胚嚢細胞)です。植物の花粉や胞子は、普段移動できない植物が生息域を増やすことのできる数少ない手段の1つです。花粉は、風に飛ばされやすいような形や昆虫や動物に付着しやすい形など多様な形になっています。胞子はどうでしょうか?形を比較して、なぜそのような形になっているのか調べてみるのも良いかもしれません

下記で紹介している顕微鏡で胞子を観察してみました。倍率は、左100倍で右が400倍です。

1つ忘れている

この胞子の観察ですが、顕微鏡が必要ですが、家に光学顕微鏡があるという家は少ないと思います。日本には、NikonやOLYMPUSなど世界的に有名な顕微鏡を作っているメーカーがありますが、これらの顕微鏡は非常に高価で、子供の自由研究や個人の趣味用に購入するにはもったいないです。最近、Amazonにてかなり安価な顕微鏡があり、ずっと気になっていたので購入してみました。この顕微鏡を使用してあるものを観察してみたので、近いうちに紹介しようと思います。一言で言えば、とても使い勝手が良いです。安くはないのですが、コストパフォーマンスはよいです。問題としては、海外(中国)の製品なので、博打(問題なければコストパフォーマンスがよいが、壊れたら直してもらえない)になることです。

TwitterとInstagramで寄生虫マラソンとやらを始めてみました。よろしければご覧ください。


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