firoyuki

広島県福山市出身。 旅をしている。 それ以外の生態は未だ謎に包まれている。 人類…

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広島県福山市出身。 旅をしている。 それ以外の生態は未だ謎に包まれている。 人類最後の希望。

マガジン

  • 物語は旅をする

    誰かが旅をする物語。いや違う。この物語は、それそのものが旅をしているんだと気がついた。言わずもがな、IT革命は、私たちの生活を豊かにしてくれた。今では、インターネットが無い世の中など想像もつかないだろう。そしてそれは、何も私たち人間だけに限った話ではない。その昔、まだ物語が、完結して初めてリリースされるのが当たり前だった時代。出来上がった物語には、その時点で既に最終地点までのレールが敷かれていた。読者という名の乗客を乗せたその列車は、終着駅へ向かって走ることだけを考えていればよかった。それ以下になることもなければ、それ以上を期待されるということもない。しかし今、インターネットの台頭により、その状況は一変した。良くも悪くも、列車のハンドルを握る車掌は、自らの意志を持ち、レールの有無に制約を受けることなく進む道を自由に選択できるようになった。そうなると... 続きは「まえがき」で→

最近の記事

首都プノンペンへ

携帯電話のバイブレーションで目が覚めた。朝七時だった。旅を始めてから、音無しのアラームでも起きることができるようになった。相部屋の宿泊者に対する配慮だ。しかし結局、部屋の灯りをつける時に、隣で眠る大学院生を起こしてしまった。 「もう出るんですか」 眠たそうに起き上がりながら大学院生が言う。八時間もかかるし、できるだけ早く向こうに着いてゆっくりしたいんだと応える。身支度を済ませ部屋を出る。大学院生は、僕が準備している間もずっと起きて待っていてくれ、外まで見送りに出てきてくれた。

    • トンレサップ湖

      日を追うごとにゲストハウスの宿泊客が増え始めた。僕のいるドミトリーにも一人大学院生が入って来た。彼は、大学生活最後となる今年、東南アジア周遊を思い立ち一人で各地を周っているのだと言う。僕の大学時代の事を考えると頭が下がった。僕の大学時代など、友達やその時付き合っていた彼女と、その日その時をいかに楽しむかということに必死で、東南アジアのことなどは愚か、日本から出るという発想自体、頭の片隅にもなかったはずだ。 他にも、まだ十九歳で同じく東南アジアを周っている青年や、僕と同じか少し

      • シェムリアップ延泊

        宿のチェックアウトの日を迎えた。このままバスで首都のプノンペンまで向かっても良かったが、シェムリアップを離れるには、何となくまだやり残していることがあるように感じた。もう少し観光じみたこともしておきたいという気持ちもあった。もう何日かシェムリアップに滞在することにしたが、気分転換のために、宿は別のところに変えてみようと思った。次の宿も、今の宿から歩いて五分程度と目と鼻の先にある日本人宿にすることにした。 夕方頃、新しい宿に到着した。門構えの入口をくぐると、庭にテラスのような

        • アンコール・ワット

          シェムリアップは居心地が良かった。都会過ぎず田舎過ぎない、その中途半端さが良かった。住むならこういうところが自分の性には合っているような気がしたが、気候的にはもう少し涼しい方が良かった。気温は三十度を越す日が毎日のように続き、そうかと思えば、時折、プールの水をひっくり返したようなスコールが降り注いだ。スコールがおさまった後は決まって、じっとりとした生暖かい空気が僕を少しだけ憂鬱にさせた。 暑さのせいというのもあったかもしれない。ついついだらだらと一日を過ごしてしまい、気がつ

        首都プノンペンへ

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        • 物語は旅をする
          9本

        記事

          シェムリアップ

          17時頃シェムリアップに到着した。バスの中では快適に過ごすことができた。本を読んだり音楽を聴いたりしながら時間を潰した。一番後ろの席に座っていたので、降りる時に、何の癖かわからないが忘れ物のチェックをしていると、イヤホンの忘れ物があったので、降りてそこに座っていた人に渡してあげた。 バスから降りるとすぐに、トゥクトゥクのドライバーが近づいてきたが、僕自身が宿の場所を把握していなかったので、行き先を伝えることができない。とりあえずWi-Fiを繋ぐことができる場所に行かないといけ

          シェムリアップ

          国境を越える

          暑さで目を覚ました。昨晩、寒気がしたので、長袖のパーカーを着込み、部屋の空調を止めてから寝たせいだ。朝8時だった。計算すると11時間も眠っていたことになるが、疲れはほとんど取れた気がしなかった。その代わり、体調は良くなっていた。これは大体何にでも効くからと言って買ってもらった葛根湯。何にでも効くかどうかは置いておいて、今回は助けられた。窓からは陽の光が差し込み、唸るような町の喧騒が聞こえて来た。今日も長い1日になりそうな予感がした。 チェックアウトして町を歩く。セブンイレブ

          国境を越える

          国境の町

          駅から出ると、すぐに雨が降り始めた。考えようによっては、歓迎されているように受け取れなくもない、比較的乾いた気持ちの良い雨だった。 ↑扇風機を担いで列車から降りて来たおばちゃん。 宿の目星は付けていたが、インターネットで予約できそうになかったので、行ったとこ勝負を決め込んでいた。空室がなければ別の宿を探せば良い、それだけのことだ。歩いているとすぐに、トゥクトゥクのドライバーが蟻のように群がって来る。雨は降っていたが、傘を持っていたのと、歩いて行けなくはない距離だったので、

          国境の町

          まえがき

          誰かが旅をする物語。いや違う。この物語は、それそのものが旅をしているんだと気がついた。言わずもがな、IT革命は、私たちの生活を豊かにしてくれた。今では、インターネットが無い世の中など想像もつかないだろう。そしてそれは、何も私たち人間だけに限った話ではない。その昔、まだ物語が、完結して初めてリリースされるのが当たり前だった時代。出来上がった物語には、その時点で既に最終地点までのレールが敷かれていた。読者という名の乗客を乗せたその列車は、終着駅へ向かって走ることだけを考えていれば

          まえがき

          国境の町まで

          次の予防接種までは、あと1ヶ月あった。さすがに、あと1ヶ月この国に居続けるには、僕が予定している旅程はあまりにも短か過ぎた。 カンボジアへ行こうと思った。特に理由はなかったと思う。同じくタイと国境を分かつ国ミャンマーと悩んだ。ミャンマーは、10/1からビザ取得が必要なくなるという、ちょうど日本人旅行者にとっては節目の時期を迎えたばかり。10月に入って間もない今、ビザ無しで行くのには少しリスクがあるかもしれないと思った。1ヶ月のうちの後半でも遅くはない。 バンコクからアンコー

          国境の町まで