整理解雇の4要件(Ⅳ) ~欠陥だらけの4要件~

■雇用の流動性を妨げてきた『整理解雇4要件』

かつては「日本型雇用」が当たり前であったが、時代の流れとともに、正規雇用や終身雇用といった「日本型雇用」に欠陥が出てきた。

正規雇用は、『整理解雇の4要件』によって容易に解雇できないので、一度雇うと企業がずっと彼らを抱え込まなければならなくなる。
これが「雇用の流動性」を妨げてきた最大の原因であり、「終身雇用」という概念がそれに拍車を掛けてきた。
企業経営にとって、これこそが不況時(仕事・収益・利益の減少)における最大のリスク(人件費が重く圧し掛かる)になっている。


■労働生産性の向上を妨げてきた『整理解雇4要件』

「日本型雇用」を確立させた『整理解雇の4要件』は、「労働生産性」も下げてきた。

「労働生産性」とは、労働者一人あたりまたは一時間あたりに生産できる成果を数値化したもので、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」に分かれる。

(1)物的労働生産性……産出された物の生産量(個数や重量)
・一人あたりの労働生産性=生産量÷労働者数
・時間あたりの労働生産性=生産量÷(労働者数×労働時間)

(2)付加価値労働生産性……産出された物の付加価値(粗利)
・一人あたりの労働生産性=付加価値額÷労働者数
・時間あたりの労働生産性=付加価値額÷(労働者数×労働時間)
 ※付加価値額はGDPに置き換えて考えてもよい

「労働生産性」を高めるためには、
・分母である「労働者数」や「労働時間」を縮小する。
・分子である「生産量」や「付加価値額」を拡大する。

そして、それらを達成するには、労働市場における雇用の流動化が必要条件になる事は間違いなく、生産性の低い所から生産性の高い所に人材・資源・お金が移っていかなければならない。そういった新陳代謝が起きなければ生産性は向上していかない。


■賃金アップを妨げてきた『整理解雇の4要件』

日本には潜在的な技術はあるのに、『整理解雇の4要件』みたいな規制がたくさんあるために、「雇用の流動性」を妨げられ、「労働生産性」は高まらない。

それが、労働者の賃金が上がらない原因にもなった。

本来、賃金は「労働生産性」に対して支払われるもの。
だが現状は、「労働生産性」という"付加価値"に対してではなく、「正規雇用」という"身分"や、拘束時間数(定時+残業)に対して、支払われている。


■世界時価総額トップ50

平成元年と平成30年の世界時価総額トップ50を見比べてみれば顕著である。

◎平成元年
日本企業が32社もランクインしていた。
自動車業界や金融業界が上位を占めていた。

◎平成30年
日本企業はトヨタ自動車1社だけ。
上位は、米国ウォール街の投資銀行やIT企業(BigTech=GAFAM)が大半で、そこに中国のIT企業(BATH)が食い込んでいる。


この30年間で、特にIT企業が台頭してきたわけだが、なぜ日本はこんなにも差をつけられてしまったのか、そこんところを考える必要はあると思う。

全ての根本的原因は『整理解雇4要件』にあり、労働契約法第16条にある。


労働生産性を向上させ、賃金を上げていくには、「働き方改革」への取り組みをより一層強く推し進めていくべきだろう。

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