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アンデルセンの目でみてみよう。-第6夕講

お話は早い展開で進みます笑。

はるとがデンマークにやってきて、
早6年。

なかなか新しい生活、文化に
慣れない日々もありましたが、
はるとは確実に成長しています。

進級報告がてら、
Chibaさんのところにはるとが
やってきたようですよ。


第6夕講 「教育格差はありえない」学校教育


高等部(7、8,9年生)に
上がってきたはると君の学校生活。

幼稚園、小学校、そして、中学校、高校ともなると
入学試験勉強が主体になる日本と違って
デンマークでは教育の義務期間中に入学試験も、
毎度の中間試験も、期末試験などもありません。

はると:Chibaさん、こんにちは!
いよいよ高等学部に進級です。

Chiba:それは、それは。
それではこの教育の義務期間中、
どれだけテストがあったか
聞いてみてよいですか?

(デンマークでいう「テスト」とは生徒の理解度と教師の教授方法が適切で結果がきちんと出ているかを確認するためのものです)

はると:
国語は2年、4年、6年、8年生(中2)の時。
算数は3年と6年生の時だけ。

英語とドイツ語は7年生(中1)。
地理、生物、物理は8年生(中2)の時。

そして各科目の卒業試験が
9年生の時にあるんです。

この試験には個々に点数が付いてきますが、
もちろん、順位貼り出し、などは
決してないですよ笑


Chiba:やはりね。
日本でいえば中1に当たる
7年生の時の話だけれど、
ドイツ語を学んでいるんだ。

はると:うん、必修ではないけど
高等学校へ進学希望する者は
ドイツ語を取らなければならないんです。

Chiba:じゃぁはるとは、
高等学校をめざしているのかな?

はると:そうです。医療関係に興味があって。
高等学校に行かないと大学の医学部に入れないんですよね。

Chiba:へぇ、医療関係、お医者さんね。どうして?

はると:いや、実は、お母さんの体調がずっと良くないんですよ。
大きな病気ではないみたいですけど。

Chiba:そう、それは大変だね。
医学部に入る前の問題だ。ホームドクターにはかかっているの?

はると:今まで問診だけだったから、もっと精密検査が必要なんです。

Chiba:すると、州の専門病院に検診に行く必要があるね。

はると:ホームドクターには馴染みがあるんですが、専門病院は初めてで・・・デンマークの医療制度ってどうなっているんですか?

Chiba:簡単、簡単。
そこは頭を使わないでいいよ。
ホームドクターが紹介状を書いてくれます。
そうすると、州の専門病院から
検査日程の連絡がきて、
精密検査を受けられる。

その結果はホームドクターに送られ、
お母さんの状況を知ることができます。

そして、その後については
ホームドクターが
対応してくれるのでストレスフリーですよ!

はると:そこまで全部してくれるんですね!
お母さん、デンマーク語話せないから
僕があっちこっち手配しなければ
いけないと思っていました。

Chiba:だって、
イエローカード(医療健康保健証)
を持っているでしょ?
まずは健康管理が大変だろうけれどね。

うーん、しかし、
医学部に目標を置くとはすごいね。
そうなると、日頃の勉強の成績が
大切になってくるね。
通信簿(成績表)って日本にはあるけど、
デンマークは?

はると;成績表はないんです。
年2回保護者と一緒に担任の先生と
副担任の先生と面接があり、
その場で勉強の理解度を伝えてもらうくらいかな。

Chiba:今時は、高等学校への進学は
どうやって決まっているの?
デンマークには進学先ごとの入学試験は
相変わらずないよね?


はると:ないです笑
日頃の理解度で、先生が行けるよ、
って教えてくれます。

ちなみに担任の先生は
週の授業時間が
一番多い国語の先生、
次に多い数学の先生が副担任です。 

担任、副担任と面接のときには、
自分が希望する他の教科の先生を
指名して同席してもらうことも出来ます。

例えば英語だとか生物だとか
別の科目を受け持っている先生です。

Chiba:それは味方を手に入れるってこと?

はると:そうです!確かに担任・副担任は
接する時間は多いけれど、別の角度から
僕のことを見てくれる先生がいるのは
心強いですよ。

デンマークの高等学校は
ほとんどが国立で学校差がないんです。
だから、入学試験がない代わりに
日頃の勉強・態度がモノをいう・・・

Chiba:そうそう、私立高校は少ないよね。
デンマークには178の高等学校があり、
その内24校が私立高校。

はると:私立高校でもシュタイナーの高校を
除いては卒業時は国の統一試験
Student Exam.に合格しないと
高卒とはみなされません。

僕も色々調べたんですけど、
私立と公立の違いは、
音楽、体育、勉強など
それぞれの学校の特色があります。

Chiba:デンマークは、
学びの場は個人の自由ではありますが、
高卒資格レベルは国が統制しているのだ、
と思ってください。

ここで日本の高卒、という基準は
疑問をもたざるをえないですよね。

はるとはどう?入れそうなのかな?
高校に関しては、先生からの内申書がもらえないとね。

はると:うーん、確かに。

Chiba:卒業試験内容も、口頭試問も
他の学校の先生が行うのだから、
ズルはできるはずがないんですよ。

はると:なるほど、日本のようにあの高校がだめだった時には別の高校などということは許されないんですよね。

Chiba:入学試験が無いので9年生までに
担任の先生が判断してくれるのです。
君は高等学校の教育についていけるから
進学大丈夫だというように内申書に書いてくれるんだ。

この許可(内申書)をもらった生徒だけ高校へ進学できるんだ。

はると:うわぁ、欲しいなぁ。
もし取れなかったらどうしよう・・・

Chiba:先生に聞いてみるといいよ。
高校を目指さなくてもいい、とするなら、
職業別専門学校を選び、
高校と同じ3年間でいろいろな
職業の資格を取れるのだから。

はると:いや、僕は高校へ行くんだ!

Chiba:(笑)目指すのは自由だよ。


編集後記 つれづれなるままに教育格差を語る


Sue:今回の高校進学までに渡って振り返ると、やっぱりデンマークって教育の義務(義務教育)期間中は、極力「競争」をさせないようにしていますよね。個々の伸び代、個々の将来をどう作るか、どう道を見つけるか、に一番時間を割いているというか。

Chiba:高校進学率は平均55%を超えることってほぼないからね。
日本に置き換えて、わかりやすく言えば、中学卒業試験が全国統一基準で行われて、その先の高校に進める人数を国がしっかり管理しているということ。高校も全国基準でその品質が同一化されている。
だから、●●高校に入ってすごい!とか、そういう行った高校によって生み出される「偏差値格差」はデンマークにはあり得ないわけです。

Sue:そして、高校に行けるから「優等生」高校に行けないから「劣等生」という格差もない、ということですよね。

Chiba:そういう教育をしていないからですよ。先生が「あの子たちは・・・」「あなたたちは・・・」なんて成績を基準にラベリング、順位付するような発言をしたら、それこそ、個人の価値観、尊重を無視していることそのものでしょう。

教育において格差がない、というのは「教育を受けられる・受けられない」格差がないのは当たり前のことで、その上で「人間格差」を生まない教育が最も重要なように思います。

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