変化の激しい社会に必要な、「感性」の意味を考えてみる
前回「感性インテリジェンス」にまつわる論文にいて紹介しました。
そこでは感性そのものについて書いていなかったので、今回少し深掘りしていこうと思います。
感性を育てよう、
感性が鋭い人になるには、
感性教育、
感性思考、
感性のみえる化、
感性デザイン、
感性マーケティング、
デジタル化、効率化が叫ばれている世の中で、コモディティー化から脱却するために必要と叫ばれている感性。よく耳にしている人が多いことと思います。
特にビジネス・教育の分野で多く使われており、感性価値をAI技術で見える化する企業、感性教育を教育理念に掲げる学校が増えてきています。売れるデザイン、ビジネスを成功させるために必要な力、将来成功するために必要な力など言われています。
ビジネス・教育・美学の場面に限らず、感性という言葉はとても広くいろんな場面で使われています。ちなみにスポーツ分野においては、野球選手の大谷選手が16歳の時に記した目標達成シートの「人間性」の欄には「感性」とあります。
このように広くよく使われているけど、「感性」という言葉は何を意味しているのでしょうか。
英語ではSensibilityと訳されることが多いのですが、どうも意味を読んでもしっくりきません。
またフランス語でもSensibilitéという言葉がそれに当たりますが、「感受性」という言葉に近いです。
私の勉強してきたビジネス、教育、美学の分野で感性がどう捉えているのか調べてみました。
以上から考えると英語のSensitivityと感性の意味が異なることがわかると思います。
感性は英語に訳すことが難しいため、英語の論文でもKanseiと表記されることがあります。個人的には日本固有のKanseiの概念を海外でも広めていきたいと思っています。
感性の定義には情景や風景を自分の体験や思い出と結びつけることなど日本人のはっきりとさせないことを好む心性が表れていると思います。
美学者の佐々木健一さんは「そこはかとなき」という言葉を近く的感性の原型と見ています。
「情景と心を繋いでいるのが「そこはかとなき」(中略) その心が、単に激しい思いというのではなく、独特のものであり、それを言葉にしたいのだが、そうしようとすればするほど捉えがたくなる、」
感性工学の検証、感性ビジネス、感性教育の研究に携わった経験、上記を含めて私なりに現状の感性を定義してみました。
・感性とは時間・人間・空間を行き来するように存在し、意味合いが変わってくるもの
・感性は情景と心の動きを結びつけるものなので、人によって変わるもの
このように定義をしましたが、10年後には時代と共にこの定義も変わっているかもしれません。人の情緒により変わってくるものなのでそれくらいのゆるさでいいのかなと思います。だからこそ、それぞれの違いを受け入れていく、変化に対して柔軟な考えを身につけることができる。その姿勢がどの分野においても変化に対応しながら、新しい発想をする余裕が生まれてくるのではないでしょうか。正解が一つだけではない世の中でしなやかなに生きていくための新しい物差しの一つに感性がなると考えています。
感性を使った企業研修にご興味がある方はぜひ私の修士論文を読んでいただけると幸いです。https://aaltodoc.aalto.fi/handle/123456789/118251
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