平家(ひらや)の家 あとがき


なんとかやっと最終話まで描くことができて、ほっとしています。

短編とは違い、一年位住んだ事故物件の話なので初めてnoteで漫画を描くようになった
私の中ではなかなかの重労働でした 笑

大学受験をする少し前の高校2年の時に両親が離婚して、私はアパートで一人暮らしを
していました。
定時制高校は4年間あるので、1年早く大学生になっていた親友から誘われて
この平家の家に住むことになり、夜は高校、バイト、予備校、初めてちゃんとお付き合いすることになった彼、そして心霊現象の数々、大学受験と入学と、今思えばずいぶん充実していた毎日だったな!と思います 笑

noteで漫画を描くようになったのは、この「平家(ひらや)の家」が描きたかったからです。
自己満足にすぎないのでしょうが、この体験を残しておきたかったのです。
それと、何度か個展をやっていた油絵の製作ができなくなっていたからというのもあります。
会社でリストラの対象になり、生活そのものが危ぶまれ、
その中で乳がんにもなりました。
私はメンタル的にすっかり弱くなり、絵を描く元気がなくなってしまったのです。
そんな中、机に突っ伏しても描ける線画のようなもの、、そうだ、漫画だったら
ストーリーや画面展開なんかを考えて、日々の嫌なことや、モヤモヤから解放されるんじゃないか…と思ったのです。
乳がんの手術で入院した時、私はベットでこの「平家の家」を描いていました。
漫画を描いていなかったら、きっと嫌なことばかり考えていたんじゃないかって
思います。
まさか、心霊体験が自分を救う日がくるなんて、思ってもみませんでした 笑

手術も無事終わり、お陰様で今のところ再発はありません。
会社の方も、結局人手不足でリストラの話はなくなりました。

また油絵に復帰できそうな気力も出てきました…

この「平家(ひらや)の家」最終話にあたり、物凄く迷っていたことがあります。
それは「伏線回収が全然できとらんじゃないか!」ということです 

最後のシーンが本当に困って、迷いました。
正直、実話ではないけれど、一家心中とか惨殺事件とか、そんなことがあったことに
ならないと、あんなにいろんな霊たちが出てくる理由がわからず、
ストーリーとしては「?」ですよね。。

実話怪談の悩ましさなんですけど、理由なんて私もわからないんです。。
漫画としての完成度は低いけど、元々低いのだから、それよりもやっぱりあったことを
なるべく忠実に描こうと思いました。

最後に出てきたjazz BARのマスターが不動産屋で聞いた話によると、あそこは昔
沼地だったそうです。
やけに庭が広かったり、周りに住宅が少なかったりしたのはそのせいかとも思いますし
幽霊達も、そんな土地柄に魅力を感じていたのかもしれませんね。

それから、漫画では触れなかったのですが、大家さんに退去したい旨を電話した時に
ちょっとギョッとした事を言われました。
大家さんは横浜に住んでいる方で、電話で話した感じだと
とても上品な感じのご高齢の女性でした。
「あら、もう引っ越しちゃう?  残念だわ…   皆さんすぐ出ちゃうのよね。。」
と言った後、「ねえ…    宜しかったら、その家買わない?」と言い出しました。
びっくりして、学生なのでそんなお金はありませんよって笑いながらかえしたら
「400万でどうかしら?」って仰ったのです!
今では土地の値段が上がっているエリアなので、あの時買っておけばって
たまに思い出しますけど 
当時はそれでも大金に思えて、丁重にお断りしました。

10年くらいしてから、心霊好きの友達とその物件がどうなったのか気になって
夜、車に乗って見に行ったことがありました。
あれ、たしかこの辺だったんだけどと、車でウロウロしていても見つかりません。
なんのことはない、平家は取り壊されていて、そこには2階建てのアパートが建てられていました。
私の勝手な主観と深夜だからというのもありますが、じっくり視ていると
なんだかどよんとした空気が漂っていて、とても怖かったです。
きっと今でも、色んなものの気配がアパートの中に漂っているのではないかと思ってしまった夜でした。。

事故物件……           今では皆が知って使っている言葉になりました。
ネットで少し調べたら、この部屋でどんなことがおきたのかまで、わかるようにもなりました。

私がこの平家の家を出てすぐ、時代は昭和から平成へと変化しました。

あの古くて薄暗くて埃っぽい、昭和の香りのする空間の中でみた禍々しい存在…
なんだか、あの時代にしかみられなかった幽霊の在り方みたいなものがあったような気がして、いまではそれすら貴重なもののように感じています。

時代が代わった今、彼らはどんな姿になっているんでしょうか…

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