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『カム』メンバーが選ぶ、2023年の1冊

年の瀬が近づいてきましたね。
『カム』では毎年の恒例行事として、メンバーそれぞれが選んだ「今年読んで一番良かった本」を発表し合っています。

それぞれの今年の一冊、以下の通りになりました。
(メンバーの名前五十音順です)

①あぶらみ
『ビューティフルからビューティフルへ』(日比野コレコ/河出書房新社)

「第59回文藝賞受賞作。バーッと言葉が流れていく感じが面白いなぁと」


②後藤高志
『ふしぎな部落問題』 (角岡 伸彦/ちくま新書)

「今年通うようになった本屋さんで、いろんな本や人、価値観との出会いがあったなーと思っていて、本自体以外の出会いも含め、今年やこれからの自分の来し方を象徴する一冊なのかなと思いました」


③佐伯一果
『海』(小川洋子/新潮文庫)

「表題作の「海」では、婚約者の家で彼女の(小さな)弟と同じ部屋で眠ることになった僕が、(小さな)弟の不思議な話に引き込まれていきます。単なる婚約者の弟としてでなく、会話を通してその人自身を知っていく、その過程がとても良かったです。短編集ですが、長編のような深みのあるお話が詰め込まれていました」


④釈行成
『半暮刻』(月村了衛/双葉社)
「恥ずかしながら作者のお名前も知らなかったのですが、カムの外部合評会の帰りに新大阪駅で何気なく立ち読みしてみたら、あっという間に引き込まれてしまいました」

⑤田中一葉
『プリズム』(ソン・ウォンピョン/祥伝社)
「登場人物、男女4名の視点で描かれる恋愛小説。人との関係はほんの少しの言動で近しくなったり、遠く離れてしまうことになってしまう。 人との距離感はむずかしい……。でも惹かれてしまう。相反する気持ちの揺らぎをダイレクトに感じられる小説でした」


⑥中山文子
『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)

「少女たちがスキミング詐欺に手を染めるクライムサスペンス。主な舞台が90年代~2000年代初頭と自分の若い頃と重なりました(現在地はコロナ禍の2020年代初頭)。 気ままな両親に翻弄され、貧しさに押しつぶされてしまいそうだった気弱な主人公・花が、母親のように接してくれる黄美子さん、友だちの蘭、桃子との疑似家族状態を守ろうとするうちに、犯罪や暴力すら辞さない人間へと変貌していきスリリングです。「責任」とか「罪」について絶妙なバランスで描かれているとも思いました」


⑦早高叶
「奇病庭園」(川野芽生/文藝春秋)
「最近もっとも推している作家さんの最新作。異世界を舞台にした純度の高い幻想小説ですが、人間について、社会について、普遍的なテーマを扱っているので、現代に生きる自分たちに引きつけて読むことができます。そしてとにかく文章が美しく、陶然となってしまいます」


⑧宮内はと子
『世界でいちばん透き通った物語』(杉井光/新潮社)

「小説の一番最後に、これっ、すっごー!って誰もが唸ります。 もちろん 電子書籍化は不可能です!  ネタバレするので詳しく言えませんが、ようこの時代にこんなん考えたな~ってなります。 挑戦的な姿勢や小説の実験的策略がにくすぎる一作です!」


⑨宮城芳典
『発達障害と少年犯罪 』(田淵俊彦/新潮新書)

「発達障害と罪を犯すことにどう関係があるのか。周囲はどう接し、その因果を断ち切るには何を理解しておく必要があるのかが書かれています」


⑩山田すずめ(うえのそら初)
『お勝手のあん』(柴田よしき/ハルキ文庫)

「シリーズ物です。幕末、宿屋のお勝手で料理メインで働く女性の話。日常を送りつつ、時代の変化が微妙に絡んでくるのが好きです」


⑪山本一男
『M/Tと森のフシギの物語 』(大江健三郎/岩波文庫)

「大江健三郎が亡くなったのをきっかけに読みました。四国の山が舞台の不思議な話、お伽噺?です。私の郷里である四国の山に対する思いに、変化が起こりました」


以上になります。
毎年思うのですが、メンバーそれぞれ、個性あふれる選書になりました。
ちなみに2022年の「今年の1冊」はこちら。

来年もいろいろな本を読み合っていきたいと思います。
さて2024年の予定ですが……

まず年明け、1月14日(日)に開催される文学フリマ京都。
『カム』としては出店しませんが、早高叶が個人で出店します。
最新刊『カム』vol.21、『カム』メンバーが参加しているアンソロジー『もし今、〇〇に戻れたら』を販売しますので、もし良かったらお立ち寄りください。

また、少し先の話ですが、9月8日(日)には文学フリマ大阪に出店します。
(その時には『カム』vol.22も完成しているはず!)

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
良い年をお迎えください。
(了)

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