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とあるマンション管理組合がEV充電器を導入する物語 第20話

これは、とあるマンション管理組合がEV充電器を導入するまでの、まちがいだらけの物語です。
なお、この物語はフィクションであり、実在する個人や団体とは一切関係ありません。あくまでエンタメの範囲でお楽しみください。
物語のプロローグはこちら。
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相沢愛子は、怒りに燃えていた。トアールマンション管理組合のA号棟の理事として。
(ちゃんとA号棟のみなさんのお話を聞いてきたのに!さっき、ちゃんとメモを見て、部屋番号を報告したのに!それに、A号棟だけじゃないわ。F号棟だけなんて、そんな不公平を許しちゃいけないわ。他のすべての棟の人たちの権利を守れるのは、私しかいない!)
そして、勝手にF号棟以外の区分所有者の代表になった気分になっていた。もちろん、そんなことは全くないのだが。相沢は、自分でも頭に血が上っているのが分かった。
(これ、また血圧が上がっちゃうわ。でも、そんなことを気にしてる場合じゃない!だって、先月の定例会議でみんなで決めたのに、全然違うことを言ってるんだもの。そんな横暴を許したらいけないわ!)

有田は驚きのあまり、しばらくポカンと口を開けてしまった。
「あ、あの。相沢さん。」
「はい?!」
「F号棟は先月、不具合の報告をされたので、修繕のお見積りを作るという、お話でしたよね?」
「はぁ、そうですけど?」
「それで、今、そのお見積りについて、お話をしているのですが。えっと、何か、問題がありましたでしょうか?」
「だ、か、ら!さっきから言ってるじゃないですか!先月、みんなで調べてから、一斉に検討するっていう話になってましたよね?」
「いや、それは、F号棟以外のお話で」
「そんなこと、聞いてませんよ、私は。みんなの見積りが出そろったら、全体で修繕するか、小さい修繕にするか検討するって言う話だったじゃないですか。そうですよね?みなさん!」

他の理事たちも、相沢の剣幕におされてか、驚いた顔をしつつも、お互いに様子を探りながら、あいまいにうなずいているとも、いぶかしんでいるとも受け取れる首の動きをしていた。
「え、みなさん、そういうご認識でしたか?」
有田が見回したが、反応がよくわからない。
「えっと、では、皆さんにお聞きします。先月ご依頼いただいたF号棟の修理の是非については、来月に、他の棟の修理見積が出そろった段階で一斉に検討する、ということ?で、よろしいでしょうか?」
理事たちは、お互いの出方をうかがうように、あちこちに視線を動かしていた。

「あぁ、もう、いいですよ、来月で!いちいちそんなに怒ることでもないじゃないか。」
F号棟の理事である樋口は、半分怒ったような口調で言った。
「まぁ、樋口さんがそうおっしゃるのなら・・・」
「それより、イーブイ。電気自動車っての?あれの充電器を付けてほしいっていう希望が出てるんですよ。」
「はいぃ?」
急な話題転換に、思わず大きな声が出た有田であった。

☞マンション管理組合理事会のチェックポイント
・議事録は、簡潔明瞭に。疑問があったら質問しましょう。
会議で、いや、普通に、人と話していて、大声で感情的になるのはお勧めできません。議論と喧嘩は別物です。お互いにとってより良い結果にたどりつけるように意識することが大事です。落としどころを見極めましょう。

つづきは、こちらから >>> 第21話を読む

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