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スノーデン

映画を見た。
オリバー・ストーン監督の『スノーデン』だ。
元NSA職員のエドワード・スノーデン氏が政府による市民の監視を英紙ガーディアンを通じて暴露した、いわゆる「スノーデン事件」を詳細に描いたものだ。

あらすじ

香港のホテルでジャーナリストのインタビューに答える場面と疑念をつのらせ告発に至るまでの過程が交互に描かれていく。
時は2004年。開始早々、訓練中に足を骨折してしまい軍を除隊してしまう。その後DELLやコンサル会社へ籍を移し、疑念を募らせつつも技術職員や契約スタッフとしてCIA・NSAで任務をこなしていく。色々ありつつも終盤、インタビューを受ける場面とNSAを抜け出しジャーナリストと接触するシーンが重なり、自らの告発がメディアに掲載されたことを確認後ロシアに向けて移動。そして最後にモスクワのイベントで氏がオンライン出演するシーンがあるのだがそこで役者から本人に切り替わりエンドロール。

感想

wikipediaを見ると「スノーデン事件」が2013年、映画の公開が2016年らしい。月日の流れを感じる。氏が諜報機関で勤務しつつも政府に疑念をつのらせていく様子を、恋人との関係が不安定になっていくさまを通して描いているように感じた。この辺は多分に脚色があるのかもしれない。しかしそうだとしても全体を通してまとまりがあり緩急がありそして何より面白い。映像も美しい。2時間ほどの映画なのだがあっという間に感じた。

世界は変わったのだろうか?

スノーデン氏は告発の理由をお金や名声のためではなく政府による監視の事実を市民に公表し議論の材料にしてもらうためだと主張する。情報が公開され政府に疑問を持ち説明を求め議論をするのがアメリカの基本であり、それが自身が安定した生活・人生を手放した理由なのだと。

しかし世界は変わったのだろうか?
確かに「スノーデン事件」を受け当時のオバマ大統領は議会からの要求もあり米国内の通話記録の収集を禁止したようだ。とはいえ当局の情報収集の大義名分は国家の安全である。米国に対する脅威は年々増してるように思えるし、それを理由に市民への監視を強めているのではと考えるのが自然である。百歩譲って政府による監視、特に一般市民に対する監視は無くなったのかもしれない。しかし無料で快適なインターネット利用を支えている「企業」はどうであろうか。例えばメールを使うのにも電話番号が必要だしネットショッピングをするのには住所の登録が欠かせない。それら個人情報を商品やサービスの広告表示に流用している事実は「スノーデン事件」の示す政府による監視とは異なるのかもしれない。そもそもアカウント登録の際利用規約に同意しているのだから問題提起することすらお門違いなのかもしれない。とはいえ「スノーデン事件」と通底するものがあるとすれば、それはプライバシーの侵害である。

一昔前はネットでアカウントを作る際フリーメールだけで済んだしフリーメールはハンドルネームだけで取得できた。しかし最近は何かとSNS認証必須だし更にパスキーなんてものもある。もちろん電話番号や生体情報がわたしたちの伺いしれないところで流用されない旨は利用規約に明記されているし、それに同意しているはずである。とはいえスノーデン氏の言葉を借りれば、疑問を感じ説明を受け議論できることが民主主義の基本なのだと思う。主体が政府にしろ企業にしろ情報収集の意図と目的、その方法が明確でありそれを監視する第三者の介在があってこそ安心して過ごすことができる。ならばプライバシーと引き換えに快適に無料で使えるインターネットを否定すべきかと考えると、それはちょっと寂しい気がする。つまり肝要なのは透明性・匿名性を確保しつつも利便性を犠牲にしない仕組みなのだと思う。例えば情報を暗号化し分散的に記録・処理するブロックチェーン技術の社会実装をなんらかの形で実現できれば良いと思うのだが。
便利で新しい技術を受け入れつつも、先人たちの獲得した民主主義を不断の努力をもって守っていかなければならない。

追記

パレスチナによるイスラエルへの攻撃が世間を賑わせている。概ねガザ地区を実効支配するハマスによるテロだという報道だ。しかし事の本質は両国の非対称性だと思う。例えば国力、人口、外交力、軍事力など。この非対称性が"報道"の内容に現れているのではと邪推してしまう。もちろんテロは許されることではない。しかしお決まりの文句"テロ"も軍事力の非対称性の象徴なのではないか。ここに追記したのはモサドによる何らかの軍事作戦の結果としてこの"テロ"が起き"報道"が世間を賑わせているのではと考えることもできると思うからだ。

追記の追記

先日京都市で開催された国連主催の国際会議「IGF」では情報統制のためにインターネットを民間企業ではなく政府の統制下に置くことが議論されたようだ。イギリスでは暗号化技術に制限をかける法案も議論されているという。

WikiLeaksの創設者は逮捕されLiveLeakはサービス終了した。
様々な事物が目まぐるしく変化していく今日このごろだが、せめてインターネットは自由に意見を発信できプライバシーが尊重される空間であってほしいものだ。


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